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本編3

29僕の成果報告3

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「兄上、僕達も部屋に戻りましょう」


 アンジュが少し眠そうにして声をかけてくれた。アンジュにしてみればまだ本の内容もよく分からなかったと思うし、父上から本を信じるなと言われたので本の内容も意味の無い物として受け取ったんだろう。



「そうだ!!アンジュに渡したい物があるんだ。これなんだけど……」


「えっ!!兄上!!どうしてこんな物を……」



 実は僕はアンジュにプレゼントを用意していたんだ。僕がアンジュに渡したのは王子に渡したプレゼントと同じハンカチ。だけど、アンジュに渡したハンカチには天使の刺繍をしておいた。



「ハンカチを購入する時に店員さんが「2枚目は1000アーロで買えるからお得だよ」って言われて実は2枚買っちゃったんだ。だからアンジュにあげようと決めてアンジュの名前にちなんで、天使の刺繍にしたんだよ。上手く刺繍できたか分からないけれど……いつも有難う!!」



 王子におねだりするのは結果的に失敗してしまったけれど、それはアンジュには関係ない。おねだりが苦手な僕の手助けをしてくれたアンジュにとても感謝していたのでアンジュに何かプレゼントしたかったのだ。

  そりゃあアンジュはもっと高価な物を沢山貰っているから僕のプレゼントなんでちっぽけかも知れないけれど……       僕の気持ちが伝わると良いな。



「あ……兄上っ!!バカなんですかっ!!侯爵家が今節約しているというのに!!こ、こんな事にお金を使って駄目じゃ無いですか!!もっと自分の必要な物にお金を使うべきです!!分かりましたかっ!!」


「ええっ!!ご、ごめんアンジュ……」


 喜んでくれたら良いなと思ってプレゼントしたけれど、アンジュに至極真っ当な意見で怒られてしまった。
 そうだよね……節約中にも関わらず僕が余計な出費をしてしまったんだから。でもアンジュに喜んで貰いたかったから怒られて思いの他ショックで俯いてしまった。






「……とう……大切にします」



 長い沈黙の後、アンジュが小さな声で何かを言ったけれど、何を言ったのか聞き取れなかった。



「えっ??」



「だから!!兄上有難う!!大切にしますよっ!!大切にすれば良いんでしょ!!」



 アンジュはそう言ってハンカチをしっかりと手に持ち、さっさと席を立って行ってしまった。今、お礼を言ってくれたんだよね?!


「ははは……アンジュ、僕のハンカチ喜んでくれたみたいで良かった……ふふっ良かった」


   誰もいなくなった部屋で、独り言を呟いてしまったけれど、僕はとても嬉しかった。


 今日は王子とのお茶会でおねだり作戦が失敗してしまったり、貰った本の内容がショックだったりしたけれど、僕には優しい父上や母上やアンジュがいるじゃないか。


 僕は何だかんだ言って自分の事を思ってくれている家族に心がポワッと暖かくなった。
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