【完結】王子様の婚約者になった僕の話

うらひと

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本編3

31アンジュside2

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 そこまで兄上が忠誠を誓っている王子ってどんな素晴らしい人なんだろうなぁ。僕は将来の伴侶になるかもしれないエドワード王子に思いを馳せる様になっていく。


 そう思ってお会いした王子は確かにとても麗しくて兄上や僕の容姿とはまた違った魅力のある方だった。

 黒髪にブルーの透き通った瞳。

 背もスラッとしていて立ち振る舞いも無駄もなく、隙もない優雅な振る舞いのできる人だった。

 珍しく僕は緊張してしまい順番を間違えて挨拶をしてしまった。それを優しく咎める兄上。



 クソッ!!
 兄上が僕をポイント稼ぎに使いやがって。


 そう思ったら腹が立って兄上をキィーと睨みつけておいた。

 そして僕は王子を振り向かせようと一生懸命頑張った。

 しかし、それは見事に打ち砕かれる事になってしまったけれど……。


 この王子はクセがあるとは父上が言っていたけれど……話してみたらクセしかないじゃないかっ!!


 しかも最初は麗しいと思った王子が兄上を見つめている目が滅茶苦茶気持ち悪い!!……おぇっ。そして王子の握って離さない兄上の手を好きな食べ物とか言った!!


   ヒィィィーーーーー!!ぎもぢわるーーーーー!!


   周りに控えている護衛達や侍従達はぬるい目をしながら静かに控えている!!という事はこれがいつもの王子なのかっ!!

 本当に兄上はこんなお茶会に1人で耐えていたの??


 兄上は……こんな王子の為に毎日自分の自由時間もない位に勉強や体力作りで自主訓練もしていたの??


 もっと素晴らしい王子や王族だと思っていた。


 それなのにこんな変な王子の為に兄上が自分を律していたなんて……


 今まであんなにムカついていた兄上だけど、でも僕は心の何処かで毎日努力し続ける兄上の事をずっと尊敬していたのだろう。

 こんな変な王子の為に頑張っている兄上の時間がずっと搾取されていたのかと思うと……悔しくて悲しくなってしまい、お茶会の席の場なのに涙が止まらなくなってしまった。


 王子まで泣いてしまった事もあり、そのままお茶会は解散になって兄上と一緒に帰る事になった。
 兄上は泣いて俯いている僕の手を優しく握って馬車迄の帰り道を誘導しながら歩いてくれる。


 僕は兄上に嫌味をいったり今日だって兄上の婚約者の王子を奪う為にやって来たのですよ??


 それなのに僕を見捨てる事も無く優しくして……本当にバカな兄上だ。


 なんでこんなに真面目で一生懸命な兄上が王族に捕まって自由のない一生を送ろうとしているのだろうか……。

 しかも兄上はそれを受け入れようとしている。


 僕はそんな疑問を考え始める様になるが、それはすぐに父上から知らされる事になった。兄上は生まれた時から王族と結婚する約束だって??父上はそれを阻止したかったと。

 それで父上が僕を使ったのには腹が立ったけれども、父上もちゃんと謝罪してくれたし、詳しく話を聞けば父上のとった行動にも納得したので、僕も兄上の婚約解消の為に節約に協力する事にした。


 父上と一緒に侯爵家の後継ぎとして一緒に貴族の会合に顔を出すようになると、可愛い者を見るとついプレゼントをしたいと思う貴族は多いらしい。そこで父上と連携しておねだりをすると面白い位に上手くいった。


 中には見返りを求めそうな者や侯爵家と有利な取引がしたいと下心がある者もいるので、そこは父上としっかり相談して連携する。


 僕にはそういう才能があったみたいだ。


 父上も絶賛していて、兄上にも僕の事を褒めているので兄上も「アンジュはすごいなぁ~」と羨望の眼差しを向けられる様になってしまった。兄上からそんな風に見られた事が無かった為につい憎まれ口を叩いてしまうけれど、そんなに悪い気はしない。


 そんな毎日が続いていた頃、兄上が恥ずかしそうに僕に


「王子におねだりできる様になりたいんだが教えてくれないか?」

 っと頼んで来たので驚いた。


   真面目な兄上はきっと人におねだりなんか出来ないと思っていたのに、侯爵家に貢献したいと兄上なりに努力しようといている事が分かった。


    普段から努力している癖に兄上はどれだけ真面目なんだよっ!!


「ったくしょうがない兄上だなぁ。仕方が無いから僕が教えてあげますよ、ったく……」



 兄上にはつい憎まれ口を叩いてしまう僕だけど、兄上に頼りにされる事は別に嫌じゃなかった。そうして僕と兄上は時間が空いていれば、思いがけず一緒に過ごす時間が多くなっていく。


 兄上は今まで人におねだりや甘えた事をして来なかった為に、甘え下手で人におねだりする言葉を言うのもぎこちない。

 というか……きっと兄上は今まで甘える相手なんか誰もいなくて、我儘も言えず自分の意見も押し殺して生きてきたんだ。
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