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本編3
30アンジュside1
しおりを挟む「兄上は全く本当にバカなんだから……」
手にしているハンカチは王子にプレゼントする為に購入した高級ハンカチと同じ素材で作られたと分かる肌触りの良い物だった。ハンカチにはワンポイントで天使の刺繍が施してある。
僕は昔からアンドルという兄上が嫌いだ。
いや、もしかして昔はそれなりに好きだったかもしれない。
兄上はプラチナブロンドの髪に緑の瞳という侯爵家伝統の姿に生まれたらしい。そして人形の様に整った顔をしていた。
幼い頃の僕はそんな兄上に遊んで貰う事がこの上なく嬉しくて、いつも兄上、兄上と探していたようだ。
しかしまもなく兄上が王子の婚約者になった。そして王宮から派遣された家庭教師達によって兄上は王子の配偶者教育を始めてとても忙しくなってしまった。
兄上と遊ぼうと声を掛けても「アンジュ済まない。中々一緒に遊ぶ時間がないんだ」と何度も断られてしまう毎日。
仕方がないので父上や母上、侍従達や使用人達に遊んで貰おうとお願いすれば、みんな僕と楽しそうに遊んでくれるのでそれなりには満たされた。
そうすると今度は遠くから視線を感じる様になった。兄上だ。見ると羨ましそうな……でも少し寂しそうな顔をした兄上がいる。兄上は剣術の授業が終わって勉強部屋に移動している途中だった。
僕と遊んでくれない癖に王子の配偶者になるのだからと、王子の1番近くでお守りできる様に1人でも朝から体力作りや基礎訓練を続けている兄上。
父上も母上も使用人達もこの侯爵家の跡取りになった僕をいよいよ大切にしてくれるけれど、僕を愛してくれながらも皆兄上の事を心配しているのが分かる。
「本当にムカつく……」
僕はそんな兄上の姿を見る度に今度はイライラするようになった。
そんな時、父上から
「アンジュ、お前は可愛いから王子がアンジュをみたらアンドルよりお前を選んでしまうかもなぁ」
と呟いたのをしっかりと聞いた。
僕が可愛いのは知っている。
兄上は確かに綺麗で可愛いけれど、王族の婚約者だからと自分を律しているのか、必要以上誰かと仲良くして変な疑いを掛けられない様に、普段から一線を引いていて近寄り堅い雰囲気があった。
だけど、僕は違う。
どんな目上の人でも大丈夫そうだと思ったら懐に入って甘えられる自信がある。
まあ僕だって侯爵家子息だからそんなに目上の人にも出会わないけれど。目下の人にはもっと甘える事ができる。 目下の者は目上の人から甘えられたら皆満更では無いもんな。
「アンジュ、もしお前がアンドルの代わりに王子に見染められたら王族になるがどうだ?」
不意に父上からそんな事を聞かれた。
婚約者の兄上を差し置いて、僕の方が王族に相応しいと父上は考えているのだろうか?
ふふっそれは面白い。
王子の為に真面目でバカ正直に勉強や剣術を頑張っている兄上。
自分の時間を削っても忠誠を誓っている相手……王族や王子を兄上から取り上げたら兄上には何も残らなくなるなぁ……それは面白い。
「王子が僕を好きになってしまったら考えるしかないですね」
「うむ……。王子は少しクセが強いが見た目も麗しく賢いと聞く。アンジュも容姿は良いし選ばれる可能性も高いだろう。
王族に身を捧げようとしているアンドルには悪いが、アンジュの方が王族には相応しいと思っている。どうだ?一度アンドルと一緒に王子とお茶会に出席してみないか?」
やはり父上は兄上より僕の方が王族になるには相応しいと考えているようだ。
あのバカ正直で真面目な兄上より僕の方が上だってさ。
僕の自尊心はこれまでに無く高まり、それからの僕は兄上に嫌味を言ったり口答えをしたりしたけれど、兄上は怒る事も無く受け流していくので腹が立つ。
何故そんなに落ち着いていられるんだ?
そんな兄上から王子をとったらどうなるんだろうな……
父上の後押しもあり、僕が王子に見染められる可能性を現実に物になりつつある環境になるチャンスが巡ってっくる……王子とのお茶会に出席する事になり
「兄上~万が一ですけれどもしエドワード王子が兄上より僕の方が婚約者にしたいと心代わりしても王子を怒らないであげて下さいね」
と兄上に言ってしまった。
それなのに兄上は僕に怒って言い返さないどころか、僕に大丈夫だよと言い聞かせる様に言った。
「怒る事なんてないよ。アンジュは王子の事が好きなのかい?僕自身は婚約者だと言うのに王子の事をまだ知らないんだ。でも僕は婚約者であっても無くても王子の護衛のつもりでお守りしたいという気持ちはある。王子がアンジュの事を僕以上に好きになってもね」
本当に兄上はバカだ。
これから僕が兄上のお守りしたい王子を奪おうと考えているのに。
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