48 / 124
本編4
48黒猫の妖精
しおりを挟む
この侯爵家の跡取りも既にアンジュに決定して、アンジュは父上との貴族の会合にも積極的に参加している。
僕は……婚約解消を前提に家族が動いているから、婚約者としての振る舞いをしつつ、婚約解消後の自分の将来を具体的に考えていかなければならなかった筈なのに……。
いや……ようやく自分の立場をしっかり認識できたとポジティブに考えるんだ。王子の為に学んできた事も無駄になる物なんて何一つ無い、貴重な経験ばっかりだし今後の僕の人生に生かされる事ばかりだ。
逆に考えてみよう。僕は王子と婚約解消になれば僕は自由だ。つまり何にでもなれる!!
これはチャンスと考えてこれから学校も始まるし、いつ婚約解消になったとしても僕が働ける様に学校生活を真剣に学んで行こう。
でも……エドワード王子と突然こんな形で突然お別れする事になるとは思わなかったな。ずっと一緒に年齢を重ねてきたし、これからの学校生活も一緒に学ぶ予定だったんだから、正直寂しい気持ちしかない。
「……上、兄上ってば!!」
「うえっ??」
アンジュが声をかけるまで僕はアンジュがいる事に気がつかなくてビックリして変な声になってしまった。
「何、玄関でボーーっと突っ立ってるんですか!!どうせ今の使者からの話を聞いて王子の事でも考えていたんでしょっ!!兄上のお気持ちも分からないでも無いですがこれはラッキーだと捉えるべきですって……何ですか!!それっ??」
アンジュも突然王宮から使者が来たので、使者と僕との話を興味があって覗いていたんだろう。
「んあっアンジュッ!!アンジュも陰で聞いていたんだろう?王子が急遽留学された事と一切連絡は取らないって……」
「まあ聞いてましたよ。僕には別にどうでもいい話でしたけど。それよりも、兄上の足元にいるソレ、何なんですか?……なんか黒くて気持ち悪い物が兄上にくっついてます」
「えっ?」
アンジュが気持ち悪そうな顔をして僕の足元を指さした。
すると、そこには真っ黒でモフモフとした丸い物体がブルブルと震えていた。
「な、何これ??生き物??」
僕はそう思って緊張しながら優しく抱き上げてみた。丸いと思っていたのはただ丸まっていただけで抱き上げると、子猫みたいな動物だ。そして背中には小さな羽がついていた。
「黒猫の……妖精?飛べるのかな?なんか可愛いなぁ」
どんな動物なのかも分からないうちに直感的に可愛いと思ってしまった。
だってモフモフした小さな子猫。そして黒い毛並みはツヤツヤしているし、つぶらな瞳は透き通ったブルーだった。それに子猫は僕が抱き上げても震えてはいるが大人しくしている。
不意にアンジュもその子猫を触ろうとした時
「ニァーーー!!」
「わっ何だよ、この黒いの!!急に僕の方に飛びかかろうとしないでくれっ!!」
子猫は興奮してアンジュの方両前足をのばしたがアンジュは嫌がって素早く避ける事ができた。
「はぁー兄上……流石に羽の生えた黒猫ってどこが妖精なんですか………どちらかと言うと悪魔の使いじゃないですか?それに、僕も一瞬可愛いと思いましたが、よくよく見れば見るほど生理的に無理な感じがします」
黒猫の妖精はこんなに可愛いけれど、アンジュはたった今、子猫に想定外の動きをされたのを根に持って、嫌な物でも見るかのように僕と正反対の反応を示している。
「こんなに可愛いのに悪魔の使いだなんて酷いじゃないか!!それにこんなに震えて可哀想に……アンジュ、僕父上に飼っていいか相談してみるよ」
「兄上が悪魔の使いの世話??まあ父上が飼って良いと言うとは思えませんけど、もし飼う事になっても僕にはその悪魔を近づけないで下さい。兄上には悪いですが、なんかその生き物を見るとゾゾッとするんです」
そう言って嫌な顔をしたままアンジュは戻って行ってしまったけれど、とりあえず万が一僕がこの子猫を飼ったとしてもアンジュに近づけさえしなければアンジュは反対しないって事か……。
黒猫の妖精はまだブルブルと震えているが、僕の事は大分慣れたのか少し「ゴロゴロ」と喉を鳴らして僕の胸の中にくっついて離れなかった。
「うう……可愛いなぁ。大丈夫だよ。僕がここでお世話してあげるからね」
黒猫の妖精にそう呟いてみると、胸に抱きついていた子は此方を見上げて僕の唇をペロンと一舐めした。
「ぷあっくすぐったいよ~!!君は何処から来たんだい??名前をつけてあげないとね!!」
妖精だと思ってしまったけれど,抱き締めた子は確かに命の温かさがあってこの世に生まれた感触がある。この震えた生き物に安心して生きて欲しい。だけど、この子は羽が生えていて確かに他の生き物とは違うから父上がなんと言うか……。
そうして僕はこの黒猫の妖精を飼っていいか父上にお願いしてみた。
僕は……婚約解消を前提に家族が動いているから、婚約者としての振る舞いをしつつ、婚約解消後の自分の将来を具体的に考えていかなければならなかった筈なのに……。
いや……ようやく自分の立場をしっかり認識できたとポジティブに考えるんだ。王子の為に学んできた事も無駄になる物なんて何一つ無い、貴重な経験ばっかりだし今後の僕の人生に生かされる事ばかりだ。
逆に考えてみよう。僕は王子と婚約解消になれば僕は自由だ。つまり何にでもなれる!!
これはチャンスと考えてこれから学校も始まるし、いつ婚約解消になったとしても僕が働ける様に学校生活を真剣に学んで行こう。
でも……エドワード王子と突然こんな形で突然お別れする事になるとは思わなかったな。ずっと一緒に年齢を重ねてきたし、これからの学校生活も一緒に学ぶ予定だったんだから、正直寂しい気持ちしかない。
「……上、兄上ってば!!」
「うえっ??」
アンジュが声をかけるまで僕はアンジュがいる事に気がつかなくてビックリして変な声になってしまった。
「何、玄関でボーーっと突っ立ってるんですか!!どうせ今の使者からの話を聞いて王子の事でも考えていたんでしょっ!!兄上のお気持ちも分からないでも無いですがこれはラッキーだと捉えるべきですって……何ですか!!それっ??」
アンジュも突然王宮から使者が来たので、使者と僕との話を興味があって覗いていたんだろう。
「んあっアンジュッ!!アンジュも陰で聞いていたんだろう?王子が急遽留学された事と一切連絡は取らないって……」
「まあ聞いてましたよ。僕には別にどうでもいい話でしたけど。それよりも、兄上の足元にいるソレ、何なんですか?……なんか黒くて気持ち悪い物が兄上にくっついてます」
「えっ?」
アンジュが気持ち悪そうな顔をして僕の足元を指さした。
すると、そこには真っ黒でモフモフとした丸い物体がブルブルと震えていた。
「な、何これ??生き物??」
僕はそう思って緊張しながら優しく抱き上げてみた。丸いと思っていたのはただ丸まっていただけで抱き上げると、子猫みたいな動物だ。そして背中には小さな羽がついていた。
「黒猫の……妖精?飛べるのかな?なんか可愛いなぁ」
どんな動物なのかも分からないうちに直感的に可愛いと思ってしまった。
だってモフモフした小さな子猫。そして黒い毛並みはツヤツヤしているし、つぶらな瞳は透き通ったブルーだった。それに子猫は僕が抱き上げても震えてはいるが大人しくしている。
不意にアンジュもその子猫を触ろうとした時
「ニァーーー!!」
「わっ何だよ、この黒いの!!急に僕の方に飛びかかろうとしないでくれっ!!」
子猫は興奮してアンジュの方両前足をのばしたがアンジュは嫌がって素早く避ける事ができた。
「はぁー兄上……流石に羽の生えた黒猫ってどこが妖精なんですか………どちらかと言うと悪魔の使いじゃないですか?それに、僕も一瞬可愛いと思いましたが、よくよく見れば見るほど生理的に無理な感じがします」
黒猫の妖精はこんなに可愛いけれど、アンジュはたった今、子猫に想定外の動きをされたのを根に持って、嫌な物でも見るかのように僕と正反対の反応を示している。
「こんなに可愛いのに悪魔の使いだなんて酷いじゃないか!!それにこんなに震えて可哀想に……アンジュ、僕父上に飼っていいか相談してみるよ」
「兄上が悪魔の使いの世話??まあ父上が飼って良いと言うとは思えませんけど、もし飼う事になっても僕にはその悪魔を近づけないで下さい。兄上には悪いですが、なんかその生き物を見るとゾゾッとするんです」
そう言って嫌な顔をしたままアンジュは戻って行ってしまったけれど、とりあえず万が一僕がこの子猫を飼ったとしてもアンジュに近づけさえしなければアンジュは反対しないって事か……。
黒猫の妖精はまだブルブルと震えているが、僕の事は大分慣れたのか少し「ゴロゴロ」と喉を鳴らして僕の胸の中にくっついて離れなかった。
「うう……可愛いなぁ。大丈夫だよ。僕がここでお世話してあげるからね」
黒猫の妖精にそう呟いてみると、胸に抱きついていた子は此方を見上げて僕の唇をペロンと一舐めした。
「ぷあっくすぐったいよ~!!君は何処から来たんだい??名前をつけてあげないとね!!」
妖精だと思ってしまったけれど,抱き締めた子は確かに命の温かさがあってこの世に生まれた感触がある。この震えた生き物に安心して生きて欲しい。だけど、この子は羽が生えていて確かに他の生き物とは違うから父上がなんと言うか……。
そうして僕はこの黒猫の妖精を飼っていいか父上にお願いしてみた。
30
お気に入りに追加
715
あなたにおすすめの小説
【完結】『ルカ』
瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。
倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。
クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。
そんなある日、クロを知る青年が現れ……?
貴族の青年×記憶喪失の青年です。
※自サイトでも掲載しています。
2021年6月28日 本編完結
【完結】オーロラ魔法士と第3王子
N2O
BL
全16話
※2022.2.18 完結しました。ありがとうございました。
※2023.11.18 文章を整えました。
辺境伯爵家次男のリーシュ・ギデオン(16)が、突然第3王子のラファド・ミファエル(18)の専属魔法士に任命された。
「なんで、僕?」
一人狼第3王子×黒髪美人魔法士
設定はふんわりです。
小説を書くのは初めてなので、何卒ご容赦ください。
嫌な人が出てこない、ふわふわハッピーエンドを書きたくて始めました。
感想聞かせていただけると大変嬉しいです。
表紙絵
⇨ キラクニ 様 X(@kirakunibl)
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜
ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。
そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。
幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。
もう二度と同じ轍は踏まない。
そう決心したアリスの戦いが始まる。
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる