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本編5
57陛下と僕の初対面1
しおりを挟む「とうとう入学式かぁ……時間が過ぎるのってあっという間だよね。エディ」
「ニャンニャン」
王子が突然留学したと言う話を聞いてから少し経過した。
僕がどう悩んだって王子はこの国にいない訳で……連絡も取れないのだから、僕も気持ちを切り替えてエディと遊びながら学校へ入学する準備をしてきた。
そして今日はとうとう貴族学校の入学式の日。
僕は楽しみと緊張と少しの不安を感じながら学校へ行った。
クラスには何とプレスクールで一緒だった全員が同じクラスになったのでとても嬉しいしホッとして笑顔になる。
だけど、このクラスは他のクラスより1名少ない。
やはり、王子は直前迄この学校に通うつもりだったんだと思う。
だけど何か理由があって留学してしまったんだ。
近衛隊長の父を持つデニーにも王子の事で何か知っているか聞いてみたら、
「陛下からの命令で留学になったそうなんだ。突然の進学変更で侍従長迄びっくりして陛下に詰め寄ったんだって!!」
「ええ!!……侍従長迄知らなかったなんて、本当に急だったんだね」
「ああ……だからエドワード王子の行方を知る者は陛下しか知らないと思うぜ。それにしてもよく王子は誰にも知られずに留学したもんだ。だってこの国の王子だぜ!!絶対誰か何処かで王子を目撃したっていい筈なのに、そんな話は全く聞かないしさ」
デニーが言った様に、エドワード王子の事は誰に聞いても誰も知らないと言われるばかりだった。
ただ王宮でのプレスクールからの友人である宰相や騎士団長の息子達は王族と深い繋がりがあるので、逆に知っていても王子の事が極秘情報になっていれば、聞いた所で教えてくれない可能性もあると思っている。
だから近衛隊長の父を持つデニーに聞くのが1番一般的で確実な情報を貰えるんだ。
だけど結局分かった事は最初に王宮から来た使者から聞いていた陛下からの命令だったというだけだった。
陛下……僕はまだ正式にお話した事はないけれど、エドワード王子のお父様でこのまま僕が王子と結婚したらお義父様になる予定なんだけど……僕から話す機会は今迄一度も無い。
今後話す機会がもしあるとしたら、僕の父上が陛下に謁見申請を出して、許可が降りれば父上について行く事くらいか……。
そんな陛下はこの貴族学校の名誉理事長になっていて、入学式の今日は僕達新入生に対し直々にお話し下さった。
陛下の話しているご様子を拝見しながら、やはりエドワード王子の父親だけあってとてもよく似ている。
順番から言えばエドワード王子の方が陛下にとても良く似ているのだけれども、僕は王子を見てきたから自分の中ではそんな認識になってしまう。
黒髪にブルーの瞳なんかソックリだし、自然な普段の表情が王子がいつもやってみせるアルカイックスマイルになっている。
そして年齢を重ねて培われた知性が顔にも溢れているような、そんな威厳と風格のある陛下だ。
そんな陛下に一度直接お会いしてエドワード王子の事が今どういう状況なのか、婚約者である僕は王子と連絡は取れないのか聞いてみたいと思っているけど……まだ未成年の僕ではそれは無理な話だろう。
そう思いながら壇上で話している陛下を見ていると、先程から陛下と何度も目が合っている気がする……。
まさかね……僕は確かにエドワード王子の婚約者だし遠くからでも髪の色が明るいから目立つけれど、流石に自意識過剰か。
入学式とクラスのメンバーの顔合わせも終わり、初日はこれで帰る事になる。
帰ったらきっとエディが待っているなぁ。ふふっ今日は僕と学校に行きたそうだったもんね。
クラスの皆も「明日から宜しくね」と軽く挨拶をしながらまた1人帰って行く。
僕も新しい教科書を鞄に入れて帰りの支度をしていると、担任の先生から「アンドル君、帰る前に理事長室に呼ばれているから行ってね」と言われた。
ん?僕だけ?
理事長室……もしかして陛下に呼ばれている!?
じゃ、じゃあ僕は陛下とエドワード王子の事でお話できるのだろうか……その可能性を信じて僕は理事長室に向かった。
「失礼します。呼ばれましたアンドルです」
僕は胸をドキドキさせながら理事長室に行くと、やはり陛下がいらっしゃった。
理事長室の1番奥の席に陛下が座っており、その周りを側近や文官と護衛達が20人程集まっていて、理事長室が小さな陛下の謁見の間みたいになっている。
実は陛下と直接お会いするのは初めてだった。
不思議な事なんだけれど僕はエドワード王子の婚約者というのに今まで王子以外の王族と話す機会に恵まれなくて、王子以外の王族と、それも陛下と話すなんて初めてだ。
「アンドル、そこに座ってくれ」
「は、はい陛下」
陛下は特に表情を変える事はないが、陛下の座っている場所から1番遠いソファの席を勧められてそこに座る。
そのソファは陛下とは向き合わない横向きのソファなので僕が陛下の方に顔を向けると陛下は
「アンドル、入学おめでとう。この度は私の息子が急遽留学する事になってな。君が振り回された形になってしまったが、エドワードの事は気にせずに学業に励んで欲しい」
とおっしゃった。
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