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一年生・秋の章
お楽しみキャンディ “入れ替わり味”②
しおりを挟む「あ!お呼び出しだ!」
フィンはリヒトの身体で満面の笑みを浮かべる扉に向かうと、リヒトは慌てた表情を浮かべその後ろを追う。
「フィン、待って、この状態でっ……」
リヒトがそう言いかけた時には、もうフィンは本邸へ繋がる扉を開いていたため、リヒトはがっくり項垂れて困った表情を浮かべた。
扉の向こうにはエヴァンジェリンと双子が立っており、いつものように笑顔で二人を出迎える。
「「ふぃんー!」」
「はーい」
双子がフィンを呼ぶと、フィンはいつものようにふにゃっと優しい笑みを浮かべて手を広げる。しかし、いつもすぐに飛びつくはずの双子は、ピタッと動きを止めて固まった。
エヴァンジェリンも、驚いた表情を浮かべて呆然と立ち尽くす。
「ちょっと、リヒト……熱でもあるの?」
入れ替わっていることをしらないエヴァンジェリンは、顔を引き攣らせながらその光景を見る。リヒトが手を広げて見たことのない笑顔を浮かべているようにしか見えないため、双子も混乱した顔で立ち止まり、フィンとリヒトを交互に見ていた。
さらに、いつも笑顔で優しい雰囲気を放つフィンが、今日は表情があまり変わらず厳かな雰囲気を放っているため、双子は何があったのかと呆然としている。
「……あ。そうだった……」
どうしよう?と頬を掻きながらリヒトを見るフィン。
リヒトは軽く息を吐くと、言うしかないと口を開いた。
「……姉様。お楽しみキャンディを食べた影響で、俺とフィンの中身が入れ替わってます」
エヴァンジェリンは目を見開く。
「えぇ!?じゃあ、リヒトはフィンちゃんで、フィンちゃんはリヒトになってるの?」
「そうなんです!僕がフィンだよ。混乱させてごめんね、シエル、ノエル」
雰囲気と表情で、リヒトの中身がフィンだと理解した双子はフィンに抱き付いた。
「ふぃんー!にいさまのからだになっちゃったのー!?」
「ふぃんがおおきいー!にいさまのかおー!」
双子は不思議そうにフィンを見上げると、フィンは双子を同時に軽々と抱き上げた。
「わー!リヒトの体だと簡単に抱っこ出来ちゃうねー!リヒトって力もちだー」
フィンは無邪気にそう言ってリヒトを見ると、リヒトは少し照れたのか目を細める。
「ハイエルフは、そもそもエルフよりも力があるからね……」
落ち着いた雰囲気で話すリヒトに、エヴァンジェリンは目を輝かせる。
「なんだかリヒトが入ったフィンちゃんの雰囲気も、ミステリアスな美少年って感じで素敵ね~。本当に別人みたい!」
エヴァンジェリンはそう言うと、子供の頃に戻ったようにリヒトを抱き上げて高く持ち上げ笑みを見せた。
「なっ……姉様、一体何をするんですか」
リヒトは抵抗は見せないものの、嫌がった表情を浮かべ眉を顰める。
「だってー、今の大きいリヒトじゃ出来ないじゃなーい?フィンちゃんの体なら軽いから、今のうちに抱っこしようと思ってー♡」
エヴァンジェリンはそう言ってリヒトを持ち上げながらくるくると周り楽しそうな表情を浮かべた。
リヒトは諦めたように項垂れ、されるがまま振り回される。
「よかったねぇリヒト」
フィンはリヒトが嫌がっていることに気付かず呑気にそう言い、大口を開けて笑ってみせた。
「にいさまのおかおって、そんなにうごくんだあ」
シエルはそう言いながらフィンを見上げる。
「にいさまのおかおって、そんなにおくちがあくんだー!」
ノエルは物珍しそうにフィンを見上げ、フィンによってコロコロと変えられるリヒトの顔を見た。
エヴァンジェリンの抱擁から逃れたリヒトは、自分の顔が見たことのない表情を繰り出していくのを見て最早何も言わずに頭を抱え、双子はしばらく不思議な感覚でフィンと遊ぶのであった。
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