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〜王子side〜3
41エドワード王子の不貞1
しおりを挟む「次のハイキングではアンドル様達3名も王宮領に来て頂き、合同でハイキングを行う事になりましたよ。王子、良かったですね!!」
侍従長が私にそう伝えてくれた。がしかし、侍従長の顔は優れない。
侍従長だけじゃない。最近の侍従達、護衛達も顔に疲れを隠せないでいる。
それもそうかも知れないな……原因は王宮のプレスクールが関係しているのは私も分かっていた。
最初の頃は仲良くやれていた筈だったプリスクールだが、いつの間にか1人1人が腹を割って話そうとせずに疑心暗鬼になっている様だ。
そして私がいない時には、誰か1人をターゲットにしてイジメをしているんだとか……そのターゲットになる奴は同じ時もあるが、急に変わる時もあると言う……
私がいる時には全くそんな素振りを皆がしないので、侍従達から初めて報告を受けた時には驚いた。
折角これからの人生で長く付き合って行きたいと思っているメンバーなのに、学校に行く前からつまづくとは。
そして侍従達や護衛達からの報告を毎度聞いているとダイルだけはイジメられていない事が分かった。
ダイルは北の子爵の息子で数年前に事業で大成功を収めてからはこの国でも力のある貴族になった。
今回も王族に多額の寄付をして初めて王宮のプレスクールにねじ込んだと聞いているが……そんなダイルは身体も小さく、愛嬌もある可愛い男の子だった。
そんな子はむしろ虐められているかもしれ無いと逆に心配していたが……
そこで王宮のプレスクールの中でもどこの貴族派閥にも入っていない宰相の息子と騎士団長の息子に話を聞いた。
すると、何と2人以外の者達の家はダイルの父である北の子爵と大きな取引相手になっているようで、親からダイルには逆らうなと言われているんだとか……。
そしてダイル以外の者達は事を荒立てたくないと虐めの標的になった時にはお互い庇う事なく、虐めるフリや虐められたフリをした方が穏便に事が進められると考えていたそうだ。
「王子、とりあえずダイル以外の者は表面的にはギスギスしておりますが、仲が本当に悪くなった訳ではないので安心して下さい。ダイルからお互いの悪口を聞いてしまった時は疑心暗鬼になってましたが、今はダイルには見つからない様に話し合って誤解を解いております」
「そうか……すぐ気がつかなくて済まなかったな」
「いえ、これから貴族間のトラブルなんか腐るほどありますから……どういう風に解決して行くのか……私達の親も静かに見守って試しているのだと思います」
「成る程な……私も侍従達と護衛達が困っていたから少しでも負担が減らせる様にしよう」
そうして侍従長には虐めの件を詳しく伝えておいた。
虐めるのも虐められているのもフリだから大怪我だけ気をつけておく様にと言うと、その後の侍従長からの報告では虐めはあるが、けがなどは一切ないので、虐めのフリというのは本当の様ですとの報告があった。
そんな事が続き、次回はアンドル達が合流する事になったので、侍従達もこの悪い流れが変わってくれないかとアンドル達に希望を見出しているようだ。
私自身は勿論アンドルと一緒に初めてのプレスクールが嬉しい。しかもハイキングだ!!これはもうデートじゃないか!!
そう思って私とアンドルをペアになる様に侍従長に頼んでみたら……珍しく「良いですよ」との返事を貰えた……
おやっ??
絶対そんな事許して貰えないと思ったんだが、逆にどうした??
「その代わり、ダイル様も一緒3人でなら良いですよ。やはり私達の中でもダイル様が個別に悪口を流していて、それで皆の仲がギクシャクしてしまったと推測しているのです。
だから、ダイル様を王子とアンドル様と一緒に行動するのが1番スムーズにハイキングができると思うのですよ」
何だと……結局侍従長も私とアンドルとの仲を引き裂こうとしているだけじゃないかっ!!ペアだぞ!!デートの予定だったんだぞ!!
「何でダイルが私とアンドルのペアと一緒に行動するのが1番スムーズなんだ?」
「それは王子とアンドル様は特別な信頼関係で結ばれているからです。いくらダイル様が王子やアンドル様にお互いの悪口を言ったとしても王子はアンドル様を信じるでしょう?
アンドル様も王子に対して忠誠心がお有りですから惑わされないと思いますし」
そう……か。確かにな。私とアンドルには信頼以上の愛情があるのだから。
「他のペアでは確かに無理そうだな……そう言う訳なら仕方がない。私とアンドルとダイルの3人でハイキングをしよう」
「そうして頂けると私達も助かります」
侍従長は私の扱いに長けているが、まんまと乗っかるのも悪くない。
たまには侍従長の指示にも従った方が、アンドルと会える日も増える可能性が高くなるからな。
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