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一年生・秋の章
お楽しみキャンディ “入れ替わり味”⑦
しおりを挟む「それに友人は足りてる。ミネルウァに通っているからな」
リヒトはフィンが答えるより先にそう言うと、キースががっくりと項垂れる。
「ミネルウァとはなんと優秀な!うちの弟もミネルウァを目指しているのですが、中々成績が上がらなくて」
キースは思い悩んだ表情で語り始めると、フィンは思いついたように口を開く。
「あ、あの、僕はリヒトとは違ってただの庶民なので、その、キース様の弟さんと友人になるなんて恐れ多いですが、もし良ければお勉強を教えるくらいなら……」
「フィン」
リヒトはフィンの口を手で塞ぎムスッとした表情を浮かべる。
「?」
フィンは何かまずいことを言った?と眉を下げて目を丸くする。
「なんと!!!!そんなありがたいことをお頼みしてもいいのですか!???」
すっかりその気になったキースは興奮した面持ちで目を輝かせる。ガタイの良い体に鎧を纏っているため、動くたびにガシャンガシャンと擦れた音が響いた。
リヒトは大きな溜息を吐く。
「ぼ、僕でよければ!」
「フィン」
リヒトはむーっとした表情で遠回しに拒否をする。
「だめ、かな?僕ちょっと先生になってみるの興味あって……」
フィンは甘えた声を出しリヒトの毛先を摘んで撫でながら見上げると、リヒトは何も言えずぽんぽんとフィンの頭を優しく撫でた。
リヒトは途端にキースを睨み付け、殺意にも似たオーラを放つ。
「いいかキース、期間限定だ。一ヶ月、週に一度、三時間以内。それ以上は認めない。フィンだって忙しいのだからな」
リヒトは不機嫌そうに淡々と述べると、キースは目に涙を浮かべて喜んだ。
「なんたる幸せ……!貴重なお時間を頂けるだけで光栄でございます!弟もさぞかし喜ぶでしょう!」
キースのあまりの喜びように、フィンは目を細め少し恥ずかしそうな表情を見せる。
「お役に立てれば良いですけど……」
フィンは優しく笑みを浮かべてそう言うと、リヒトが真顔で口を開く。
「立つに決まっている。キース、フィンは第一位だ。家庭教師代は安くはないぞ」
「「第一位!?!!」」
キースとミルは同時に声を上げる。
「り、リヒト、お金取るのー!?」
フィンは驚いた表情でリヒトを見る。
「いや、取りはしないがそれだけの価値はあるという警告だよ」
リヒトはにっこりと笑みを浮かべて言い聞かせるようにフィンへ話すと、フィンは首を傾げよく分かっていなさそうな表情を浮かべた。
「もちろんタダでとは言いません!何なりとお申し付けいただければ……」
「キース様、僕は教師でも何でもないただの学生なので、そんなに気になさらないでください。その、僕も誰かに教えることで勉強になるので、むしろ御礼を言いたいぐらいなんです。
僕のはじめてのの家庭教師の体験ですから、うまくできるかも分からないし」
フィンは天使のような笑みでキースを見つめながらそう言うと、キースは心が洗われるような気分になり表情を綻ばせた。
「ああ……何とお優しいのだフィン様は」
「ふん。感謝するがいい」
リヒトは鼻を鳴らしながら不機嫌そうに小さく呟く。
「あ、あの、もう少しでエスペランス祭があるので、それが終わってからでもいいですか?11月に入れば落ち着くと思いますので」
「もちろんですとも!!あ、弟はアルトと言いまして、とにかく真面目で面白みのない無口な弟ですが、根は優しくとても良い子です。きっと気に入ります」
キースがそう言うと、リヒトは眉をピクッと動かす。
「無理して気に入らなくて良いよ、フィン」
リヒトは不機嫌そうにそう返すと、フィンは困った表情を浮かべる。
「(シュヴァリエ公爵ったら、もしかして束縛嫉妬属性なのぉ!?あの愛らしい純粋無垢なフィン様を独り占めしたい感がすごく見てわかるわ……それなのに副団長ったら無意識に煽ってるわね)」
ミルは顔を赤くしながら二人を見ると、やがてキースを呆れ顔で見て溜息を吐いた。
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お楽しみキャンディを製造している場では、また従業員が喚く。
「あっれぇ、ここに置いてあった開発途中の入れ替わり味どこやった!?」
「ああ、出荷したけど」
「はぁ!???!!!あれは出荷したらまずいって……分量間違えてすぐに元に戻らないんだよ」
「一生じゃないだろ?」
「まあそうだけどな。クレーム来たらなんとか誤魔化しておけばいいか」
今日もお楽しみキャンディの製造業者は適当だった。
*_*_*_*_*_*_*_*_*_*_*_*_*_*_
次回からエスペランス祭に入ります!
書き溜めできたら更新開始しますので
次回更新をお待ち下さい~
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