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しおりを挟む……とにかく寝よう。
そう思ってオレは冬木の部屋がある二階へ階段を登っていったんだが……。
――なぜか部屋のドアを押しても開かない。
冬木の部屋に鍵なんてついてないのに。
……ということは、開けられないように内側から誰かがドアを押さえてる、ってことで。
ついさっきまで冬木の将来を考えて身を引くとかなんとか頭の中ぐるぐるしていたオレだけど、反射的にむかっときた。
だって、部屋の中にいるのは冬木しかありえない。
そして。
冬木がオレを拒絶するとか、そんなのは許せない! 絶対にダメだ!!
しかし、普通に押してダメなら……と体重をかけても目の前のドアはうんともすんとも動かない。
ドアの向こうで必死に開けまいとする冬木の姿を想像してオレは鼻白んだ。
(フゥン……)
押し続けていたドアノブから一旦手を離し廊下の壁に身を寄せる。
そのままにしていると、こちらの様子を探るように少しだけドアが内側に開いた……。
「!」
オレが外に立っていないと勘違いしたのか、ドアの向こうに動揺の気配。
そんな細い隙間からじゃ、壁にピッタリ張り付いているオレは見えないだろ?
きっと冬木は確認したくなる。
オレがどこかへいってないか、冬木のこと見限ってないか。
ドアが大きく開いたその瞬間、自分の体を冬木にぶつける勢いで部屋の中に入飛び込んだ。
勢い余って押し倒し、二人して床に転がった。
思ったより痛くなかったのは、冬木のベッドの横に布団が敷いてあって、オレたちはその上に倒れたんだ。
「……なんだ、ちゃんとオレ用の敷いてくれてあるじゃん」
まだムッとしたままのオレが言うと、オレに組み敷かれた体勢の冬木が、
「洸夜はオレと一緒寝ない方がいい」
ボソリと言って顔を背けた。
「なんで?」
「俺は洸夜を汚してる」
「? 怪我はしていない」
「違う。よごしてるって意味!」
「風呂上がりなんだが」
噛み合わない会話に冬木が「もうっ!」と声をあげ片手で顔を覆った。
「とりあえず、俺の上からどいてくれない?」
「嫌だね。逃げる気だろ」
「俺は逃げない。洸夜が俺から逃げなきゃいけないんだ」
――こいつ何を言い出した?
オレの下から抜け出そうとモゾモゾする冬木の体をとりあえず自分の両手両足を使ってがっちりホールドする。
身動きできないとわかった冬木が脱力し、眉をハの字にしてオレを見上げた。
口を開いて……ゴニョゴニョ動かし、また閉じる。
「ん? 何か言ったか」
また、何やらゴニョゴニョと口の中で言いかけるから、流石にオレもプッツンして、
「冬木、聞こえない。はっきり言ってくれ。言わないと一晩このまま寝かさないぞ」
とっておきのデスボイスで囁いてやると青ざめた冬木がようやく、
「わ、わかった。話す。話すけど……嫌いにならないでほしい……」
と、オレのことを見上げてきた。
(う……わっ)
冬木の弱り顔が、……か、可愛いッ!
切長の目に涙を溜めてるとことか、下半身にクルものがあって。
オレは(堪えろ……)と臍の下に力を込めた。
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