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本編5
60家族に相談
しおりを挟む「兄上、僕の前にその変な黒猫を僕に近づけないで下さいと言ったじゃないですかーもうっ」
「うーん、やっぱりアンジュは見えるよね……」
「???」
僕は学校で誰もエディの存在に気づいてくれなかったので、侯爵家の侍従達にもエディの存在に気づいているかこっそり確認してみたけれど、やっぱり見えなかったので今更ながら驚いた。
その日の夜はマナーが悪いと思いつつ、家族の食事の席にエディを連れて膝に乗せていた。
「兄上?僕には見えるって何がですか?」
「ああ……今日は学校でね……」
僕は膝の上で静かに乗っているエディを撫でながら、学校ではエディの姿が誰にも見えていなかった事をアンジュに伝えた。
「はあっ?この黒猫の姿が誰にも見えなかったなんて、やっぱり悪魔の使者かなんかじゃあないですか!!もう捨てましょう!!そんな黒猫!!」
「アンジュ!!いくらアンジュが嫌いでも生き物を簡単に捨てるだなんて言ってはいけないよ」
「……にゃーん」
アンジュが嫌な物でもみるかの様にエディを見つめながら捨てようなんて言うものだから僕もつい興奮して言い返してしまう。
エディは賢いから僕達の言い争っている言葉を聞いて、何か思う所もあったのか一度だけ小さな鳴き声をだした。
「何をそんなに騒いでいるんだ?ああ……マルコか……じゃなかった。エディだったか。元気そうだな」
「「父上!!」」
遅れてやって来た父上がようやくダイニングテーブルの席に着いた。
「ですよね。やっぱり父上にもエディが見えていますよね……」
「アンドル、どうしたんだ?」
僕は父上にも他の人にエディの姿が見えない事を話した。
「父上はマルコをよく学校に連れて行ったんだと言ってましたよね。エディも本当に賢い子で、お願いすれば静かに出来ますし鳴き声も一切しません。
だから僕も学校に連れていったら……みんなエディを認識してくれなかったのです。父上のマルコの時はどうだったのですか?」
「ああ……そういえば……」
父上は天井を見上げながら、随分と昔の思い出を一生懸命思いだそうと考えている様だった。
「私の場合は……初めてマルコを学校に連れて行ってしまったのは偶然だったんだ。マルコが私の鞄に勝手に入ってしまっていてね。私もまさか自分の鞄にマルコが入っていたなんて学校に行ってから気づいて焦ってしまってね。ははっ……思い出したよ」
「そ、それで?父上は学校に連れていってしまったマルコはどうなったのですか?」
「私は友人にマルコを披露するつもりは無かったから、間違ってマルコを学校に連れて来た日はとにかくマルコを隠そうとしていたんだ。しかし授業中に隠れていたマルコが突然先生の肩に乗り、「ニャアーー」と鳴いたんだ。あの時は心臓が止まるかと思ったよ。
この生き物を連れて来た私は先生から大目玉をくらうと思っていたんだからな。
しかし、誰にも気づかれなかった所か、マルコに乗られている先生はそのまま授業を続けていたからまたびっくりした覚えがある」
「父上にはそんなマルコとの思い出があったのですね」
懐かしい思い出を嬉しそうに話していた父上だけど、少し悲しい顔をし始めた。
「ああ……その時に私しか見えないのが分かったが……本当に忘れていたよ。あんなに楽しいマルコとの思い出だが、やはり昔の私は突然いなくなったマルコをずっと探し回っていてね、結局見つから無かったから自分自身でマルコとの思い出を消してしまおうとしていたらしい」
父上からマルコの話を聞くとちょっと切なくなる。僕だっていつも一緒にいるエディが突然居なくなったらと思うと、父上の様に立ち直れるのか不安になる。
「アンドル、とにかくマルコはとても賢い子でね、授業中の行動も私にしか姿が見えないとアピールしたんだと思う。それからはよく学校に連れて行って自由にさせていたんだ。するとマルコは何処かにフラっと行く時もあれば、勉強が好きなのか、結局は私と一緒に授業を受けている事が殆どだったな。エディも賢いから自由にさせていいんじゃないか?」
「父上!!父上までそんな得体の知らない黒猫に甘いなんておかしいです」
食事中、ずっと静かに父上と僕の話を聞いていたアンジュが、あんまり父上のエディを疑わない態度におかしいと思ったのか口を挟んできた。確かに父上はマルコの件があるせいか、エディをかなり受け入れているには僕もびっくりしている。
「まあ……な。アンジュがそう思うのも無理はない。アンドルからエディを見せられた時、マルコを飼っていた時は侯爵家で特に不幸な事も無いと言ったが、運が良かった出来事が何度もあったんだよ」
「えっ父上、その運が良かったってどんな事があったのですか?」
急にアンジュが興味ありげにそう質問した。
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