【完結】王子様の婚約者になった僕の話

うらひと

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本編2

15一致団結

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「ああ、アンジュの事は私が何とかする。それにアンドル、お前の事も何とかしたいと思っている。3代前の約束は反故にはできなかったが、飢饉の際に王族から支援を受けた額のお金を返納すれば婚約は破棄される。またはエドワード王子がアンドル以外の者と真実の愛を見つけた時にも同様に婚約は破棄だ。だからお金を返しながらだが、王子がアンドル以外の者と恋愛してくれればお金も返さないで良いし、アンドルも自由になれるんだ。アンドルも協力してくれないか?」

 アンジュからは父上に気をつけてと言われていたけれど、父上の話を聞くと、もっともな事が多いし僕とアンジュの事を考えてくれている事はわかる。僕は父上を信じたい。

「分かりました。僕に出来る事なら協力します」

 そう言うと父上はホッとした顔になり少し笑った。

「アンドル有難う。これから侯爵家は領民には迷惑を掛けない様に節約をしていこうと思う。王族からアンドルの服が送られて来ただろう?売ればきっと高く売れる高級品ばかりだ。しかし古くなった服は新しい服と交換と言ったな?」


「そうです。エドワード王子の婚約者になったから高級な服をずっと交換できるなんて王族は太っ腹だなと思ったものですが……」

「王族はこれから侯爵家が節約する事を分かった上での嫌がらせだ。節約するのだからせめて婚約者は見窄らしい服を着せるなとな。それに、高く売れるのに売る事もできない」

 確かに……王族からの送られてきた服が売れたらどんなに良いか……

「そこで、姑息だろうが何だろうが、エドワード王子と会う機会があれば、金目の物をねだっては貰えんだろうか?どうやら王子はお前にご執心だからな。本当はアンジュの方が性格的に適任だと思ったのもあって、王子と仲良くして貰いたかったのだがな」

 そうか、アンジュは弟だし、自分が可愛いのを自覚していたから人におねだりするのも上手かもしれない。その点僕は少々苦手だ。父上は自分の子供の性格もよく把握しているな。あんまり僕とは話せる機会がなかったけれど、僕の事もよく見てくれていたんだ。

「はい。分かりました。できるだけ王子に金目の物をねだってみます。出来るか分かりませんが……」

「無理はしなくてもいい。それに駄目だったとしても気にするな。それに侯爵家としても節約しているだけじゃない。商才のあるマリアに新しい事業を任せた。女性は自分の愛する子供達の事になるとことさら強さを発揮するから、吉報を待とう」

 マリアというのは僕の母上の事だ。母上は僕やアンジュを産んだ事でこの侯爵家でも領民からも人気だし、本人も自信がついたのか活発に教会を訪問したり、福祉施設を建設したり、雇用を生み出す為に事業を始めたり侯爵家に嫁いできてから才能を開花させていた。勿論父上とも今でも仲良しだ。

「母上はそれで最近はいらっしゃらなかったのですね。しかし母上も僕の為にお金を稼いでくれているとは……」

「ああ、お前の母は見た目が華奢だがやり手だぞ!!既に始めた事業を軌道に乗せる事に成功したらしい。そこでだ。もし侯爵家が裕福になっても節約は続けるつもりだ。侯爵家がお金を返金できると王族に分かってしまったらどんな妨害をされるか分からないからな……昔の飢饉の様な事が今起こる可能性もある……アンドル、分かるな?お金を返し終わるまではお金は無いフリをするんだ」

 父上も母上も本気だ!!そんな事まで考えて僕の婚約を破棄させたいと思っているんだ。
 それに母上はアグレッシブだから最近いなくてもどこかで困っている人を助けているんだろう位にしか思ってなかったけれど、今は事業を始めて軌道に乗せたとか……母上凄い。

「分かりました。できる限り節約生活を続けて王子には高価な物をねだってみます」

「ああ、アンドル。一緒に頑張ろう」

 そして座っていた父上が立ち上がって久しぶりに僕を抱きしめてくれた。懐かしい。僕は王族に嫁ぐ事になってからは皆アンジュにばかり愛情を注いでいる様に感じていたけれど、僕も父上と母上から愛されていたんだと分かって胸がジーンと熱くなった。


 その後、父上はアンジュに謝り、今後の生活についてもしっかり説明した。アンジュはブツブツ文句は言っていたけれど「節約かあ……まあ節約のフリをして、僕も誰かにおねだりする技術を磨くのも良いかも知れない」と彼なりに納得したようだ。

 侯爵家はここにきて家族が一致団結する事になったのである。



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