【完結】王子様の婚約者になった僕の話

うらひと

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本編3

39ハイキング4

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「ゴホッゴホッ」


 いたたた……ここは何処だろうか……

 気づいたら、辺りは薄暗くなっていて身体のを動かそうとすると節々が痛い。それに服がドロドロに濡れている。

 そうだ……僕は崖から落ちて……

 王子は??王子も一緒に崖から落ちてしまった筈。
 王子は大丈夫だろうか……。


 僕は崖から落ちる時に、自分から飛び降りる事を決めて飛び降りたし、リュックをクッションがわりにしていたので身体の痛みはあるものの、どこも怪我をしていなくて無事だった。
  それに身体に忍ばせていた宝剣を確認すると、魔石が2つ粉々に砕かれていた。多分身につけている僕の危険を察知して護ってくれたのだろう……宝剣を持っておいて本当に良かった。


 辺りを見渡すと、此処は渓谷になっていて山の崖からこの川に落ちて来たのが分かる。
   落ちた高さをマジマジと確認するとゾッとする……下手をしたらダイルに立ち向かった方が生存率が高かったかも知れない。

   だけどダイルの剣の実力が分からない状態で、もしダイルの仲間が隠れていたらと思うと無謀に立ち向かうより、宝剣もあったので崖から落ちた方が生存率が高いと今回は判断した。

   だけどまさかエドワード王子まで落ちてしまうとはダイルも考えていなかっただろう……。
   

 近くには荷物が散乱していて王子も川には流されなかったが、服はグッショリ濡れて倒れていた。僕の宝剣の魔石が2つ砕かれていたので、王子も宝剣が護ってくれた筈だ。



「ゴホゴホー!!」
(王子ー!!)



 王子の意識はない。いくら宝剣が護ってくれた筈でも王子の身体がどんな状態でいるのかはっきりしない内は、なるべく動かさないようにして寝かせてあげなければ……


 それからの僕は近くに崖が削れてできた洞窟を見つけて、王子を何とか運んで寝かせた。眠って貰っている間、枯れ木と枝を集めて焚火を起こす。


 着替えも自分用に1着分用意していたから、それは王子の身体をタオルで拭いてから着せる事ができた。


 王子の服と僕の服はグッショリ濡れて汚れてしまったので、僕も服を全部脱いで川で自分の身体汚れを落とし、服を洗ってから絞って木と木にロープをひっかけると、そこに服を干した。


「ゴホ……ゴホ……ゴホ」
(焚き火をしているけれど、流石に裸は少し寒い……)



 着替えもタオルもロープも万が一の事を考えてちゃんと用意しておいて良かった……それにしてもダイルがあんな事をするなんて……僕は元より、王子までもこんな事になってしまったんだよ。
   下手をしたら死んでたんだ。これは大問題だぞ……今頃大変な騒ぎになっている事だろう……


 今この焚き火の煙で王宮の人達が気づいてくれると良いんだけど……。


 それに、この声は戻るのだろうか……喉の痛みはないけれど、声を出そうとすると「ゴホゴホ」しか言えなくなってしまった。


    ポーションで治るかも知れないけれど、実は崖から落ちた時にポーションは僕の荷物から出てしまい割れてしまったんだ。残りは1つしかないので、それはエドワード王子に飲ませたい。


「ハアハア……ハアハア……グゥッ」


 火の番に集中していたら寝ている王子から苦しんでいる声が聞こえた!!王子!!


「ゴホゴホ??ゴホゴホ??」
(王子!!気づかれましたか??身体は?痛い所はありますか??)


 王子??


 王子をみるとまだ意識が朦朧としていた。顔を真っ赤にさせて顔から尋常じゃない汗が流れている!!先程王子用に用意して近くに置いていたタオルで王子の汗を拭ってあげたら、タオルがしっかり絞れていなかった為に、余計に王子の顔が濡れてしまった。御免なさい王子!!


 急いでもう一度川で洗ってからしっかり絞ったタオルで拭いてあげる……すると「う……ん……アンドル……」と王子は薄目を開けて僕を見てくれた。良かった。王子の意識が戻った!!


「ゴホゴホ!!ゴホゴホ?」
(王子!!大丈夫ですか?)


「なん……だ?アンドルは声が出ないのか……?それにこの服……アンドルが着せてくれたのだな。そして焚き火と洗った服を干してくれて……まるで私達は新婚夫婦じゃないか……夢が叶った。ハアハア……ハアハア」


   王子……今はそんな冗談を言っている場合じゃないでしょう?


「ゴホゴホ……」
(王子は熱がありますね……)


 王子は意識が戻ってきてもまだ朦朧としていて、額に手を当てると熱があった。もしかしたら何処か怪我をしているかもしれない。身体を少し触らせて貰おう。


「ゴホゴホ、ゴホゴホ」
(王子、何処か痛い所がないか身体を触らせて貰いますね。痛かったら言って下さい)


「分かった」


 僕の言葉は聞き取れないと思ったけれど一言そう言ったら王子が返事をくれた。
   えっ??今の僕の言葉を聞き取れたの?でも僕が何か言ったから適当に返事をしてくれたのかも知れないし、と、とにかく今は王子の怪我の様子だ!!


 ゆっくり王子の腕や頭、首、胸などを触っていくが、王子は「んあ……」とたまに声を出す程度で「痛い」とは言わなかった。そのまま下半身を触っていくと、右足首の部分で「痛い!!」と王子が叫んだ。


「ゴホゴホ、ゴホゴホ」
(右足首ですね。確認します)


「分かった。アンドル頼む」


 まただ!!王子は僕の声が聞こえているみたいだ。その方が僕としてもやりやすいので、ここは王子が僕の言葉を聞けている程で進もう。


 王子の右足首をみるとかなり腫れて熱がこもっていた。これは骨が折れているかも知れない。それで王子自身も発熱してしまった可能性が高いな。
 僕はタオルを宝剣で長めに破り、足首をぐるぐる巻いて固定した。
 そして王子にはポーションを用意した。


「ゴホゴホ、ゴホ…?」
(ポーションですけど……飲めますか?)


「飲む」


「ゴホゴホ!!!!」
(やっぱり王子は僕の声が聞き取れるんだ!!王子って凄い!!)


「それはアンドルが大好きだからさ」


「ゴホ……!」


 今、アンドルが大好きだからと言われてちょっと王子にドキドキしてしまった。
   それに今王子は大変なのに僕に気を使って……熱もあって右足首は多分骨折しているというのに……

 あっそうだ!!王子にときめいている場合じゃないや……王子の荷物がまだ散乱しているから取りに行かなくちゃっ!!
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