【完結】王子様の婚約者になった僕の話

うらひと

文字の大きさ
上 下
61 / 124
本編5

61僕の将来

しおりを挟む

「大きな出来事と言えば、この侯爵領から王宮までの道の拡張工事が決まった時でもあったな。
  その道が完成するとこの侯爵領の暮らしも便利になって生活しやすいと住民が増えて増収増益となったと今は亡き父上が喜んでいたよ。
 小さな事ならいっぱいあるぞ。
 マルコが私の教科書を開いたページを勉強したら次の日のテストの山が当たったり、マルコのお陰で水溜まりに入らずに済んだりとかだな。
    小さい事はキリがないが、小さな事でも良い事があるとマルコの大好物のビスケットをあげると喜んでいたなぁ。                  アンドル、お前もエディの大好物をあげると良い事があるかも知れないぞ」


 やっぱりマルコはエディみたいに賢い子猫だったんだ。マルコはビスケットが好きだったなんて可愛いなぁ。
エディにも大好物が分かれば良いけど……あっミルクをいつも夢中で飲んでくれているからきっとミルクが大好物だ。


「へぇーー父上の話を聞いてると、どうやら悪魔ではなさそうですね。
   まっでも僕はそんな小さな良い事より大きな良い事が沢山あるようになりたいので、その黒猫は御遠慮ですけどね。
  良いんじゃないですか?
  兄上には小さな運の良い事がこれから沢山あるなんて兄上にピッタリですね」


「アンジュ……言い方は引っ掛かるけど、アンジュがエディの事で納得してくれるなら嬉しいよ」


 そう言ってニコっと笑いながらアンジュの方に目を向けると、アンジュはまたプイッと顔を背けられてしまう。
   こうして憎まれ口を叩きながらもアンジュは僕に優しいのは知っているんだよ、ふふっ。


「アンドル、アンジュ、先に失礼するがゆっくり食べてくれ」


 父上は食事が終わるとまだ仕事が残っているからと席を立って仕事に向かわれた。
 とにかく父上の話からすると、マルコは父上以外の侯爵家の人間には見えていたかは分からなかったけれど、学校の人間には見えなかったんだ。
   一体どうなっているのか理解出来ないけど、この生き物はそういう生き物だと強引に納得するしかない。


「ところで兄上……兄上が今後エドワード王子との婚約解消した後の話ですが……僕はこの侯爵家を継ぐのは決定していますので、兄上はどうするおつもりですか?」


「ああ……アンジュは俺の心配をしてくれているのか?」


 突然アンジュからそんな質問をされてしまって戸惑う。俺もまだぼんやりとしか考えてなかったけれど、アンジュにとっては僕の将来は侯爵家にとっても気になる所なんだろう……


「ええ……そりゃあ兄上の将来は気になる所ですよ」


「実はまだ具体的にこれと決めていないんだ。
   でも必ず学生のうちに自分の適性な仕事はないかじっくり探してみるよ。
   アンジュやこの侯爵家には迷惑をかけないつもりだから安心して欲しいんだ。
   心配してくれてありがとう!!」


 僕はアンジュにお礼を言った。
   アンジュは憎まれ口ばっかり僕に言うけれど、こうして僕を気にかけてくれているアンジュの事が大好きだった。


「兄上……もし本当に婚約解消したら……僕と一緒に侯爵家のパートナーになって貰えませんか?」


「えっ?アンジュと侯爵家のパートナー?」


   パートナー?……パートナーって結婚と同じ意味なんだけど……


「はい。後継者は私ですけど、兄上には私の対等なパードナーになって一緒に侯爵家を盛り立てていきたいと思っています」


 びっくりした!!てっきりアンジュは将来の侯爵家に僕がいると大変だから、僕の将来が心配していると思ったのに僕がアンジュと同じ立場になって侯爵家にいて良いと言ったのだ。


「ニャン……」


「いや……今の所は何も考えてなかったけれど、アンジュがそんな風に俺の将来を考えてくれて嬉しいよ」


「当たり前です。兄上だってこの侯爵家の一員ですから、一生侯爵家で生活したって良いんですよ」


 そう言ったアンジュは立ち上がって僕に抱きついて来た。

「ニャンニャン」


「ア、アンジュ……急にどうした?」


 珍しい事もあるもんだ。あのアンジュが僕を抱き締めているなんて。
   でも……アンジュはもしかしてずっと母上と離れて寂しい思いをしているのかも。
 そう思って僕もアンジュを抱き締め返す。


「ニャッ……」


「兄上……その黒猫を騒がせないようにして下さい」


「えっ?わ、分かった」


 アンジュにそう言われてよく分からないままアンジュを抱き締めていた両手を引っ込め、エディが暴れないように抱き締めた。


 するとアンジュも僕を抱き締めていた両手を引っ込めて、僕の両頬に手をあてて僕を真剣に見つめてきた。


「アンジュ……?」


「兄上……僕は王子より兄上との将来を真剣に考えています。だからこれからは兄上も僕との将来を真剣に考えて欲しいのです」


 そう言ってアンジュはゆっくり顔を近づけて来て……僕の唇にキスをした。えっ!!アンジュが僕に!!僕のファーストキスが!!


「……ニャアアアー!!」


しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

【完結】『ルカ』

瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。 倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。 クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。 そんなある日、クロを知る青年が現れ……? 貴族の青年×記憶喪失の青年です。 ※自サイトでも掲載しています。 2021年6月28日 本編完結

【完結】オーロラ魔法士と第3王子

N2O
BL
全16話 ※2022.2.18 完結しました。ありがとうございました。 ※2023.11.18 文章を整えました。 辺境伯爵家次男のリーシュ・ギデオン(16)が、突然第3王子のラファド・ミファエル(18)の専属魔法士に任命された。 「なんで、僕?」 一人狼第3王子×黒髪美人魔法士 設定はふんわりです。 小説を書くのは初めてなので、何卒ご容赦ください。 嫌な人が出てこない、ふわふわハッピーエンドを書きたくて始めました。 感想聞かせていただけると大変嬉しいです。 表紙絵 ⇨ キラクニ 様 X(@kirakunibl)

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。  謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。  五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。  剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。  加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。  そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。  次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。  一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。  妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。  我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。  こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。  同性婚が当たり前の世界。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

処理中です...