神は気まぐれ

碓氷雅

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時間は腐るほどありますしねぇ

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 今度は吐き気こそないが、気持ち悪さは爪が消化されるまで残った。力の回復と目的を追うためと自分に言い聞かせてルシファーは耐える。丸一日かけて吸収し夜明けを迎えたころ、ふと思い立ってエンヴィに問うた。

「…俺の目的は思い出せたが、ここまでの経緯がわからねぇ。人間に生まれ変わろうとした代償に支払ったからだろうな。…知ってること全部話せ」
「ひぃぃぃ! 脅さなくても話しますぅ! 片翼になりたくないんで手を離してください!!」

 無造作に離すと、エンヴィは自分の翼をいたわるように何度も撫でた。

「とにかく大陸の方へ。その道中にお話ししますわ! 時間は腐るほどありますしねぇ」
「そう…だな。行くぞ」
「はいはい。ついて行きましょうねぇ…」

 ひとりと一匹は、結界のあとが残る海岸線から空へと大きく羽ばたいた。地平線に昇る朝日に照らされ、それぞれの黒翼はきらきらと煌めく。飛ぶうちに魔法の使い方を思い出したルシファーは、ボロボロの服を海に脱ぎ捨てて魔法で作った服に着替えた。

 それを「お見事!」と囃し立てるエンヴィを同じように海に叩き落とし、ずんずんと進む。

「ま、待ってくださいよぉ…ルシファーさまぁ!」

 大陸の方へ、地平の彼方へと二つの影は小さくなっていった。

 孤独な島には、一陣の風に砂が舞った。
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