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一年生・秋の章<それぞれの一週間>

うぉーあいにー⑧

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「ありがとなぁティオ。これからシャオくんとデートしてくんねん!三等地あたりがええよね?」

「そやね、あっこならおもろいお店多いんちゃう?レストランも多いし」

「ほなそうするー!」


 ご機嫌な様子のフォンゼルに、ティオボルドも自然と笑みを浮かべる。


「ほんなら邪魔したね!気を付けて行くんやで?」


 ティオはそう言って道を空けると、フォンゼルはティオをぎゅうっと抱き締めてから「行ってきまーす」と言ってその場を後にする。


「それでは」


 シャオランもその後に続いて頭をぺこっと下げその場を後にしようとすると、ティオボルドは小さく口を開いた。


「次からは玄関から入ってな?シャオランさんなら大歓迎やし」


 ティオボルドの言葉を聞いたシャオランは、慌ててそちらへ振り向く。


「っ、窓から入ったことバレてましたか」


 シャオランは少し焦った表情を浮かべ続け様に「申し訳ありません」と小さく謝罪をする。
 ティオボルドは少し笑みを浮かべてさらに続けた。


「あんなところからよー登るわ!あはは。本当なら警備兵に捕まるで」

「(それもそうだ……寄宿とは言えれっきとした貴族の屋敷、あんなふうに入れるわけもないのに)大変お騒がせしました」


 シャオランは申し訳なさと恥ずかしさで顔を歪める。


「ええのええの。それよりも、弟のこと泣かせたら許さへんよ?ほな、いってらっしゃい」


 弟を想うティオボルドは、シャオランにそっと忠告をして背を向け手を振った。ティオボルドのポニーテールが小さく揺れる姿を見るシャオランは「はい」と小さく返事をすると、離れたところまで歩いていたフォンゼルが振り返る。


「あれぇっ?シャオくんなにしとんのー!はよいこォ?」


 手招きするフォンゼル。


「はい」


 シャオランはティオボルドの背にぺこっと礼をし、まるで飼い主に向かって走る大型犬のように急いでフォンゼルの後を追いかけてその場を離れた。


「(そういえば……眠りを覚ましたとき、大きな鳩が必死に窓をつついてたな。あの音で目が覚めたけど、あれはもしかして)」


 蘇る記憶。眠りに眠っていた自分を目覚めさせた鳩は、偶然じゃないのでは?と思うシャオラン。落ち込むフォンゼルを心配しティオボルドが秘密裏に自分を起こさせたのかもしれない。シャオランはその可能性を考え、軽く笑みを浮かべてフォンゼルを見つめた。


「(愛されてるな……家族の愛、か)」


 少し羨ましそうにフォンゼルを見下ろすシャオランに、フォンゼルは首を傾げた。




------------------------------------------------



「ボク東方のご飯初めて~!」


 三等地に訪れた二人。三等地は外国料理店を専門的に扱うお店も多く、東方料理店“ライライ”を見つけた二人はそこに入り昼食を取ることになった。
 

「さすが王都……まさかローザリオンで東方の料理が食べられるなんて」


 テーブルには水餃子や炒飯、春巻きに小籠包が並ぶ。


「定期的に食べれば、恋しくならへんやろ?」


 フォンゼルはニコッと笑って言ってみせると、シャオランは軽く笑う。


「元々、国が恋しいなんて少しも思ってませんよ……確かにこちらに来たのは自分の意思ではありませんが、家にいるよりずっとマシなんです。むしろ気が楽でした」


 シャオランの言葉に、フォンゼルは少し目を見開く。


「(シャオくんの家が複雑なんは噂で聞いてたけど……)」


 シャオランは複雑な家庭状況で、ローザリオンに来たのも良いように使われているという事実は毒迷宮ラビリンスの時に本人が口にしていた。フォンゼルも噂で聞いていたが、詳細は知らない。


「(しまった、重い話はするべきではないな)」


 シャオランは慌てて話を逸らすようにレンゲを持ちフォンゼルに渡す。


「さ、温かいうちに食べましょうか。小籠包はこのレンゲに乗せて、少し皮を破いてスープを飲んでから食べてみてください。黒酢をかけても美味しいですよ」

「う、うん」


 フォンゼルは少し戸惑いつつも、言われた通りに食事を始めた。ここまで湯気の立つ食事はしたことがないとフォンゼルは嬉しそうに笑みを浮かべると箸を持った。


「この箸とかいうやつ、難しい」


 フォンゼルは慣れない箸を持って小籠包を持ちレンゲに乗せる。そして必死に小籠包の皮を破いた。


「フォークもありますよ?」


 シャオランはカトラリーを指差して首を傾げる。


「ええの。練習練習!いただきまーす!あちっ」


 スープが熱々だったのか、フォンゼルは舌を出し顔を顰めた。


「熱いやんビビるわ」

「だ、大丈夫ですか?火傷には気をつけてください」


 心配そうに見守るシャオランは、慌てて水を差し出すと相手はそれを少し飲んでから再度小籠包を口にする。
 口の中で広がるスープの旨味と皮の弾力、そして餡のジューシーさにフォンゼルは目を輝かせた。


「うまー!初めて食べる味やねんけどー!」

「ちゃんと口に合うようですね。良かった」


 シャオランはフォンゼルが問題なく食事が出来ることを見届けると、ようやく自身も食事に手をつけ始める。少し袖を捲り血管の浮き出た腕を露出させてから器用に箸で食事をし始める姿を、フォンゼルはジッと見つめていた。
 炒飯を別皿に移し、それを口に運ぶ。上品ではあるが、男らしく沢山食べていく様子をフォンゼルはちらちらと眺めながら食事を進める。


「……僕の食べ方、変です?」


 視線に気付いていたシャオランは苦笑しながら問いかけた。









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