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一年生・秋の章<それぞれの一週間>

リヒトとチョコレート

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 “アイフレ”を読んだ話をしながら夕食を取るフィンとリヒト。


「あれ読んだらね、フレンチトーストにアイスクリーム乗せたやつ食べたくなっちゃったから、今日は三人でそれを食べてみたんだー」

「出してるお店があったの?」
 
「ううん、ルイ君が店員さんに頼んだらすぐ出てきたの」


 侯爵家のルイは顔が利くのであろう。おそらくそのお店にはアイスクリームはあれどフレンチトーストは置いていなかったが、特別に作ってもらえたという。


「美味しかった?」

「うん!アイスが溶けちゃう前に急いで食べた!ふわふわつめたあまーい」

「ふふ、俺も食べてみたいな」


 リヒトは笑みを浮かべてそう言ったあと、鶏肉の柔らかなソテーをナイフで切り分ける。


「じゃあ明日の朝作ってあげる!アネモネが僕のためにアイスクリーム常備してくれてるの。リヒトは朝たくさんは食べないから、ちいさーくして作るよ」


 フィンはにこーっと笑みを浮かべてその提案をすると、リヒトはその優しさに胸をときめかせ一瞬動きが止まる。


「いいの……?なんかすごく、嬉しい」


 リヒトは小さく笑みを浮かべながら喜んだため、フィンは大きく頷いて優しく笑みを浮かべた。


「リヒトに食べてもらえるのが嬉しい!これからもたまに僕がごはん作るから、たべてくれる?」


 フィンは愛情に満ちた表情でそう提案すると、リヒトは嬉しそうに頷く。


「……もちろんだ」

「でも僕アネモネのご飯も大好き。最近たくさん北部のご飯出てくる」

「アネモネはフィンが大好きだからね」

「ぼくもアネモネ大好き」


 フィンがなんとなくそう言うと、リヒトは少し間を置いた後に口を開く。


「ねぇフィン。俺とチョコレートどっちが好き?」

「リヒト」


 リヒトの問いかけに即答するフィン。リヒトは思わず目を見開き驚きを示した。


「え」

「えっ?」

「即答したからびっくりして」

「当たり前でしょ?へんなのっ」


 フィンは眉を下げ首を傾げると可笑しそうに笑う。


「フィンのチョコレート好きはすごいから、どっちもとか言うかと思って」

「リヒトに敵うものはないよ?」


 フィンはさらりとリヒトを安心させる言葉を放ち、笑みを浮かべながら食事を続けた。
 ふとフィンの手首を見ると、縛った後が若干残っていることに気付きリヒトは目を見開く。


「痕……ごめんね、手首。俺のせいなんだ」


 リヒトが申し訳なさそうにフィンの手首をさすると、フィンは首を横に振って笑う。


「ぜんぜん大丈夫だよ?痛くないし。目隠しされたのは初めてでびっくりしたけど……」


 フィンはそう言った後にはっと表情を強張らせる。


「フィン……もしかして覚えてるの?」


 記憶が無いと言っていたフィンに、リヒトは少し驚いた表情を浮かべた。


「あ!あの!その……実は、思い出しちゃった……」


 フィンはかあぁっと顔を赤くし、その顔を手で覆うとリヒトは動揺しつつ少し顔を赤らめる。


「忘れてたフリしてた方が良いと思ってて……でもあの、僕、ちゃんとリヒトって分かってたの。わかっててえっちしてたの」

「……!」

「なんか、その、あのっ……すごく気持ち良くなっちゃって……リヒトにされること全部、嫌じゃなくてっ……」


 リヒトはぽかんと口を開き何も言わずにいると、フィンは
「ごめんね」と消え入りそうな声で謝罪をする。


「……安心した」


 リヒトはハァッと安堵のため息を吐くと、穏やかな表情でフィンの手を取り手の甲に優しくキスをする。


「そうか。フィンは縛られたり目隠しされるのも興奮するんだね。……俺に無理矢理されるのも」


 リヒトは妖しい笑みを浮かべながらそう言ってフィンを見つめると、フィンは目を合わせることが出来ず真っ赤な顔で小さく頷いた。


「あの、リヒトがしたいこと……ぼく、ぜんぶ、してあげられるからね……だから」

「うん」

「だから、他の人としちゃダメだよ?」


 震える声で懇願し、リヒトの手をぎゅっと握るフィン。


「っ……」


 声色、言葉、仕草どれもがリヒトの心に甘く突き刺さり、脳を蕩けさせる。


「“アイフレ”に出てきた浮気をする男を見て、不安になったの?」

「……ちょっと、だけ。しないって分かってるんだけど、こうやって言わないと不安になっちゃって……」


 不安げに揺れるフィンの瞳。


「大丈夫、絶対に俺はフィンだけだから。フィンも俺だけだよね?」


 リヒトは低く甘さのある声でフィンに問いかけると、フィンはリヒトを見つめ頷いた。


「リヒトだけ……!大好きっ!」


 フィンははにかみながら愛を伝えると、リヒトはフィンを愛おしそうに見つめてから「俺も」と言う。
 それから二人は甘い雰囲気を漂わせながら食事を再開した。


「今日はお風呂でチョコレートアイス食べようか」


 リヒトが何気なく提案すると、フィンは今にも踊りそうな勢いで立ち上がる。


「!?!?そんな楽しそうで美味しそうなことをしていいの!?アイフレの主人公がやってたやつ!」

「ははっ、すごい興奮してる。やってみたいって思ってたでしょ」

「うん!!!」

「今日はお風呂でデザートだ」


 二人はいつもより長い時間お風呂に入って話しながら、冷たいアイスクリームを食べて幸せに浸るのであった。



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