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本編4
47ダイルの処罰とその後
しおりを挟む「アンドル!!」
王子が救助されて共に帰ると王宮で待機していた父上と目が合った途端ガシッとハグされてしまった。
「ゴホゴホ!!ゴホゴホ!!」
(わっ父上!!こんな所で恥ずかしいです!!)
「その声はどうした?毒を盛られたのか!!取り敢えず無事だった事が分かって本当に良かった!!」
王宮の人達が見ている前なのに抱き締められてしまった。僕は水浴びしかしてなくて臭いかもしれないというのにお構いなくてちょっと恥ずかしい!!でも嬉しい。それに心配されたんだと思うと何も言えずそのまま抵抗せずにいた。
父上は昨日王宮からの連絡を受けて心配して王宮で待機していたそうだ。
それから王宮の医療班が用事してくれたポーションを飲むと喉も元に戻って父上と話した。
「危険な目にあったんだな。宝剣の魔石は何個潰れた?」
「2個です。その内1つは王子の身代わりになりました」
「そうか……殺されそうになったんだな。念の為宝剣を持っていて良かった」
「はい……」
「詳しい事は聞き取りの時に一緒に聞くよ」
そしてそのまま、父上と一緒に王宮の部屋を借りてシャワーを浴びた後、聞き取り調査に臨んだ。
僕は出来る限り、ダイルの事や、崖から落ちた経緯や、王子とのその後の話をした。
それは王子やその後チェックポイントで待機していた護衛達の話とも一致する内容だったようだ。
そしてダイルはというと、急に王子とアンドルが突然いなくなって探していたんだけど、見つからなかったという事を言っていたらしい。
「きっと2人で王宮の外に駆け落ちしたんだ!!」
そんな大ボラを吹いていたけれど、侍従達は王子ならやりかねないと考えたそうだ。
しかし侍従長だけは最近のエドワード王子は決してそんな事はしないと言い切ってくれて、実際そんな事はなく流石は侍従長だと評判が高くなっている。
そして王子と僕が無事見つかり、ダイルは嘘がバレて殺人未遂の実刑判決で牢屋へ。
後から「ちょっとした悪戯だった」とダイルが反省してみせたけれど、実行した事が重大過ぎたんだ。
ただ、まだ未成年だった事と、父親が多額の慰謝料を払った事で情状酌量が認められて通常の半分の刑期になった。
父親の北の子爵は今回は息子が単独でやった事だと言い切り、証拠もなかった為に子爵への直接の処罰は無かったが、息子の王子殺人未遂の責任を取らされて領地の半分没収と爵位の降格が決定した。
そして僕もお見舞い金と称して北の子爵から多額のお金を受け取った。このお金は僕の支払う婚約解消に関わるお金として大いに役立ってくれるかも知れない。
その後、デニーとサックからハイキングの話を散々聞かれたし、2人からもハイキングの話を沢山聞く事になった。
彼等は2人ペアでハイキングをしている途中になんと!!別のペア達に待ち伏せをされてびっくりしたんだそうだ。
でも別のペアは「先程はごめん」とすぐに謝ってくれて、挨拶の時に態度がおかしい経緯を話してくれたんだそう。それで仲良くなる事ができた。
「アンドルはダイルって奴のせいで大変だったな。俺達の方は話してみるとそんなに悪い奴らじゃなくて良かったよ」
「そうだったんだね。王宮でサックが皆に挨拶した時の他の皆の態度が悪過ぎて、一言言ってやろうとばかり考えてしまったけれど、サックが止めてくれて良かったよ!!」
「そうだな。俺もその時は金持ちケンカせずみたいな気持ちしかなくてアンドルを止めたけれど止めて良かった」
それから暫くして王子の右足首が治ったのを機にダイル以外の8人で合同のプレスクールを行う事になった。
これからは僕達3人もずっと合同で一緒にやる事が正式に決定したらしい。
「アンドル!!先日でのハイキングはお互い大変だったな!!」
「はいっ!!エドワード王子も本当にご無事で何よりです」
プレスクールでエドワード王子の右足首をみると、もう固定されている事も無く、元の足に戻っているようで良かった。
「ふふっしかしアンドルと2人きりの野宿も私にとって素晴らしい思い出になったよ」
「王子……お怪我もあって大変だったというのに……お気遣いに感謝しております」
そうして王宮での合同プレスクールは当初思っていた以上に和気あいあいとして楽しいものになった。
元々王宮で参加していた王子以外の者達も、ハイキング以来友達同士の結束力が強くなったようだ。そして学校が始まる迄の間は皆で楽しく定期的にアクティビティをこなしていった。
そんな入学前のある日……
事前連絡もなく突然王宮からの使者が侯爵家にやってきた。そして僕に至急報告があると言う……
「エドワード王子はアンドル様と同じ学校へは入学されません。陛下の意向で他国へ留学される事が決定しましたのでその報告で至急参りました」
「はっ??」
とその様な連絡が入った。
「えっ?今までプレスクールも何度も重ねて行ってきたんですよ?僕はこのままエドワード王子と一緒に同じ学校に通うものだと思っていましたのに何故でしょうか……?」
こんなに学校に入る準備をして来たと言うのに、何故?と僕が思うのは当然の事だし、詳しく教えて欲しい。
「私達も急な話だった故、詳しい事は知らされておりませんが、陛下の一存だったそうです。そして留学中はアンドル様や他のご学友とも連絡は一切されないとの事です」
陛下の意向?僕がいくら王子の婚約者だからって直接陛下に面会して聞くことなんて未成年の僕には出来ない。でも……
「し、しかし僕は婚約者ですし、将来王子と一生を共にする覚悟でおりますが、何年もお互いに連絡を一切しないなんて……そんな事ってあるんですか?」
王宮からの使者は僕の気持ちも分かると言うような苦しい表情をしている。
「……はい」
「で、では……僕は婚約者である必要はないのではないでしょうか?正直本当に結婚するかも未定ですし、王子と一切連絡をしないでずっと婚約者で居続ける自信はありません……王子にも他に心が移る可能性だってありますし、私も人間なんです」
「……申し訳ありません。私が出来る事はアンドル様のお気持ちを王宮に報告する事位しか……」
「あっ済まない!!僕の気持ちをぶつけてしまった!!君に何かしろってお願いしている訳ではなかったんだ」
「いいのです。この度のアンドル様のお気持ちも分かりますので……しかし王子は既に留学先に行ってしまわれたのでこの国にはおりません」
そうして王宮からの使者は僕に申し訳無い様な様子のまま、帰って行った。
「そんなっ王子はもう行ってしまったのかい?僕は王子に一時の別れの挨拶もさせて貰えないのか……」
つい独り言を呟いてしまう。
僕は王子の婚約者として恥ずかしくない様ずっと行動してきた様に思う。それなのに、王子の重大な事では連絡も事後報告になってしまうなんて……
僕は自分の存在価値があまり無いのではないかと初めて意識してしまった。
僕から王子の婚約者を取ったら一体何が残るのだろうか。
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