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本編5
61僕の将来
しおりを挟む「大きな出来事と言えば、この侯爵領から王宮までの道の拡張工事が決まった時でもあったな。
その道が完成するとこの侯爵領の暮らしも便利になって生活しやすいと住民が増えて増収増益となったと今は亡き父上が喜んでいたよ。
小さな事ならいっぱいあるぞ。
マルコが私の教科書を開いたページを勉強したら次の日のテストの山が当たったり、マルコのお陰で水溜まりに入らずに済んだりとかだな。
小さい事はキリがないが、小さな事でも良い事があるとマルコの大好物のビスケットをあげると喜んでいたなぁ。 アンドル、お前もエディの大好物をあげると良い事があるかも知れないぞ」
やっぱりマルコはエディみたいに賢い子猫だったんだ。マルコはビスケットが好きだったなんて可愛いなぁ。
エディにも大好物が分かれば良いけど……あっミルクをいつも夢中で飲んでくれているからきっとミルクが大好物だ。
「へぇーー父上の話を聞いてると、どうやら悪魔ではなさそうですね。
まっでも僕はそんな小さな良い事より大きな良い事が沢山あるようになりたいので、その黒猫は御遠慮ですけどね。
良いんじゃないですか?
兄上には小さな運の良い事がこれから沢山あるなんて兄上にピッタリですね」
「アンジュ……言い方は引っ掛かるけど、アンジュがエディの事で納得してくれるなら嬉しいよ」
そう言ってニコっと笑いながらアンジュの方に目を向けると、アンジュはまたプイッと顔を背けられてしまう。
こうして憎まれ口を叩きながらもアンジュは僕に優しいのは知っているんだよ、ふふっ。
「アンドル、アンジュ、先に失礼するがゆっくり食べてくれ」
父上は食事が終わるとまだ仕事が残っているからと席を立って仕事に向かわれた。
とにかく父上の話からすると、マルコは父上以外の侯爵家の人間には見えていたかは分からなかったけれど、学校の人間には見えなかったんだ。
一体どうなっているのか理解出来ないけど、この生き物はそういう生き物だと強引に納得するしかない。
「ところで兄上……兄上が今後エドワード王子との婚約解消した後の話ですが……僕はこの侯爵家を継ぐのは決定していますので、兄上はどうするおつもりですか?」
「ああ……アンジュは俺の心配をしてくれているのか?」
突然アンジュからそんな質問をされてしまって戸惑う。俺もまだぼんやりとしか考えてなかったけれど、アンジュにとっては僕の将来は侯爵家にとっても気になる所なんだろう……
「ええ……そりゃあ兄上の将来は気になる所ですよ」
「実はまだ具体的にこれと決めていないんだ。
でも必ず学生のうちに自分の適性な仕事はないかじっくり探してみるよ。
アンジュやこの侯爵家には迷惑をかけないつもりだから安心して欲しいんだ。
心配してくれてありがとう!!」
僕はアンジュにお礼を言った。
アンジュは憎まれ口ばっかり僕に言うけれど、こうして僕を気にかけてくれているアンジュの事が大好きだった。
「兄上……もし本当に婚約解消したら……僕と一緒に侯爵家のパートナーになって貰えませんか?」
「えっ?アンジュと侯爵家のパートナー?」
パートナー?……パートナーって結婚と同じ意味なんだけど……
「はい。後継者は私ですけど、兄上には私の対等なパードナーになって一緒に侯爵家を盛り立てていきたいと思っています」
びっくりした!!てっきりアンジュは将来の侯爵家に僕がいると大変だから、僕の将来が心配していると思ったのに僕がアンジュと同じ立場になって侯爵家にいて良いと言ったのだ。
「ニャン……」
「いや……今の所は何も考えてなかったけれど、アンジュがそんな風に俺の将来を考えてくれて嬉しいよ」
「当たり前です。兄上だってこの侯爵家の一員ですから、一生侯爵家で生活したって良いんですよ」
そう言ったアンジュは立ち上がって僕に抱きついて来た。
「ニャンニャン」
「ア、アンジュ……急にどうした?」
珍しい事もあるもんだ。あのアンジュが僕を抱き締めているなんて。
でも……アンジュはもしかしてずっと母上と離れて寂しい思いをしているのかも。
そう思って僕もアンジュを抱き締め返す。
「ニャッ……」
「兄上……その黒猫を騒がせないようにして下さい」
「えっ?わ、分かった」
アンジュにそう言われてよく分からないままアンジュを抱き締めていた両手を引っ込め、エディが暴れないように抱き締めた。
するとアンジュも僕を抱き締めていた両手を引っ込めて、僕の両頬に手をあてて僕を真剣に見つめてきた。
「アンジュ……?」
「兄上……僕は王子より兄上との将来を真剣に考えています。だからこれからは兄上も僕との将来を真剣に考えて欲しいのです」
そう言ってアンジュはゆっくり顔を近づけて来て……僕の唇にキスをした。えっ!!アンジュが僕に!!僕のファーストキスが!!
「……ニャアアアー!!」
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