【完結】王子様の婚約者になった僕の話

うらひと

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本編3

38ハイキング3

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 そしてそこからはとても速かった。5つのチェックポイントの内3つをさっさとクリアして今はお昼休憩している。

    今までのよろけたり、転びそうになったのは何だったのか教えて欲しい位だったけど、これ以上他のペアと差が開いでもいけないし、僕もこれ以上怒っては駄目なので黙っておく。


   ダイルは先程僕が怒ってしまったからか、少しシュンとしながら「クッキーどうぞ」と僕にプレゼントしてくれた。

   それを「有難う、さっきはごめんね」と言ってクッキーを受け取って食べる。僕の方こそ怒ってしまって申し訳なくなった。

   貰ったクッキーはとても甘くて美味しい。疲れた時に甘い物は癒されるなぁ。


 王子を手を洗いに席を外していた時、ダイルから「アンドルにちょっと相談したい事があって……王子に聞かれたくないので、少し付いてきてくれないかな?」と言われた。


 ダイルが僕に相談??そんなにまだ相談するような親しい仲ではないけれど、思い悩んでいるみたいだから一緒について行った。


「ダイル、どんな相談なんだい?僕で相談に乗れる事があれば良いけれど……」


「アンドル有難う!!アンドルしか相談できない事なんだ!!実は……私はエドの事が好きでね。お前なんかいなくなっちまえば良いと思っているんだよ」


えっ?ダイルは僕が居なくなれば良いと思っていたの!!そしてダイルは王子の事が好き??確かに先ほどから僕の目の前で王子とくっついていたのはそういう事だったのか……。


「えっ??ダイルはエドワード王子の事が好きなのかい?でも……僕と王子は王族と侯爵家の間で決められた婚約で僕の一存で決定した訳ではないんだよ。だから僕には何もダイルにしてあげる事は出来ないんだ……」


 すると、ダイルは今まで見た事がない笑顔で僕に言った。


「私だけなんだ。王族との繋がりのある役目を持っていないのはさ。ほらっ?だってみんなは幼い頃に王子とお茶会をして役目を貰ったみたいなのに、私は当時、力のない下位貴族で呼ばれなかったから」


 ダイルの家は確かに子爵だし、昔のお茶会で会った記憶はない。


「それでね、今回王族のプレスクールに参加して初めてエドを見たんだ。その時、世の中にこんな素敵な王子がいるんだと一瞬で恋に落ちてしまったんだよ。だから君さえ居なければ王子と恋仲だってなれるし、婚約者という役目も私に転がり込む可能性も出てくるじゃないか」


 そこまで言うとダイルは短剣を取り出して見せつけてきた。


「えっ??ダイル……まさか僕を??ゴホッゴホッ……」


 あれっ??急に声がっ声が出ない……


「ああ、やっと効いてきたんだね。さっきあげたクッキーは喉を潰す成分が入っているんだよ。流石に毒殺は君の身体に証拠が残っちゃうからやめたんだから感謝しなよ。
   ここで叫ばれたら王子やチェックポイントで待機している護衛に見つかってしまうからね、身体に残らない喉を潰す薬だけクッキーに練り込んだんだ」


「ゴホッゴホゴホッ……」


 駄目だ……本当に声が出ない……人から貰った物をすぐ食べてしまうなんて迂闊だった。でも未来のご学友だし、僕は怒った後だったから、ダイルがクッキーをくれたのは僕に歩み寄ってくれたんだと思っていた。


   後ろは崖か……確か20m位は段差がある筈。


 前からはダイルが僕を殺そうとしていて、後ろには崖……ダイルと対決するか、崖から飛び降りるかどっちが生存確率が高い??


「おーいアンドール、ダイルーーどこだー!!!」


 その時少し遠くでエドワード王子の声が聞こえた。王子が探してる!!


「ゴホゴホ!!ゴホゴホー!!」


「チッ早くしなくちゃっ!!アンドルじゃあねっバイバーイ!!」


 そう言って王子の声に少し焦ったダイルが短剣を振りかざして僕の方に走ってきた。しょうがない!!僕は向かってきたダイルから逃げる様に崖を飛び降りようとした時、


「アンドルーー!!」


 何と、後ろから王子が僕を助けようと凄いスピードで追いつきそうだった!!そして僕の手を掴みかけた時、王子がつまづいて一緒に崖から落ちてしまった。



 王子ー肝心な時に転ばないでーー



「うわあーーーー!!」
「ゴホゴホーーー!!」





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