【完結】王子様の婚約者になった僕の話

うらひと

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本編1

6弟のアンジュ

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「兄様~兄様だけズルい!!王宮からこんなに上質の服
 を送って下さるなんて!!」

 そう言って僕の部屋にある届きたての服を物色し出したのは弟のアンジュ。現在絶賛可愛い盛りで成長も早く、僕と身長も体重も同じ位になっている。
 兄弟でも成長速度が違うのかもな。

「アンジュ、それは僕がエドワード王子の婚約者だからって贈ってくれたんだってさ」

「そんなのズルいじゃありませんか!!ほらっこれなんか僕にピッタリだし、ほらっこれも!!これも!!これなんかとてもいいですねー」

 僕は弟の事が好きだ。両親も。侍従達も……特に僕が将来王族に嫁ぐ事になる事が内定してからは、アンジュが侯爵家の跡取りになる事が決定している。
 だから余計にこの家でアンジュは1番可愛いがられている。

「アンジュ、そうやって鏡で僕の服を合わせる位はいいけれど、借りパクしたりしないでね」

 アンジュは昔の僕を見ている様だった。王族主催のお茶会でエドワード王子を見るまでは僕も今のアンジュの様に自分が1番可愛いと思って調子に乗っていたのだ。

「兄上……僕が可愛いからって意地悪するんですか?いつからそんなに性根が腐ってしまったのですか?少しぐらい可愛い弟の為に貸してくれたっていいでしょう?」

 僕の性根が腐っているだって??どうしてそんな事を言うのだろうか……王族から伝えられた用途以外で使用したのがバレたらそれこそ反逆者になってしまううじゃないか。

「アンジェの方が似合う服もあるだろう……だけど、贈ってくれた方からの用途以外で使用してしまったら、贈ってくれた方々に申し訳が立たなくなるだろう?賢いアンジュなら分かるよね?」

 昔の僕みたいな自信満々なアンジュは彼の世界が広がった時に心が凹んでしまうのだろうか……そんな事を考えると悲しくなってしまった。

「……もういいです。兄上に意地悪されたって父上と母上には報告させていただきます。ちょっと代々侯爵家の伝統の姿にお生まれになったからって調子に乗るのもいい加減にした方がいいですよ。兄上はきっと後悔しますからね」


「ええー??僕調子に乗ってるかなあ……」


確かに昔の僕は調子に乗ってる時があった。自分が1番可愛いと本当に思っていたのだから。でも今は違う。王子だって素敵だし、アンジュだって本当に可愛いのだ。だからもうとっくに調子に乗れなくなってしまったというのに。


「くっ!!そういう所ですよっ本当にムカつく兄上だ!!」

 何故かアンジュは怒って僕の部屋を出て行ってしまった。勝手に服を物色して借りれないと分かったら怒ってしまった。
僕はそんなに服にこだわりがない方だから、あんなに服に対して熱心になれるアンジュを羨ましいとさえ思っていた。

 僕は何かおかしな事を言ったのだろうか……





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