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〜王子side〜4
53エドワード王子の呪い3
しおりを挟む「陛下!!王子は!!エドワード王子は何処に行ったのですか?私は王子が小さい頃よりお支えして参りました。これからも王子が何処に行っても一緒にお供する所存でした!!どうか私も王子の元に連れて行って下さい!!お願いします!!どうかお願いします!!」
侍従長は跪いた身体をさらに低くさせ、頭を床にくっつけながら陛下に頼んでいる。そんな侍従長を見て今の自分が何もできない無力さに心が折れそうになってきた。
「侍従長……お前のエドワードに対する献身は評価しておる。しかしエドワードは王族の極秘任務も兼ねている為に、何処に行ったのかも教える事はできない。戻って来た時にはまた王子の身の回りの世話を頼む予定だからそれまでは他の仕事で精進して欲しい」
そう言って父上は侍従長に頭を上げさせて、「この通りだ」と首だけではあるが、頭を下げだ。
この王国の1番身分の高い陛下が頭を下げる事は本当に無い為に、周りにいた他の侍従達や陛下の護衛達が一瞬どよめきが起こった程だ。
それを受けて侍従長も驚き、力無く「……承知致しました。王子がいつ帰って来られてもいいように日々精進致します」と言って下がっていった。その背中は悲壮感に満ちている。
侍従長は昔から私の良い事は褒め、悪い事は叱り、全て私に対しておべっかも使わずに正直に対応してくれていたと思う。
当たり前の躾だが、王宮では色々な権力や誘惑に翻弄される事があり、それが王子教育の段階で王子をコントロールしようとする者が現れたもする位、それはとても難しい事だ。
そんな侍従長だから私も信頼を勝ち取る努力が続けられたと思うし、お陰で特に自分を偉ぶる事無く成長できたので世間の私の評判は高い。
侍従長は誠心誠意ずっと私を見守ってくれていたのだな……それなのに突然私がいなくなって……私がこんな呪いにかかってしまったばっかりに。すまない侍従長。
父上はまたゆっくり歩き出し,とうとう侯爵家へ向かう馬車に到着した。
そして誰にも聞かれない小さな声で「エドワード、生き延びろ」と呟いてから、使者として向かう者には労いの言葉と、馬車を動かす者には「侯爵家に向かう時には馬車の音が大きくならない様にゆっくり走って欲しい」と指示をしていた。
私は唯一私の存在を理解している父上から離れる恐怖心はあったが、どうにもならない状況なのでトボトボと馬車に飛び移る。
両手両足の形を見ると多分私も父上と同じ猫の様な生き物になった様だ。
羽が生えているのかはまだ分からない。
でも誰にも気づいて貰えないのだからどんな姿であってもどうしようもない。
馬車は父上指示通りに従ってゆっくり走りだし、侯爵家に着くと使者の後ろについて侯爵家の玄関迄一緒について行った。
そこで出迎えてくれたアンドルを一目見た時、やっと会えた喜びで飛びかかりそうになってしまった。
こんな姿になってしまった私を慰めてく欲しくて、アンドルに縋りつきたくなってしまう。
……が、直ぐ思い直す。
私の姿が見えるのだろうか……そしてこんな姿の私を気に入って保護をして貰えるのだろうか……。
アンドルに近づいたものの急に今の姿がどう見えるのか不安になり、アンドルに嫌われるのが怖くてアンドルの足元で丸まって震えてしまった。
丸まって震えている間でも私の耳は声がしっかり聞こえており、王宮の使者から私が留学したという話を聞いたアンドルが驚いているのが分かった。
そして婚約者の事についても言及している!!
頼む!!婚約解消は待ってくれっ!!父上は私が戻る迄は婚約解消しないと言ってくれていたが、侯爵家が支払いをさっさと完了してしまえば、父上にも婚約者にし続けておくには限界がある可能性もある。
今にも叫びたかったのに、今の私は本当に無力で……アンドルもいつ帰ってくるがわからない私を待つのも辛いだろうし、婚約者という立場がどんな曖昧な存在なのか考え込んでいるようだった。
そんな時、弟のアンジュもやってきてアンドルより先に私の存在に気づいた!!やっぱりこの侯爵家の人間は私の姿がみえるのか!!嬉しい!!初めて自分の存在を認められた気分になった。
するとアンドルが優しく持ち上げて抱きしめてくれる。
「黒猫の……妖精?飛べるのかな?なんか可愛いなぁ」
アンドルが今の私を可愛いと……
「うう……可愛いなぁ。大丈夫だよ。僕がここでお世話してあげるからね」
ははっ……アンドルゥ!!アンドルゥーーー!!
心細くて寂しかったよ!!気づいたらキスをしてペロンと舐めてアンドルの唇を奪ってしまった。
ハッ!済まないアンドル!!
決してやましい気持ちでキスをした訳じゃ無いんだ!!
この姿だと話せないし、身体も手足も短いから、キスはしょうがないんだ。これは本当のキスじゃない。
コミュニケーションとして有効活用させて貰うよ!!
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