はるよ こい。

見つけた

５

　ふと目を落とすと、カゲの襟元についている学年バッヂ、黒い学ランに映える白いローマ数字のⅢが土で汚れていた。


　バレンタイン、前日。
　登校途中に寄ったコンビニ。なんとなく浮かれた雰囲気なのは入ってすぐの棚がバレンタイン一色にデコレーションされているから。
 いつもより割高の、ちょいとつまんだらすぐに食べ終わってしまいそうな慎ましやかなパッケージを眺めていたら、後ろから肩を叩かれた。
 振り返ると桂木が立っていた。
「買うの？　それ」
　差し向かいで話すなんてこれまでしたことがないのに、ふわっと質問してくる自然さにドキリとさせられる。
「ま、まさか。見てただけ……」
　否定するつもりで振った左手が棚に整列しているチョコの箱にあたった。
「あっ」
　落ちる寸前で箱をキャッチしたアヤの手に、咄嗟に差し出したという感じの桂木の手がかぶさった。
「あげたいヤツ、いる？」
　手の甲に桂木の温もりがじわりと染しみる。すぐ離れると思ったのに、張り付いたままの桂木の手のひらにとまどう。
「いや、だから。見てただけだって」
「あぁ、うん」