五月六日は西條冬木の誕生日

たみやえる

文字の大きさ
上 下
6 / 13

6

しおりを挟む

……とにかく寝よう。
そう思ってオレは冬木の部屋がある二階へ階段を登っていったんだが……。

――なぜか部屋のドアを押しても開かない。

冬木の部屋に鍵なんてついてないのに。
……ということは、開けられないように内側から誰かがドアを押さえてる、ってことで。

ついさっきまで冬木の将来を考えて身を引くとかなんとか頭の中ぐるぐるしていたオレだけど、反射的にむかっときた。

だって、部屋の中にいるのは冬木しかありえない。

そして。

冬木がオレを拒絶するとか、そんなのは許せない! 絶対にダメだ!!

しかし、普通に押してダメなら……と体重をかけても目の前のドアはうんともすんとも動かない。

ドアの向こうで必死に開けまいとする冬木の姿を想像してオレは鼻白んだ。

(フゥン……)

押し続けていたドアノブから一旦手を離し廊下の壁に身を寄せる。
そのままにしていると、こちらの様子を探るように少しだけドアが内側に開いた……。
「!」
オレが外に立っていないと勘違いしたのか、ドアの向こうに動揺の気配。
そんな細い隙間からじゃ、壁にピッタリ張り付いているオレは見えないだろ?
きっと冬木は確認したくなる。
オレがどこかへいってないか、冬木のこと見限ってないか。
ドアが大きく開いたその瞬間、自分の体を冬木にぶつける勢いで部屋の中に入飛び込んだ。

勢い余って押し倒し、二人して床に転がった。

思ったより痛くなかったのは、冬木のベッドの横に布団が敷いてあって、オレたちはその上に倒れたんだ。

「……なんだ、ちゃんとオレ用の敷いてくれてあるじゃん」

まだムッとしたままのオレが言うと、オレに組み敷かれた体勢の冬木が、

「洸夜はオレと一緒寝ない方がいい」
ボソリと言って顔を背けた。

「なんで?」

「俺は洸夜をけがしてる」

「? 怪我はしていない」

「違う。よごしてるって意味!」

「風呂上がりなんだが」

噛み合わない会話に冬木が「もうっ!」と声をあげ片手で顔を覆った。

「とりあえず、俺の上からどいてくれない?」
「嫌だね。逃げる気だろ」
「俺は逃げない。洸夜が俺から逃げなきゃいけないんだ」

――こいつ何を言い出した?

オレの下から抜け出そうとモゾモゾする冬木の体をとりあえず自分の両手両足を使ってがっちりホールドする。
身動きできないとわかった冬木が脱力し、眉をハの字にしてオレを見上げた。
口を開いて……ゴニョゴニョ動かし、また閉じる。

「ん? 何か言ったか」

また、何やらゴニョゴニョと口の中で言いかけるから、流石にオレもプッツンして、

「冬木、聞こえない。はっきり言ってくれ。言わないと一晩このまま寝かさないぞ」

とっておきのデスボイスで囁いてやると青ざめた冬木がようやく、

「わ、わかった。話す。話すけど……嫌いにならないでほしい……」
と、オレのことを見上げてきた。

(う……わっ)

冬木の弱り顔が、……か、可愛いッ!
切長の目に涙を溜めてるとことか、下半身にクルものがあって。
オレは(堪えろ……)と臍の下に力を込めた。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

初恋はおしまい

佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。 高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。 ※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

愛人は嫌だったので別れることにしました。

伊吹咲夜
BL
会社の先輩である健二と達哉は、先輩・後輩の間柄であり、身体の関係も持っていた。そんな健二のことを達哉は自分を愛してくれている恋人だとずっと思っていた。 しかし健二との関係は身体だけで、それ以上のことはない。疑問に思っていた日、健二が結婚したと朝礼で報告が。健二は達哉のことを愛してはいなかったのか?

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

ポンコツアルファを拾いました。

おもちDX
BL
オメガのほうが優秀な世界。会社を立ち上げたばかりの渚は、しくしく泣いているアルファを拾った。すぐにラットを起こす梨杜は、社員に馬鹿にされながらも渚のそばで一生懸命働く。渚はそんな梨杜が可愛くなってきて…… ポンコツアルファをエリートオメガがヨシヨシする話です。 オメガバースのアルファが『優秀』という部分を、オメガにあげたい!と思いついた世界観。 ※特殊設定の現代オメガバースです

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

処理中です...