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本編3
40ハイキング5
しおりを挟む「ゴホゴホ……ゴホゴホ」
(王子の荷物が落ちたままになっているので集めて来ます!!」
「アンドル、その姿で行っては駄目だ!!裸ではないか!!」
「ゴホゴホ……ゴホ……」
(そうですけど……じゃあ干してあるシャツだけは乾いてきたので着ていきます……)
「……ちぇっ……ああ、せめてそうしてくれ……私の荷物の中には緊急時の発煙筒がある筈なんだ」
「ゴホゴホ!!ゴホゴホ!!」
(そうなんですかっ!!嬉しいです!!じゃあすぐに取りに行ってきます!!)
「アンドルが喜ぶ顔がようやく見れたよ」
そう言って王子は久しぶりのアルカイックスマイルをしてくれた。多分身体も痛いし、熱もあるというのに……こんな時でも気を遣って笑顔を見せてくれるなんて王子無理しないで下さい。
そうして王子の荷物を出来るだけ集めて王子の元へ持っていくと、王子が自分で自分の荷物の中を確認し始めた。
顔色も少し良くなってきて薬が効いたのか痛みも我慢できるようだ。
「残念だが私の荷物は殆ど使い物にならなかった。ポーションも全部割れている。それに発煙筒も濡れているから使うのは危険だ。しかしこれだけはまだ濡れて無かったから使ってくれ」
渡されたのはまた王子のパンツだった。
王子は自分の着替えで念の為にパンツだけは用意しておいたそうだ。何かの拍子でお漏らしちゃったら恥ずかしいもんね。
前回のお茶会でパンツを渡された時はどうなるかと思っていたけれど、今は下半身が寒くてスースーしていたから、一回り大きいパンツでも正直有難い。
「ゴホゴホ、ゴホゴホ!!」
(王子、パンツ有難うございます!!嬉しいです!!)
「いや、アンドルは自分の着替えを私に着せてくれたんだろう?私は着替えまで用意してなくてすまんな。まさかこんなハイキングになるとは思わなかったんだ」
「ゴホ……」
(私もです……)
「そうか……私が手を洗ってから休憩場所まで戻った所、2人ともいなくて探していたんだ。すると物音をしたと思った時にはダイルが短剣を振りかざしてアンドルを脅していたように見えた。アンドルはその時どの様な状況だったのか教えてくれるか?」
「ゴホゴホ……」
(分かりました……)
そうして僕はダイルから貰ったクッキーで喉が潰れた事、ダイルから相談があるからと行って休憩場所から少し離れた事、ダイルが僕を殺そうとした事等を全部ゴホゴホのまま話した。それでも王子は僕の話を聞き取れたのか、何度も頷いて聞いてくれた。
「ダイルは本当はプレスクールに参加予定はなかったんだが、ダイルの父親の子爵が王族に相当な寄付を積んでね、今回私の友人になりたいと息子のダイルをプレスクールにねじ込んだそうだ。
私の父上である陛下も権力のある地位や役職を与えるよりは、プレスクールに参加だけなら何も影響はないだろうと思ったのだろう。
それが、まさか私とアンドルが行方不明になるとはな……今頃大変な騒ぎになっているかもしれない」
「ゴホ……」
(そうですね……)
「まあ、私の右足首がこんなだし、発煙筒も使えない。ここは火の番を交代しながら日が昇るまで2人でここにいるしかないな。だけど……アンドルだけなら帰れるかも知れないが……私が動け無いんだ。一緒にいてくれるか?」
「ゴホゴホ!!ゴホゴホ!!」
(勿論です!!王子と一緒に居させて下さい!!)
「そうかっ!!やっぱりアンドルはそう言うと思っていたよ!!アンドル有難う!!」
こうして火の番をしながら、王子と一夜を共にした。一夜を共にするって言ってもまだ僕達は身体も成長していないので人様に対してやましい事なんかはしていない。
交代で寝ながら火の番をして、たまに一緒に起きている時間があれば一緒にお喋りを楽しんで、僕が念の為持って来ていた携帯食と水を2人で食べて一晩があっという間に過ぎていった。
明け方になるとロープに干してあった服も乾いたので、2人でまた自分の服に着替える。
これでようやく来た時の状態に戻った時、王宮からの捜索隊が僕達を見つけてくれて、捜索隊の発煙筒を使用した後はどんどん護衛達が増えて王子を運んで助けてくれた。
僕と王子は一応無事に生還できたらしい。
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