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一年生・夏の章
喧嘩は愛の味④
しおりを挟む「俺はただ、君に心底惚れているということを分かって欲しくて……同じ気持ちになって欲しくて、逃げる君を見て不安になったんだ」
リヒトの弱々しく不安げな瞳。
そんな顔を、フィン意外誰が見れるというのであろう。
フィンは俯き加減でリヒトの様子を伺い、安易な気持ちで部屋を出ようとした自分を責めた。
「ごめんなさいっ……僕も本気だってことわかって欲しくて、ちょっとお部屋出れば分かってくれるかなって拗ねちゃって、ごめんね、ごめんね」
フィンもぎゅうっと抱きしめ返すと、同じように謝罪しリヒトの首に顔を埋める。
「……君があんな態度取るの初めてで、どうしたらいいか分からなかった。君が俺を拒絶していると思って急に不安になったんだ」
リヒトは目を細めフィンを見つめる。どうか自分を置いていかないで、と縋るような目だと感じたフィンは、慌ててリヒトを強く抱きしめて口を開く。
「拒絶なんて絶対にしないよ……!僕はリヒトのこと、大好きだよ?本当に、心からっ……あ、」
フィンは何か言いたげに口をパクパクさせると、意を決したようにリヒトを見つめる。
「愛してるよ……」
あどけなく、それでも心の籠った強い声。リヒトは愛を知った自分がいかに弱く不安定なのかを実感しつつ、年下であるフィンに包まれるような安心感を感じてひっそり笑みを浮かべた。
「……その言葉、深く心に留めておくよ。毎日思い出すぐらいにね。俺も愛している」
リヒトはフィンの頭を撫で安心した表情を浮かべると、柔らかい栗色の髪をサラサラと撫で、フィンの優しく甘い匂いを嗅ぎ落ち着きを取り戻す。
しばらく抱き合っていた二人だが、フィンは不思議そうに首を傾げた。
「僕……なんであんなにムキになっちゃったんだろう?リヒトを困らせようなんて思っちゃうなんて、変だよね」
フィンは不安げに瞳を揺らし、自分の言動を思い返して後悔した表情でリヒトを見た。
「……フィンもあんな風になったりするの、新しい発見だ。今思うと、それって俺に気を許しているからかな、と前向きに思ってもいい?」
リヒトはフィンの鼻に自分の鼻をピトッとくっつけて見つめる。
「うん、僕きっとリヒトに甘えちゃってたんだ……僕は騙されやすいし、みんなと違って鈍感みたいだし、でもどうしたらいいか分かんないから、やけになっちゃった」
フィンはぎゅっとリヒトの服を掴みながら首元に顔を埋め、涙まじりの声でそう語る。
「……フィン。俺も言い方が悪かった。分かって欲しいなんて押し付けは出来る限りしない。君はクラウスの時、きちんと俺を呼んだ。あれは正解だった。普段もう少し気をつけていれば、君自身が杖を振って防ぐことも出来ると信じてるよ」
リヒトは眉を下げ、心配性な自分を律すると、フィンを見つめ「信じている」とはっきり言い放つ。フィンはその言葉に目を見開き、やがて笑顔を見せた。
「うん!僕がんばるね、知らないひとにはついて行かないし、杖を出す準備して意識もするし、襲われた時にすぐ使えそうな魔法も勉強してるから……!」
「……うん、いい子だね。俺の可愛いフィン、それでも俺は君をいつでも心配してることだけは分かって」
「うん」
二人は見つめ合うと、やがてどちらともなくキスをする。フィンは噛んだ箇所に再度舌を這わせ、ちゅっと愛おしそうにキスをして目を細めた。
「本当に痛くない?」
フィンは目を細め、すりすりとリヒトの下唇をさする。
「全然。フィンがちょっと派手なキスマークつけてくれたと思えば」
リヒトはクスッと得意げに笑うと、フィンはかぁーっと赤くなり俯いた。
「お返ししてあげる」
リヒトはフィンの唇を優しく噛んでから吸ってキスを繰り返すと、フィンはぎゅうっとリヒトの背中を掴みじっと見つめる。
「ねぇ、あの、あのね、質問なんだけど……」
フィンはもじもじしながら俯き加減で口を開く。
「ん?急にどうしたの」
「り、リヒトって」
「うん?」
リヒトは瞬きをしながら不思議そうに首を傾げる。
「僕にえっちなことするの、ちょっと無理矢理の方がすきなの……?叩くのも、すき?」
フィンの質問に、一瞬空気が止まった雰囲気に包まれ、リヒトは困った顔で何も言えず目を瞑った。
「っ……」
思い返せば、最初から最後まで甘い抱き方をする方が少ない。気付けばフィンを意識が失うまで責めたり、身体を抑えつけて犯したり、最初の行為でさえそもそも同意を得られていない事を思い出すリヒト。
「前から、僕のこと噛んだり、押さえてえっちしたりとかするから、そういうのが、すき……なの?」
フィンは羞恥が混ざりつつもキラキラとした目でリヒトに問いかける。
「(そ、そんな純粋な目で聞く内容か……?)」
リヒトは返答に困り狼狽えた表情を浮かべる。
「さっきの、喉の奥までぐーっておちんちん突っ込むのも、本当はああいうのがすき……?」
フィンはグイッとリヒトに顔を近付けながら必死に質問を繰り返すと、リヒトは困ったように目を細めた。
「フィ、フィン……落ち着いて」
フィンは責めているわけではなく、単にリヒトを知ろうとした質問という事にリヒトは気付いていたため、観念したように口を開く。
「その、気付いたらそうしてしまうというか。フィンが好きすぎて、身体を征服したいというか……ごめん、止まらないんだ。俺の手で好き放題されてる君を見てると、興奮が止まらない」
嫌なら善処する、と言いかけたリヒトだったが、フィンがパァッと嬉しそうな笑みを浮かべたため言葉に詰まる。
「僕の身体がつまんないからとかじゃないんだね、よかったあー」
「な、何?つまんない……?どういうことだ?」
フィンのよく分からない思考に、リヒトはむにむにと頬をつまんで慌てて内容を問いただす。
「あ、あのね、僕小さいし、色気もないし、だからたまにそうやって無理矢理しないと、リヒトが興奮できないのかなって思ってたから」
フィンの予想外の発言に、リヒトは顔を青ざめさせフィンの肩を掴む。
「フィン!?そんなこと思ってずっと抱かれてたの……?」
リヒトはフィンの肩を揺らしながらムッとした表情でフィンを見る。
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