【完結】王子様の婚約者になった僕の話

うらひと

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本編5

59陛下と僕の初対面3

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   だけど陛下は特に僕を怒る訳でもなく、先程項垂れていたのは何でも無かったかの様に顔を上げて下さったが、心無しが顔色が悪い……。


   もしかして僕の話のせいじゃ無くて陛下の体調が少し悪い??
 
   しかし陛下はそのまま返事をしてくれた。


「いや、アンドルが謝る必要は無い。謝るのはむしろ……いや今は違うな……ああ……何でも無い。

 ……そういえばエドワードが元気かどうかだが……大変元気に過ごしている。アンドルにはそれだけは伝えておこう。だからアンドルも心配しないで学業にしっかり励んで欲しい」


   何と!!陛下が突然王子の事を教えて下さった!!


「王子はお元気なんですね!!それだけ聞けただけでも嬉しいです。はいっ!!また王子に会う時に自分が恥ずかしく無い様にしっかり学業に励んでいきたいと思っております」


 先程は王子の事を答えられないと言った陛下から初めてエドワード王子が元気だと言う情報を教えて貰えただけでもとても嬉しい!!
 ずっと会えない予定だけれど、王子が異国の地で元気で頑張っているなら僕も頑張らなきゃいけないな。


 そう思っている内に陛下の側近達が「陛下、時間が……」と呟いているのが聞こえてしまった。
 僕に時間を取ったせいで陛下の時間が無くなってしまったようだ。


「アンドル、短い時間だったが君と話せて良かったよ」


「陛下、今日はお話の機会を下さって有難う御座いました。ではこれで失礼致します!!」


「うむ。アンドル…………………黒猫に宜しくな」


 こうして陛下と初めての対面は終わった。


 それから直ぐ学校から帰って自分の家である侯爵家に戻ると、既に家の門ではエディが待ち構えていて僕を待っていてくれていた。


「ニャンニャン」

「エディ!!ただいまー!!わわっとっ!!」


 エディは僕に向かって勢いよく飛びかかって来たので必死に受け止める。
   でも帰って来た早々にこのモフモフ感!!幸せだーー!!


 本当は今日の入学式の朝、エディは行きたそうに「ニャンニャン」言って全然僕から離れようとしなかったけれど、何度も「今日は駄目だよ。僕も緊張しているからエディの面倒を見る余裕が無いんだ」と伝えた。


 エディは僕の言葉を理解してくれるから、分かってくれると思っていたけれど、今日の朝はどうにも言う事を聞いてくれなかったんだっけ……


 だから「明日なら!!明日は必ずエディを学校に連れて行くから今日だけは我慢して」
 と言うと、ようやくトボトボと僕から離れてくれて家でちゃんと待っていてくれた。


 早速エディと一緒に自分の部屋に戻り、今日貰った新しい資料や教材を整理しながらエディに今日の出来事を話していく。


「そういえばね、今日は陛下と初めて話したんだ!!そこで陛下が「最近飼い始めた生き物はいるか?」だって!!まるでエディを飼っているのを前もって知ってる様なタイミングだよね!!」


「ニャンニャン」


「それでね、陛下がエディの事元気かー?って聞いて来たんだよ!!」


「ニャンニャン」


「だからつい嬉しくなっちゃって、エディとシャワーを浴びたり、一緒に寝たり、朝は毎日唇を舐めて僕を起こしてくれてますって言っちゃったんだよ」


「ニャ……ニャアアアーーーー!!」



「エディ??そんなに叫んでどうしたの?
   そしたら陛下は片手で顔を覆ってしまわれてね……ははっ僕ってついエディの事になると嬉しくなってね、色々話し過ぎちゃったみたいで失敗しちゃった。でも陛下は僕に怒って無かったから良かったよ」



「ニャンニャン」



   「あっエディ!!そういえば王子の事が分かったんだ!!陛下がね!!エドワード王子は元気に過ごしているよって教えてくれたんだよ!!」


「ニャンニャン」


「良かったよ!!僕ずっと会えない王子を心配してたからさ。王子は異国の地できっと孤軍奮闘して頑張っているんだよ!!僕も王子を見習って頑張らなくちゃね!!まだずっと婚約者だよって陛下からも言われたしね!!」


「ニャンニャン」


「明日は約束通り、エディを学校に連れて行こうと思う。君は賢いからわかってくれると思うけど、学校では決して声は出さずに静かに過ごしてね。一度でも約束を破ったら連れていけなくなっちゃうからね」



「ニャンニャン」



 僕が明日は学校に連れて行くとエディに伝えるとエディは余程嬉しかったのか僕の周りをクルクル走り回って喜んでいた。


 ふふっ明日は内緒で連れて行くけれど、デニーとサックの2人だけにはエディの存在を披露してあげようと思う。


 2人はこの可愛い羽の生えた黒猫を見てどう思うのだろうか……ふふっ楽しみだなぁ。




ーーーー




 そう思いながら次の日になり、エディを僕のお腹に隠して学校に連れて行った。


 エディは僕の言いつけをしっかり守ってくれて、全く鳴き声を出す事もなく静かにしてくれているので本当に良い子だ。

 そして昼休みにデニーとサックの2人を中庭に誘い、僕のエディを披露してあげたんだんだけど……



「そのアンドルが言うエディは何処にいるんだ?」


「えっ?デニーここにいるじゃん。僕の膝の上だよ」


「「いねーぞ!!」」


「サックまで……本当に2人は見えないのかい?エディちょっと鳴いてみて!!」


「ニャンニャン」


「何も聞こえないよ。どう鳴いてるの?」


「えっ……ほらっ今ニャンニャンって言ったでしょう?」


「アンドル、別にお前を疑っている訳じゃないが……俺達2人には見えないみたいだ」



「そんなっ!!そんな事ってあるのかい??」



 それからの僕はクラスの友人である宰相の息子や騎士団長の息子にもエディを見せてみたけれど……その2人もエディが見えないと言われてしまった。



 みんなからエディの存在を否定されてしまっては多数決で僕の方が間違っていると考えた方が自然だ……という事は僕だけ誰にも見えないエディが見えてるって事??


 だけどアンジュや父上には見えたんだ……それがなんで学校のみんなには見えないのだろう……


 ならば、昨日の陛下の質問も今から考えると不自然な気がしてきた。最近飼い始めた生き物はいるかって……


   このエディの存在を知っていたみたいなタイミングだったんだ。



「エディ……君は何者なのかい?」


「ニャンニャン」


 僕はエディを見つめながら、この不思議な生き物は一体何だろうとまた改めて考え込んでしまった。



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