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一年生・秋の章<それぞれの一週間>
酔いどれ天使が堕ちる夜⑧★
しおりを挟む「はっ……ぅ、うう、ぁっ……」
フィンは息を荒げながら自身のモノを扱き続ける。
視界は奪われたままだが、自慰をしている姿を見られていることは理解していたため、最初は躊躇していたフィン。
しかし、羞恥など考えられないくらいに酔いが回り、快楽に意識が傾いたのか、次第に手を動かすスピードが早まっていった。
「(もっとふあふあしてきた……頭のなかなかとろとろ……)」
酔いが回って座っていられなくなったフィンは、こてんと横向きに転がりながら自慰を続ける。
口端から唾液を垂らし必死に快楽を貪る姿を、リヒトはじっと眺める。
「…………」
フィンを一言で表すなら、“天使”以外に思い付かないぐらいに優しく穏やかで、心が温かくなるような笑顔と純粋さを持っている。何かの手違いで天使からエルフになったのでは?と思えるぐらいに、フィンはリヒトにとって美しく尊い存在だ。
だから時々不安になる。いずれ神に愛されすぎて連れていかれるのではないかと。フィンに翼を授け自由にするのではないかと。
フィンと比べ、自分は酷く醜い心の持ち主だとリヒトは自身を卑下する。こうして天使を堕として自分の元に留めておきたいという捻くれた発想が思いつくのだから。翼が生えようものなら、その羽を一枚一枚剥ぎ取ってでも地上に堕としてやる。自分に悪魔の羽が生えて、地獄に引き摺られるのであれば、フィンの羽を黒く染めて道連れにしてやろう。
「(俺はなんて恐ろしい奴だ……)」
フィンをどこまで穢せば気が済むのだろう。考えたところで答えは出ない。馬鹿みたいな独占欲と不安に駆られてこんなことをしている自分に呆れるが、それでもフィンに対する欲望だけは上手くコントロールが出来ない。
もう少し自分に余裕があれば、こんな風に辱めながら相手を確かめるような格好悪いこと、きっとしないのに。
「(いや、そもそもフィンを汚すことにこの上無いくらいに満足感を得ている時点で、手遅れか)」
リヒトはそう思いながらフィンをじっと見つめ、手を伸ばし頬に触れようとする。
その瞬間、フィンはか細く震えた声で「リヒト」と小さく呼んだため、リヒトは目を見開き手を止めた。
「りひ、と……すき、あいしてる……リヒト、りひとっ……だいすきなの……リヒトじゃないとだめなの……ずっといっしょだよ」
酔いながらもフィンの脳内はリヒトでいっぱいなのか、リヒトの事をずっと考えながら自慰を続けている様子のフィン。その声はハッキリとしており、フィンが心からリヒトを求めているような愛おしげな声色だったため、リヒトは思わず小さく目を見開いた。
「すき……だいすき、……おねがい、きらいに、きらいにならないでね……りひ、とっ……ぁっ」
フィンは切なげにそう懇願すると、ぴゅくっと射精をして激しく呼吸をしながらぐったりする。体は軽く痙攣しており、射精の余韻に浸っている様子だった。
リヒトはフィンの視界を奪っていた涙で濡れているリボンをそっと外す。
「嫌いになるわけない」
リボンが外れると、フィンはゆっくり目を開き、定まらない焦点の中でリヒトの碧眼を捉える。
海よりも、空よりも遥かに綺麗なリヒトだけの碧眼。
そして月の光にも似た煌めく銀髪。放たれる切なげな低い声。
「リヒ、ト……」
フィンは目を潤ませ、リヒトを見つめながら名前を呼び笑みを浮かべる。その笑みがあまりにも純粋すぎて、リヒトは胸を痛めた。
「フィン……俺は綺麗事なんて言えない。俺はフィンみたいに綺麗じゃない。俺は天使にはなれない」
リヒトはそう言ってフィンを強く抱きしめると、フィンは何も言わずに優しく抱き締め返す。
「(リヒトのにおい……ぎゅってしてくれてる……?)」
強烈な眠気に襲われているフィンは意識が朦朧としつつ、リヒトの体温を感じて目を細めた。
「それでも、どうかこんな俺をずっと愛してくれ。俺が堕ちないように、フィンが俺のこと抱き締めていて欲しい」
リヒトは珍しく縋るような声色でそう懇願すると、フィンは何かを察したように口を開く。
「だいじょうぶだよ……ぼくはずっとリヒトといるよ……だからずっと、ぼくのこと好きでいてね……?」
フィンの言葉に、リヒトは喉の奥が熱くなるような感覚になる。すると、自然と片方の瞳から熱い涙が一筋溢れた。
「それにね、天使さんはみんな青い目なんだよ……ふふ、リヒトといっしょ……ぼくじゃなくて、リヒトが天使さんなの」
フィンが何気なくそう言ってリヒトを強く抱きしめる。
どこまでも自分を清くするフィンの言葉に、リヒトはしばらく嗚咽が止まらなかった。
黒い影に埋もれた幼き自分の姿が、徐々に陽に照らされていくような光景が脳内に広がる。その陽から手を伸ばすのは天使の姿のフィンで、リヒトはその手をおそるおそる掴むと、一気に自分に纏わりついていた影が取り払われる。
そしていつの間にか自分にも天使の羽が生えており、フィンはそんなリヒトを抱き締めるのだ。
『ずっと一緒だよ』
リヒトはそんな光景を思い浮かべながら、ただただフィンを抱き締めて小さく震える。
「フィン、愛してる……」
リヒトは、フィンの唇に優しくキスをしてとびっきり甘い言葉を吐き、今度はフィンを甘く蹂躙していく。
心から溢れて止まらない愛情を、フィンに受け取って欲しいと感じてからは止まらなかった。
--------------------------------------------------
「ふっぁ、あっあっ!ぁっ……ひっ、りひ、りひと、しゅきっ……!」
腰を甘く打ち付けられる度にびくびくと震えるフィン。最奥をトントンとノックするように挿入され続けると、フィンは空イキが止まらず震えっぱなしだった。
「愛してる……どれだけフィンを好きか、眠るまで教えてあげるからね」
リヒトはそう言って前立腺を擦り続け、時折強く押し潰しながら突然奥に打ち付けることを繰り返し、フィンは止まる事のない様々な快感を一身に受けながらリヒトの愛情に蕩けていく。
それからフィンの意識が完全に無くなるまで愛情を注ぎ続けたリヒトは、とうとう意識を手放したフィンの頭を撫でてそっと抱き締め、小さく笑みを浮かべながら自身も眠りについた。
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