【完結】王子様の婚約者になった僕の話

うらひと

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本編3

34合同プレスクール

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 家庭教師がそう伝えてくれたので、僕みたいに皆驚いているかとデニーとサックを見ればもう2人共既に知っていたみたいで落ち着き払っている。僕だけ知らなかったのか……。


「アンドル、私とサックも今日知ったばかりだから内緒にしていた訳じゃないぞ。気にするな」


 僕だけ内緒にされたのかと考えてしまったのを見透かしたかの様にデニーがフォローしてくれた。デニーはそういう空気を察するのが上手いかも知れない。


「そうなんだね。でも王宮のプレスクールってどんな感じだろうって思っていたから楽しみだなぁ」


 そうするとエドワード王子ともお茶会以外で初めて会えるし、他のご学友になる人達ともきっとデニーの様に以前お茶会で会ったかもしれないから会うのが楽しみだな。


「……私は全然楽しみじゃない。どちらかと言うとこの3人だけの侯爵家のプリスクールが楽しいし、父から聞いた話だと王宮の方に参加しているご学友達は選民意識が強いらしいから……」

 デニーはそこまで話すと黙って考え込んでしまった。デニーの父は近衛隊長だから王子やプレスクールの雰囲気なんかも直に感じているんだろう。


「まあ……王子のご学友の皆さんはちょっとその傾向が強いかもしれないですね。侍従達や護衛達も一部我儘なご学友がいて困っていると聞いた事があります……。しかし、次のプリスクールはハイキングとの事ですよ。2人1組になって王族領にあるチェックポイントを回るそうです。ですからご学友全員と関わる事もないでしょう」


 家庭教師が教えてくれる王宮のプレスクールの課外授業の話に僕は楽しみで胸を膨らませていたけれど、デニーとサックはそんなに楽しみじゃないのかいつものお喋りも続かないで暗い表情をしている

「そんなに王宮のプレスクールの評判は悪いのかい?」

 少し心配になってきて2人に聞いてみたら、サックの方が口を開いた。

「ん……俺も聞いただけだけど、ご学友達が仲良しどころかお互いを蹴落とそうとしているみたいだぜ。その癖王子がいる時だけ皆仲良しのフリをしているんだとか。そうだろデニー」

 サックがデニーに同意を求めていて、そこでデニーもようやく頷き口を開いた。

「ああ、俺も父が護衛しているから態度が露骨に変わるって聞いて驚いたんだ。護衛や侍従達だって王族に色々な事を報告している立場だと言うのにな。王族達は王族の危害さえなければ貴族同士のいざこざは静観して面白がっているようなんだ」

 デニーが話してくれた事はきっとデニーの父が悩んでいる事だ。そう思うと王子のプレスクールの護衛や侍従達って凄く大変そうな感じが伝わってくる。

「そんな話を聞いたらちょっと不安になっちゃうけどさ、僕にはデニーとサックという心強い友達が2人もいるから安心しているんだよ。3人で助けあえば何とかなるよきっと」

「そうだな!!アンドル良い事言ったなお前っ!!」

「うん、俺も護衛の父が様子を見てくれていると思うし、3人で力をあわせて乗り切れる気がしてきたよ」

 2人ともそんなに深刻に考えていたんだ……僕はワイワイした3人だけの授業しか受けていないからそんな陰湿な王宮のプレスクールって想像できない。

「まあまあ、次回はたまたま合同のハイキングですけど、問題があれば合同授業はすぐ中止になりますから、そんなに構えず楽しんで来てくださいね。後で息子のサックからの話を楽しみにしていますよ」


「父さん~!!報告とか面倒だ~」


 家庭教師は次の合同学習にはついていかなくて、本来の通常業務である王宮の文官の仕事をするんだそうだ。


 ふふっ……王都領でハイキングかあ。当日は良い天気だと良いなあ。



 父上とアンジュには次のプレスクールが王宮の王子達と合同でハイキングをする事を報告すると、2人からはとても心配されてしまった。用心深い父上はうーんと考え込んでいる。


「何か罠があるかも知れん。アンドル、準備や備えというのは幾らでもした方が良いものなんだ。普段節約していると思うが、ここぞという大事な用意にはしっかりお金をかける様に」


「はい、父上」


 デニーとサックもいるし、そんな罠なんてないだろう?と思ってしまうけれど、父上が心配している気持ちが嬉しいので言う事を聞いておこうと思う。万が一って事もあるもんね。

「父上、侯爵家の宝剣である短剣を兄上に持たせた方がいいのでは?」

「はえっ!!アンジュッ!!それは流石に無理だよ」


 アンジュが父上にそんな事を言った。侯爵家の宝剣ってあの短剣かー……あの短剣ってめちゃくちゃ実用性の高い便利過ぎる短剣だけど僕のハイキングなんかにいる??心配するにしても大袈裟過ぎやしないかな……。


「……そうだな。念には念を。だ。アンドル、あの短剣を持っていけ。それで何もなければ別に良いじゃないか」


「父上までそんな事を……分かりました。大丈夫だと思いますが宝剣をお借りします」


 僕のハイキングに宝剣なんて……って思うけれど、2人の真剣な表情に圧倒されてしまって持っていく事になってしまった。
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