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一年生・冬の章
必ず4人で①
しおりを挟む「まって、もしかして俺って重大な責務を背負ってる?」
セオドアが恐る恐る尋ねると、ルイはさらにニタァと悪い笑みを浮かべた。
「……」
ルイの表情を見て全てを察したセオドアは、目を見開いた後そのまま机に突っ伏し無言になる。ただならぬ気配に、ギュンターは慌てた表情浮かべる。
「えっと、その、僕は進級できれば嬉しいので!!本当に気にしないでください!」
「……」
「でも、セオくんなら大丈夫だと思うけどなあ」
フィンは不思議そうな表情を浮かべ、机に突っ伏すセオドアの頭をつんつんとつついた。至って真面目に、セオドアなら必ず圏内に入る実力があると見込んでいる様子で、心配な気持ちは微塵もないと表情で読み取れる。
「(フィン様、そんなにプレッシャーをかけて大丈夫なんですか!?)」
ギュンターは焦った表情を浮かべフィンを見るも、当の本人は朗らかな表情で首を傾げた。
「……」
セオドアはなおも、石のように動かない。
ルイはやれやれとため息を吐いた後、少し笑いながら口を開いた。
「おいセオドア。7位以内に入れば、褒めてもらえるんじゃないか?先生に」
セオドアはルイの言葉にガバッと頭を上げた。
「せんせい……!!!」
そして、そのまま冷えた紅茶を一気飲みして立ち上がる。セオドアの脳内は想い人であるこの学校の教師、ジャスパー・ランベールで一色になり、途端にやる気に満ち溢れた表情を浮かべた。
「え?セオドア様……?」
ギュンターはセオドアの急な変わり様にキョトンとした表情を浮かべる。ルイは作戦通りだ、と呟いて笑みを浮かべた。
「燃えてきたぞー!!!」
セオドアは懐から栄養ドリンクを取り出すと一気飲みをし、制服で口を拭ってから不適な笑みを浮かべる。
「おい、ルイ……。2位の座がずっとお前のものだとは思うなよ……クックック」
セオドアはルイに指で銃口を向けるよなジェスチャーをする。
「ほーん。言うようになったなヤク中」
ルイは余裕の笑みを浮かべ、薬学に精通しているセオドアを”ヤク中“と煽った。
二人のやり取りを見たフィンは嬉しそうに笑みを浮かべる。
「よーし、僕も抜かされないように頑張らなきゃー!」
フィンはがやる気に満ちた目でそう言うと、ルイとセオドアは一気に真顔になる。
「歴史上だれも成し遂げていなかった“オール満点”のお前がこれ以上何を頑張るんだ?」
「えっ」
「フィンちゃん、召喚魔法のテスト免除されてるよね。シルフクイーン召喚したことで国からも表彰されたから。偉人認定だ」
「えと、そうなんだけどね、でもテストはちゃんと受けようと思ってるんだけど……。ほ、ほら!僕、火属性の魔法が苦手だから練習しようかなって思ってるし!ね?」
フィンは取り繕うように慌ててそう言うも、二人の追撃は止まらない。
「属性の実技試験は選択制だろ?得意な“風魔法”を選べばいい」
「うぅ、そうなんだけどねっ、でも別の理論使えば火属性の魔力が少なくても、強い魔法が使えそうな気がしてて」
「え、新しい魔法理論でも作るつもりなのフィンちゃん」
「え、えっと、そうなのかな!?変かな!?僕っておかしいの……?」
ルイとセオドアの激しい責めに遭ったフィンは瞳を潤ませたため、二人はハッとした表情を浮かべた。
「(これ以上からかったら師匠に殺されるぞ)」
「(確かに。いじめすぎちゃったなぁー)」
二人がコソコソと話していると、ギュンターは小さく笑みを浮かべる。
「フィン様は本当に凄いです。僕の憧れです……!」
「!」
フィンはカァーっと顔を赤くする。
「えっ?僕が憧れなんて変だよー」
「いいえ!!入学式の代表挨拶の時からずっと憧れでした!!」
「僕ほら、貴族でもなんでもないし……」
「そんなことは関係ありません!ここは知性を司る学園!博識であることが優秀なんです!そこに家柄など全く関係ないんです!フィン様もルイ様もセオドア様も、この学舎の生徒である限り等しく知性を争う生徒なんですよ!!」
ギュンターは珍しく大声で力説していると、ルイはジトっとした目でそれを見る。
「じゃあその”様“ってのやめろよ」
「え」
ルイのごもっともな指摘に、ギュンターは慌てて前髪で目を隠し口籠る。
「そ、それはですね……えっと……僕は元々呼び捨てにするのが苦手でして」
「でも”様“はちょっとねぇー。もっと砕けた呼び方でいいよ?」
「兄弟ですら呼び捨てにしないのですが……」
「僕も”様“じゃないほうが嬉しいなぁ」
「えっと……」
ニコニコと笑みを浮かべる3人に耐えきれず、ギュンターは恐る恐る口を開く。
「る、ルイ……さん」
「まぁ……いんじゃねぇの?別に呼び捨てでもいーんだけど」
ルイはやれやれと笑いながら反応をする。
「せっ、せおっ、セオドアさん?」
「長いんじゃない?じゃ、セオさんでどう?」
「せっせお、セオさんっ……!」
「おー、いい感じ」
セオドアは一生懸命なギュンターにパチパチと拍手をする。
「ふぃ、フィ、ふぃ、、」
「フィンくん!!」
ギュンターは最後の力を振り絞るようにフィンを呼ぶ。
「(あー!間違えたー!フィンさんって言おうとしたのに!!)」
「僕はくん付けにしてくれるの!?嬉しいー!」
訂正する間もなくフィンは両手を上げて喜んだため、ギュンターは内心焦ったまま立ち尽くした。
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