【完結】王子様の婚約者になった僕の話

うらひと

文字の大きさ
上 下
57 / 124
本編5

57陛下と僕の初対面1

しおりを挟む

 「とうとう入学式かぁ……時間が過ぎるのってあっという間だよね。エディ」

     「ニャンニャン」



 王子が突然留学したと言う話を聞いてから少し経過した。
   僕がどう悩んだって王子はこの国にいない訳で……連絡も取れないのだから、僕も気持ちを切り替えてエディと遊びながら学校へ入学する準備をしてきた。


   そして今日はとうとう貴族学校の入学式の日。

   僕は楽しみと緊張と少しの不安を感じながら学校へ行った。


 クラスには何とプレスクールで一緒だった全員が同じクラスになったのでとても嬉しいしホッとして笑顔になる。
 だけど、このクラスは他のクラスより1名少ない。


 やはり、王子は直前迄この学校に通うつもりだったんだと思う。
    だけど何か理由があって留学してしまったんだ。


 近衛隊長の父を持つデニーにも王子の事で何か知っているか聞いてみたら、


「陛下からの命令で留学になったそうなんだ。突然の進学変更で侍従長迄びっくりして陛下に詰め寄ったんだって!!」



「ええ!!……侍従長迄知らなかったなんて、本当に急だったんだね」



「ああ……だからエドワード王子の行方を知る者は陛下しか知らないと思うぜ。それにしてもよく王子は誰にも知られずに留学したもんだ。だってこの国の王子だぜ!!絶対誰か何処かで王子を目撃したっていい筈なのに、そんな話は全く聞かないしさ」



 デニーが言った様に、エドワード王子の事は誰に聞いても誰も知らないと言われるばかりだった。



 ただ王宮でのプレスクールからの友人である宰相や騎士団長の息子達は王族と深い繋がりがあるので、逆に知っていても王子の事が極秘情報になっていれば、聞いた所で教えてくれない可能性もあると思っている。


 だから近衛隊長の父を持つデニーに聞くのが1番一般的で確実な情報を貰えるんだ。


 だけど結局分かった事は最初に王宮から来た使者から聞いていた陛下からの命令だったというだけだった。


 陛下……僕はまだ正式にお話した事はないけれど、エドワード王子のお父様でこのまま僕が王子と結婚したらお義父様になる予定なんだけど……僕から話す機会は今迄一度も無い。


 今後話す機会がもしあるとしたら、僕の父上が陛下に謁見申請を出して、許可が降りれば父上について行く事くらいか……。


 そんな陛下はこの貴族学校の名誉理事長になっていて、入学式の今日は僕達新入生に対し直々にお話し下さった。


 陛下の話しているご様子を拝見しながら、やはりエドワード王子の父親だけあってとてもよく似ている。


 順番から言えばエドワード王子の方が陛下にとても良く似ているのだけれども、僕は王子を見てきたから自分の中ではそんな認識になってしまう。


 黒髪にブルーの瞳なんかソックリだし、自然な普段の表情が王子がいつもやってみせるアルカイックスマイルになっている。

 そして年齢を重ねて培われた知性が顔にも溢れているような、そんな威厳と風格のある陛下だ。


 そんな陛下に一度直接お会いしてエドワード王子の事が今どういう状況なのか、婚約者である僕は王子と連絡は取れないのか聞いてみたいと思っているけど……まだ未成年の僕ではそれは無理な話だろう。


 そう思いながら壇上で話している陛下を見ていると、先程から陛下と何度も目が合っている気がする……。


 まさかね……僕は確かにエドワード王子の婚約者だし遠くからでも髪の色が明るいから目立つけれど、流石に自意識過剰か。


 入学式とクラスのメンバーの顔合わせも終わり、初日はこれで帰る事になる。


   帰ったらきっとエディが待っているなぁ。ふふっ今日は僕と学校に行きたそうだったもんね。


 クラスの皆も「明日から宜しくね」と軽く挨拶をしながらまた1人帰って行く。


   僕も新しい教科書を鞄に入れて帰りの支度をしていると、担任の先生から「アンドル君、帰る前に理事長室に呼ばれているから行ってね」と言われた。


 ん?僕だけ?


 理事長室……もしかして陛下に呼ばれている!?


 じゃ、じゃあ僕は陛下とエドワード王子の事でお話できるのだろうか……その可能性を信じて僕は理事長室に向かった。


「失礼します。呼ばれましたアンドルです」


 僕は胸をドキドキさせながら理事長室に行くと、やはり陛下がいらっしゃった。

   理事長室の1番奥の席に陛下が座っており、その周りを側近や文官と護衛達が20人程集まっていて、理事長室が小さな陛下の謁見の間みたいになっている。


 実は陛下と直接お会いするのは初めてだった。


 不思議な事なんだけれど僕はエドワード王子の婚約者というのに今まで王子以外の王族と話す機会に恵まれなくて、王子以外の王族と、それも陛下と話すなんて初めてだ。


「アンドル、そこに座ってくれ」


「は、はい陛下」


 陛下は特に表情を変える事はないが、陛下の座っている場所から1番遠いソファの席を勧められてそこに座る。


 そのソファは陛下とは向き合わない横向きのソファなので僕が陛下の方に顔を向けると陛下は


「アンドル、入学おめでとう。この度は私の息子が急遽留学する事になってな。君が振り回された形になってしまったが、エドワードの事は気にせずに学業に励んで欲しい」


とおっしゃった。


しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

【完結】『ルカ』

瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。 倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。 クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。 そんなある日、クロを知る青年が現れ……? 貴族の青年×記憶喪失の青年です。 ※自サイトでも掲載しています。 2021年6月28日 本編完結

【完結】オーロラ魔法士と第3王子

N2O
BL
全16話 ※2022.2.18 完結しました。ありがとうございました。 ※2023.11.18 文章を整えました。 辺境伯爵家次男のリーシュ・ギデオン(16)が、突然第3王子のラファド・ミファエル(18)の専属魔法士に任命された。 「なんで、僕?」 一人狼第3王子×黒髪美人魔法士 設定はふんわりです。 小説を書くのは初めてなので、何卒ご容赦ください。 嫌な人が出てこない、ふわふわハッピーエンドを書きたくて始めました。 感想聞かせていただけると大変嬉しいです。 表紙絵 ⇨ キラクニ 様 X(@kirakunibl)

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。  謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。  五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。  剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。  加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。  そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。  次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。  一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。  妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。  我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。  こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。  同性婚が当たり前の世界。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

処理中です...