【完結】王子様の婚約者になった僕の話

うらひと

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本編2

14父の話

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コンコンッ


「入れ」
「失礼します」

 僕は父上の書斎に入った。ここは父の仕事部屋という事で重要な決裁書類や、権利書が仕舞ってある金庫もあるから基本は入れない場所だ。
 僕も息子だけどよっぽどの事が無いと入った事がない。基本入る理由もないけど。

 シンとした書斎は侯爵家の歴史を静かに刻んできた重みがある雰囲気だった。

「アンドル、お前は何処まで知っている?」

 唐突に父上が僕の質問してきた。何処まで知っている?何の事??

「何処まで知っているとは何の事ですか?父上の質問に理解が及びません」

「お前の容姿からエドワード王子との婚約までの経緯だ。そして、今回何故私がアンジュを王子に気に入られる様に仕向けたかだ」

 えっ?自分の容姿??確かに侯爵家伝統の容姿をしているけど、エドワード王子とはお茶会の席で初めて会って決まったし、アンジュの事は父上に今聞こうとしてた事だ。


「僕は王族のお茶会の席で婚約内定を貰いましたし、アンジュの事は正直分かりませんので父上にお聞きしたかった事です」

 父上は自分の書斎の椅子に座ったまま目を閉じてずっと考えている様だった。そして目を開けたと思ったら僕に言った。


「アンドル、お前は侯爵家伝統の容姿をしているのは知っておるな。そしてその姿は歴代の王族達が愛してしまうんだ。元々、私達侯爵家と王族の先祖との間に叶わぬ悲恋があり、2人の思いが王族に呪いをかけたらしい。根拠のない言い伝えだとは思っていたが、王族の執着心を見ると案外本当の事かもしれん」

 何と!!僕のこの姿は王族達が愛する姿なのか……という事はエドワード王子が僕に対して嘘を言ったり、叫んだりするのって……僕の姿を見たときに愛してやまない反応??そうすると最初から僕を婚約者にするつもりだったの??


「ではお茶会でエドワード王子の婚約者が僕に決まったのはそもそも決定事項だったのですか?」


「ああそうだ。もし侯爵家で代々伝統ある容姿で生まれ時には王族に嫁がせるとの約束が3代前の侯爵家当主と王族で取り決められていた。お前はそれでも良いのか?」

「良いも悪いも……貴族の役割として王族からの決定事項には従わないといけないと……」

「王族に嫁いだお前が子供を産むことになってもか?」

「ええー!!こ、子供??僕は男ですよ。子供なんて産める訳ないでしょう??」

 それに子供が産めない男だから第三王子との結婚も継承権の問題も起こらなくていいと世間では喜んでいた位なのに……。

「アンドル、お前はまだ王族を分かっていない。そもそも侯爵家は王族と約束なんかしたくなかった。王族に掛けられた呪いがどんな物か分かっていないし、私達の先代は呪い返しを侯爵家が受ける可能性も考えたそうだ。それが3代前の侯爵家の領地が空前の干魃に見舞われそこからの火災で壊滅状態になった時、充分な支援の代わりに約束をしたのだ。しかし……後にそれ自体が意図的に水路が堰き止められた形跡があったのだ。王家がやった証拠はない……が、侯爵家は嵌められたんだと思う。その王族の考える事は分かっている」

「侯爵家は嵌められた?そして王族は侯爵家に恩を売って僕の容姿に生まれた者がいれば王族と婚姻させる約束をしたと……そして父上は王族の考える事が分かっている……??とはどういう事なんですか?」

「王族の呪いはアンドルの姿に対する執着心だけなのか……詳しくは私もまだ調査中だが、とにかくアンドルに執着しているのは確かだ。アンドルが油断してエドワード王子の配偶者になったとしよう。それから王家の秘術魔法でアンドルが妊娠できる様に体を変化させられていく……そしてできた子が女なら王太子の嫡子と結婚させる。男なら……王位継承権第1位にして未来の王にさせるだろう。とにかく侯爵家の血を取り込もうと必死だ」


「ええー!!」

 僕が妊娠させられるのもびっくりだけど、自分の子が男の子なら未来の王になるの??な、何て事だ!!そんな壮大な話になるなんて……僕の人生どうなってるの!!

「父上……僕は王族やエドワード王子に忠誠を誓っていますが……自分が男なのに妊娠するとか……怖いです」


「誰だって男で生まれたのに妊娠するなんて怖いだろう。せめてアンドルじゃなくて弟のアンジュなら王族は妊娠させようとか考えないのではないかと思ってな……しかし失敗した。私も冷静じゃなかったかもしれん。アンジュにも当て馬の様な役をやらせてしまい悪い事をした」

 そうか……父上は父上なりに僕とアンジュの事を考えてはくれていたんだ。そう思うとアンジュは本当に当て馬にされて可哀想だったんだ。

「父上、アンジュにはしっかり謝った方が良いです。折角父上とアンジュは仲が良かったのですから……父上の気持ちが伝わればきっとアンジュも分かってくれると思います」
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