歳上同居人のさよなら

たみやえる

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新堂洸夜の誕生会

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 封筒を裏に返すとうちの兄からだった。


 兄とは疎遠だ。決定的に仲が悪いわけでもないけど……。

 そもそも歳がひとまわりも離れている。オレが小学生になる頃兄は高校を卒業する歳で、子供だったオレが寝る時間は兄にとってはまだ遊ぶ時間だった。つまり生活時間帯がそもそも違うのだから親しくなりようがなかった。兄は(オレもだけど)あまり子供が好きじゃないみたいだったし。


 兄は親の経営する会社に就職して今は部長職に就いている。うちの親は子供だからと言って無能な人間に跡を継がせないと常々公言しているから、兄が社長職に就くことはないかもしれないが……。



 あぁ、でも上昇志向の強いあの人のことだから社長になりたくないわけないか……。オレが社長の座を狙うような野心家だったなら兄弟仲が悪くなったかもしれない。



 とにかく、そんな兄がどうして今更オレに手紙をよこしたのか。



 首をひねりつつ封を開ける。

 横目で冬木の様子をうかがえば、食べ終わった食器をキッチンへ運んで行くところだった。


 正直ホッとする。


 真剣な話なんて、このまま忘れてもらいたい。

 冬木が何を話そうとしたのかは分からない。でも愉快な話じゃないんだろうな。オレが想像するに……別れ話かそれに近いこと……あくまでも想像だけど。



 自分の女々しさに封筒から引き出した便箋を広げた
オレはその文面に目を通すなり、

「は?」

と声を上げてしまった。
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