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〜王子side〜1
10エドワード王子の憂鬱1
しおりを挟む私はエドワード。この国の第3王子だ。
王族と言っても3番目だし、王位継承権も低いので比較的責任の無い気楽な身分だと思うだろう。
しかし私は生まれた時から結婚する相手が決まっていた。
何なんだろうな……世の中こんなに沢山の人達がいるのに、自分で好きな相手も選べないとは……なんてつまらない人生なんだろうか。
婚約者となる人は侯爵家の嫡男だそうだ。
この侯爵家は代々侯爵家の伝統ある姿で生まれる事があるという……。それが今回嫡男として生まれたアンドルという人物だった。
プラチナブロンドで透き通ったグリーンの瞳。それに中性的な容姿をしているんだという。
歴代の王族達が愛してやまない姿なんだそうだ。
どうしても侯爵家の伝統ある容姿を王族にも取り込みたいと思った王族達は、半ば強制的に「その姿で生まれた時には王族に嫁ぐ事」と取り決めていたらしい。
それに対して随分と侯爵家は何年も抵抗していたが、侯爵家の領地が一度壊滅的な飢饉に晒された時、領民達を守る為に多額の借金をした。そして資金繰りが立ち行かなくなった頃に、王家が肩代わりをする代わりに約束を取り付けたそうだ。
アンドルだったか……そいつもある意味生まれた時からの自由な選択ができない可哀想な奴だ。
しかもそいつは男であるが妊娠できる様に身体まで変化させないといけないときたもんだ。
まあ、お茶会で会った時にお互いに好きな人が出来ても協力関係で楽しく生活を送るっていう手もあるし、話の分かる奴なら良いんだが……
そしてお茶会の席でアンドルを初めて出会った時、私は衝撃を受けた。話は聞いていた通り綺麗で中性的な容姿をしていてとても好みだった。
それよりも、あの笑顔!!とても整った顔をしているのにふにゃっっと笑った時のギャップが可愛過ぎて俺の心を鷲掴みにした。
王族が愛してやまないといっていたのは何の根拠があるのかと思っていたが、私が証拠だな。
私も王族の血がしっかり入っていた事が再確認できたくらいに夢中でアンドルばかりを目で追ってしまう。
性格も良い。まだ小さいのにしっかりと人の話をよく聞いて、相手の失礼の無い最善の言葉を選んで話す。
なんだ。私の人生大当たりじゃないかっ!!
むしろ、他の王族じゃなくて私が婚約者で本当に良かったし、アンドルを王族の婚約者という強固な繋がりで誰も手を出せない状態にできるとは何たる幸運。
お茶会が終わり、正式にアンドルが私の婚約者に内定が決まりそうだった時、アンドルの父である侯爵が正式な手続きを踏んで陛下に謁見を申し込んだらしい。
私にも関わる事かも知れないと発言はできないが、謁見の見学を許された。
「どうか……アンドルを婚約者にするのはやめて頂きたいと思っているのです。侯爵家としてもようやく生まれた伝統ある姿なのです。どうしても侯爵家として血を残していきたいと思っています。どうか……どうかお願いします」
侯爵はアンドルを王族と結婚する事には反対だった。アンドルと出会う前の私なら、侯爵をようやく見つけた味方だと思っただろう。しかし今は違う。アンドルが好きな私にとって侯爵は敵だった。陛下はどう判断されるのだろうか。
「うむ……私も何代も前の取り決めを今になってと思わない訳ではない。しかし約束を破棄すると言うならば肩代わりした借金を返すつもりはあるのだな」
「はい。一括でお支払いするのは難しいですが、分割で必ずお支払いしたいと思っております」
「……それ程アンドルが可愛いのか……そこまで言うなら
逆にアンドルをますます王族と結婚させたいと思うぞ」
「へ、陛下っ!!」
「わははっこのくらいの冗談を言ったって良かろう?まあ冗談でも無いけどな。とりあえずお金を返す迄は婚約者としていて貰おうか。そして、エドワードがアンドル以上の相応しい相手を見つけるか、エドワードが真実の愛を他に見つけた場合は婚約破棄してもいいぞ」
「陛下、あ、ありがとう御座います!!」
何という事だ!!折角アンドルが私の婚約者なのに婚約破棄される可能性があるとはっ!!
真実の愛はアンドルだけだ。
ここから私のアンドルに対する異常な愛と執着心が芽生えたのかも知れない。
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