五月六日は西條冬木の誕生日

たみやえる

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「帰りも迎えに来るからね。オレが迎えに来る前に帰るんだったら、それはそれで構わないけど、校門で待っててくれたら嬉しいなぁ」

と言われて舞い上がらないはずがない。


今朝だって学校まで送ってもらって今日一日ホクホクだった。


昨日の夜は、あまりにもホッとしてあの後の記憶があやふやだったりする。

多分自分は寝てしまったのだろう。

大好きな洸夜に精処理させて、自分はさっさと寝るとか__。

(ありえないよな……)

しかし、果たして自分に、〈おかえし〉ができただろうか?

(お返しかぁ)

それって、俺もシコり返してあげるってことだよな。
握れるのか?

(洸夜のちんこを……)

そういう事態になっている洸夜と自分を思い浮かべようとしたけれど、何も思い浮かべることが出来なかった。
それどころか、昨夜彼が俺の分身に触れたという記憶自体(夢なんじゃね?)と思えてきた。

どこからどこまでが現実で夢なのか。
俺のこと迎えにきてくれるって言った洸夜ももしかして幻……?

そんな不安が突然腹の底から迫り上がってきて、走り出した俺のことを、周りをいく生徒たちが怪訝そうに見ている。
校門の切り取られた塀の端をつかんでブレーキをかけて左右を見渡す。
学校を出てすぐの歩道を歩いているのは同じ制服を着た生徒ばかりで……。

――ほら、誰もいないじゃないか。

俺は全身の力が抜けてしまい、その場でしゃがみ込んでしまった。
俺を追い越していく女子のスカートがひらりと揺れるのをぼんやり見上げて。
そのひだがさっきと反対側に揺れたその向こうに、求めて止まないすらりとした背の高い影が見えた気がした。
だからその子の後をついて行ったと思うんだよな。
ふらふら、ふらふら。
彼女はその高い影の前でぴたりと止まった。

「あのッ、……」



**



冬木を待つのに歩道脇の街路樹の影を選んだのは思ったより日差しが厚くて眩しかったのと、ちょっぴり冬木のことを驚かしてやろうといういたずら心からだった。

冬木ならオレの姿が見えなかったら一生懸命探してくれる。

迷子になった子犬みたいにきょときょと辺りを見回す冬木の姿を想像して(マジ可愛い!)とオレはほくそ笑んだ。
カワイイ子にはついイジワルしたくなるんだよな……。
そして。そこにさ、「わっ」て、驚かしてやろうという……我ながら子供じみた考え。
昨日の夜、オレの手の中で快感にプルプル震えていた冬木自身の感触、その記憶を何度もなぞって、もうそれだけで楽しくて仕方ない。

そんなふわふわした、オレの周りに花が浮いるてんじゃないか? なんて精神状態でも、高校時代の後輩に連絡して〈冬木の元カノ〉の動向報告するように言っておくのは忘れなかったけどな。

後輩の話では、冬木と彼女は付き合ってまだ一週間ほど。
そんなんで彼氏をホテルに誘うなんて、ヤりたいだけの女か、そこまで焦らなきゃいけない何かがあったのか……。
聞いた限りでは特に問題行動を起こしたことのない、若干(私って可愛いよね)がウザいくらいの女というから、冬木の言動に焦らされた結果の暴走じゃないかとオレは考えている。
それでもオレのいない間に、冬木にちょっかいを出したことは許せないが……。
ふ、と昨晩の冬木の緩み切った表情を思い出す。
(あれは、オイシかった……)
冬木のためらいがちで淫らな喘ぎ声を、今日、何回脳内再生したことか。。
快感に打ち震えて、耐えきれずに欲を吐き出した冬木のソレの可愛らしさったら!

(あぁ……冬木はもう一度オレが触ることを許してくれるだろうか)

本心を言ってしまえばオレのも触ってほしかった。

でもなぁ……。
オレのうさ耳姿を想像しただけで勃つって……ふふっ、可愛すぎだ。
まだまだねんねなんだな、とほっこりしてしまう。
オレのと冬木のを一緒に擦って同時にイキたい……とか、まだ刺激が強すぎるのかもしれない。

徐々に……。
進めていかなきゃ、なのかな……。

と、そこまで考えてオレはフッと我に返った。
……あの女、冬木とどこまでヤッたんだ!?

オレは必死に記憶を巻き戻した。

冬木と合流したラーメン屋で冬木は女に〈フラれた〉と言っていた。

じゃあ、あの夜冬木たちはどこまでイッたんだ?

いまさらだけど、こんな大事なことを、オレは冬木に確認せずにいたんだ!

それがあまりにもショックで、
「……オレ、馬鹿か」
と、思わず声に出してつぶやいたくらい。
冬木に会えた、冬木を自分の手でイかせてあげた、その二つのことだけで浮かれまくっていた……。
何のために帰ってきたんだよ……オレ。

冬木と女はどこまでの関係だったのか。
フラれたと冬木は言ってたけど、それは本当のことなのか?

う。

オレは思わず脇腹を押さえた。
(……なんかッ、モヤモヤしてきた……)






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