4 / 9
4
しおりを挟む
——荒木はもう新幹線に乗ったのだろうか。それとも、私を誘うくらいだからホテルに泊まりなのか。
(このまま寝るには……酒の量が足りないなぁ)
ふらりと寄った自宅近くのコンビニ。缶ビールと柿ピーを調達する。店の外に出ると、葉桜の下に荒木が立っていた。
翌日、土曜の朝。
剥き出しになった背中に頬擦りされる感触に(どうしてこうなっちゃったんだろう……)とこま子は戸惑っていた。
うつ伏せ寝のこま子の頭の横に手をついた荒木が伸び上がるようにしてこめかみにキスしてくる。
「……結婚したなんて嘘ついて、酷いなぁ」
甘くなじりながら荒木が布団を捲り上げる。
仰向けにひっくり返されそうになり、前から全身を見られる恥ずかしさでジタバタするこま子のことを、荒木が、ぎゅうっ……と抱きしめた。
「やっ、ちょっと……力強過ぎ! 苦しいってば」
「男の純情をもてあそんだ罰や。もっと気持ち良ぅして俺から離れられんようにしてやる」
何をされるかと身を捩るこま子の脇腹を荒木がしつこくくすぐってくるので、こま子は笑いが止まらない。荒木の手から逃げようと身をくねらせているうちに二人してベッドの下に落ちてしまった。
「くっ、ふふ……荒木の関西弁、懐かしー……」
「よぅ出さん。怖がられるもん。出すときは、本気の時だけだな」
あらら、関西弁が途中から抜けた。
笑いを引っ込め荒木が真剣な目で見てくる。頬が熱くなるのを見られるのが嫌でこま子は顔を背けた。
……そういえば、以前に荒木の関西弁を聞いたのは、学生時代のあの夜、身体を重ねている最中だった……。
予想外に過去の記憶が鮮明に思い出されてますます顔が熱い。たまらず覆った両手を、荒木に引き剥がされた。
「なぁ、コマコマ。昔、なんで逃げた?」
荒木は、まさに学生時代のあの一夜のことを言っているのだった。
「……別に」
責められている。こま子は床に落ちた掛け布団を引き寄せてゴロゴロ転がって体に巻きつけながら荒木と距離をとった。ベッドの横に置いていたローテーブルが邪魔で止まると、すかさず荒木の腕の中に引き戻された。
「……なぁ、ヨかったろ?」
「っ、恥ずかしーなぁっ。そういうこと、わざわざ聞くかなっ?」
(このまま寝るには……酒の量が足りないなぁ)
ふらりと寄った自宅近くのコンビニ。缶ビールと柿ピーを調達する。店の外に出ると、葉桜の下に荒木が立っていた。
翌日、土曜の朝。
剥き出しになった背中に頬擦りされる感触に(どうしてこうなっちゃったんだろう……)とこま子は戸惑っていた。
うつ伏せ寝のこま子の頭の横に手をついた荒木が伸び上がるようにしてこめかみにキスしてくる。
「……結婚したなんて嘘ついて、酷いなぁ」
甘くなじりながら荒木が布団を捲り上げる。
仰向けにひっくり返されそうになり、前から全身を見られる恥ずかしさでジタバタするこま子のことを、荒木が、ぎゅうっ……と抱きしめた。
「やっ、ちょっと……力強過ぎ! 苦しいってば」
「男の純情をもてあそんだ罰や。もっと気持ち良ぅして俺から離れられんようにしてやる」
何をされるかと身を捩るこま子の脇腹を荒木がしつこくくすぐってくるので、こま子は笑いが止まらない。荒木の手から逃げようと身をくねらせているうちに二人してベッドの下に落ちてしまった。
「くっ、ふふ……荒木の関西弁、懐かしー……」
「よぅ出さん。怖がられるもん。出すときは、本気の時だけだな」
あらら、関西弁が途中から抜けた。
笑いを引っ込め荒木が真剣な目で見てくる。頬が熱くなるのを見られるのが嫌でこま子は顔を背けた。
……そういえば、以前に荒木の関西弁を聞いたのは、学生時代のあの夜、身体を重ねている最中だった……。
予想外に過去の記憶が鮮明に思い出されてますます顔が熱い。たまらず覆った両手を、荒木に引き剥がされた。
「なぁ、コマコマ。昔、なんで逃げた?」
荒木は、まさに学生時代のあの一夜のことを言っているのだった。
「……別に」
責められている。こま子は床に落ちた掛け布団を引き寄せてゴロゴロ転がって体に巻きつけながら荒木と距離をとった。ベッドの横に置いていたローテーブルが邪魔で止まると、すかさず荒木の腕の中に引き戻された。
「……なぁ、ヨかったろ?」
「っ、恥ずかしーなぁっ。そういうこと、わざわざ聞くかなっ?」
0
あなたにおすすめの小説
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
彼女が望むなら
mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。
リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
《完結》僕が天使になるまで
MITARASI_
BL
命が尽きると知った遥は、恋人・翔太には秘密を抱えたまま「別れ」を選ぶ。
それは翔太の未来を守るため――。
料理のレシピ、小さなメモ、親友に託した願い。
遥が残した“天使の贈り物”の数々は、翔太の心を深く揺さぶり、やがて彼を未来へと導いていく。
涙と希望が交差する、切なくも温かい愛の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる