【完結】王子様の婚約者になった僕の話

うらひと

文字の大きさ
上 下
18 / 124
本編2

18おねだり実行

しおりを挟む
 
「そうだ王子、僕今日は王子の為にプレゼントを用意してきたんです」

「アンドルが私の為にプレゼントを用意してきただとっ!!」

 僕がプレゼントの話をしたら、王子が思った以上に食いついてきて身を乗り出している。
 プレゼント作戦はアンジュから教えて貰った初心者向け「おねだり法」である。僕が「王子に対しておねだりばかりをすると僕自身も気が引けるなぁ」と言ったらアンジュは


「じゃあ、プレゼント交換にしたらどうですか?兄上もプレゼントを用意するのです。勿論安い物で構いません。そうして相手からそれ以上の高価な品物を貰うんです。それなら兄上だって気が引けないでしょう?」


「なるほど!!そうだな。アンジュいつも有難う!!」


「ふんっ出来が悪い兄上をお支えするのも弟の務めだと思う事にします」

「本当にアンジュは頼りになるよ!!」

「そ、そんなに褒めても何も出ませんからねっふふっ」

  最近のアンジュは僕に笑ってくれる様になった。


 そうして僕は考えた末にハンカチをプレゼントする事にしたんだ。一応王族へのプレゼントだから高級なハンカチを買った。決して安くは無かったけれどアンジュも父上に頼んでくれたお陰で購入資金が得られた。

 そしてそのハンカチに一生懸命刺繍を施した。これは使用人の1人が刺繍が得意だった為教えて貰ったんだ。
 高級ハンカチに僕のお手製の刺繍が加わって付加価値が付いた事で更に王子から高価なプレゼントが貰いやすくなったという計算だ。

「王子、そうなんです。王子の為に心を込めて刺繍を施したハンカチなんですけど……良かったら使ってくれませんか?」

 僕は少し上目遣いをしながらおずおずと綺麗に包装したハンカチを王子に渡した。アンジュが言うには人に渡す時はそんなに重々しい雰囲気は御法度だそうだ。しかしやっぱり緊張はする。いくら王子から金目の物を欲しがる為とは言え一生懸命刺繍したし、喜んでくれると良いのだけど。

 王子は僕から渡されたプレセントに目を輝かせて見ていた。

「アンドル、開けてみていいか……?」

「はいっ!!」

 王子は包装を破らない様に綺麗に開けていきハンカチを取り出した。そして刺繍の部分を何度も自分の指でなぞっている。

「あの、それは王家の家紋である鷹とライオンです。うちの使用人の1人が刺繍の得意な者がおりましたので、その者から一生懸命教わりました」

「……これ、本当にアンドルがやったのか!!よく出来ている……素晴らしい出来だよ」

「本当ですか!!嬉しいです!!」

「ああ、ずっと……一生大切にするよ。こんな素敵なサプライズプレゼントを用意してくれるとは何処まで私を喜ばせれば気が済むんだ?アンドル有難う!!」


「勿体無いお言葉です」


 エドワード王子はとても喜んでずっと刺繍を眺めたり、触ったり、ハンカチを畳んだり、また開いだりして嬉しそうにしていた。一生大切にするとはちょっと重いとは思ったけれど……気に入ってくれたみたいで僕迄嬉しくなる。

 王子が僕のプレゼントを喜んだから侯爵家の使命を果たしやすくなったかもしれない。よし、頑張るぞ!!

「王子……それで僕からもお願いがあるんです」

「ん?なんだ?アンドルからのお願いなんか初めてじゃないか?何でも言ってごらん」

 王子は顔を綻ばせながら僕にそう言った。さっきからニヤニヤが止まらなくなったのかずっと嬉しそうだけど、アルカイックスマイルはどこに置いてきた?でも叫んだりはしなくなったんだな。

「僕も王子から……プレゼントが欲しいなって」
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

【完結】『ルカ』

瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。 倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。 クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。 そんなある日、クロを知る青年が現れ……? 貴族の青年×記憶喪失の青年です。 ※自サイトでも掲載しています。 2021年6月28日 本編完結

【完結】オーロラ魔法士と第3王子

N2O
BL
全16話 ※2022.2.18 完結しました。ありがとうございました。 ※2023.11.18 文章を整えました。 辺境伯爵家次男のリーシュ・ギデオン(16)が、突然第3王子のラファド・ミファエル(18)の専属魔法士に任命された。 「なんで、僕?」 一人狼第3王子×黒髪美人魔法士 設定はふんわりです。 小説を書くのは初めてなので、何卒ご容赦ください。 嫌な人が出てこない、ふわふわハッピーエンドを書きたくて始めました。 感想聞かせていただけると大変嬉しいです。 表紙絵 ⇨ キラクニ 様 X(@kirakunibl)

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

処理中です...