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本編3
36ハイキング1
しおりを挟む挨拶でシーンとなっていた雰囲気だったけど、王宮のプレスクールの先生から今日のハイキングの話を伝えられるとホッとした。基本的に王宮領なので今回のハイキングは護衛は同行せず、チェックポイントで待機しているそうだ。
それにしても僕は少し前の挨拶の出来事がグルグルと頭の中で回っている。
「アンドル、アンドル……」
近くにいたサックが小さな声で僕を呼んだ。さっきはサックが止めたけど、僕が一言言えば良かったと今でも思っている。その事で話したいのだろうか……。
「サック、さっきは……」
「良いんだアンドル。俺の為にあいつらに物申そうと思っていたんだろう??心配するな。どうせ俺は格下に見られたんだろう……それに、ハイキングのペアは俺はデニーと組む予定だからそんなに悪くならない」
「えっ!!ペアはくじ引きだって言っていたけど……」
「しっ……デニーの父は近衛隊長だし、俺達2人は最初から無視されたり格下に見られたりするかもしれないと思っていたから先にデニーと同じナンバーのクジを引けるようにしてくれると聞いている」
「えっそうなんだ……じゃあ僕は2人とペアになれないんだね」
「ああ……だが、アンドルなら流石に王子の婚約者だから俺達みたいな対応にはならないだろう。それにアンドルは王子の希望で王子と一緒に行動するらしいぞ。一緒になれなくてごめんな」
「ううん……」
「じゃあ、今日のハイキングで怪我しないようにな」
「サックもね」
こっそり話していたら丁度デニーがやってきて先生の前で挨拶をすると、王子とご学友達に拍手されていた。本当に王子がいる時には露骨に態度が違うな……。
王子のご学友達が先にクジを引き始めている。ペアになる番号は1~4番が書いてあるようでデニーとサックは共に4番だった。そして最後に僕がクジを引く番になった時は既にクジが1枚も残っていなかった。
あれっ??
すると王子が嬉しそうに伝えてくれる。
「アンドルすまんな。クジは8枚しかなくて最後の者は私と一緒に行動するんだ。全部で9名だから私とアンドルと……私と同じ1番を引いた者はいるか?」
はは……サックの情報だと、最初から王子と僕がペアになる予定だったっているのはこの事だったんだね。そして3人で僕は行動するのか……すると王子のご学友の1人がこちらを向いて手を挙げた。
「私です!!エド!!アンドル様宜しくお願い致します」
僕よりも背が低いその子はニッコリ笑って王子に手を振っていて、とても愛嬌がある子だった。この子は見た記憶がないかも知れない……それにしてもエドワード王子の事をエドって呼ぶんだな……。
「宜しくお願いします。えっと君の名は…」
「アンドル、彼は北の子爵家の子息でダイルだ。今日は人数が多い分皆より早くチェックポイントが通過できると良いな」
王子が名前を教えてくれたのでまた挨拶をしておいた。
「ダイルさん、宜しくお願いします」
北の子爵と言えば貴族の位こそ下位だけど、数年前に商売で大儲けしたそうで高位貴族からも一目置かれているという……落ちぶれそうな高位貴族なんかよりよっぽど影響力がある下位貴族だ。
僕は今の所まだ落ちぶれてはいないけれど……というか僕の事さえなければ金持ちだった筈なのに、家族が僕の為に協力してくれて侯爵家は絶賛節約中で申し訳なくなる。
だから金持ちのご子息と仲良くして貰えるなら仲良くして損はないよな。
「アンドル様、私の事はダイルと呼んでくれれば良いですよ。アンドル様もアンドルと呼び捨てにしてお呼びしても良いですか?」
「うん、勿論だよ!!仲良くしてね」
「アンドル、此方こそ!!エド!!早速最初のチェックポイントに行こう!!」
そう言ってダイルは僕にニコっと挨拶をした後、エドワード王子の腕を掴んでグイグイ歩いて行ってしまったので、僕はそれを後ろから追いかける様に付いて行く事になってしまった。
あれっ??ハイキングってこんな感じ??
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