上 下
11 / 318
一年生・春の章

毒りんご?にご注意③★

しおりを挟む


「そんなに軽くないよー!」


 フィンはぷくっと頬を膨らませると、リヒトは可笑しそうに笑う。


「……っ」


 フィンの頭を撫でようと手を伸ばした瞬間、一瞬目眩がしたリヒト。
 心臓が強く脈打ち、体に熱が篭っていく感覚を覚えると、「きたか」と呟いた。
 リヒトの様子が変わったことに気づいたフィンは、心配そうに顔を覗き込む。


「リヒト……?」


 声をかけられたリヒトは、額に滲む汗を腕で拭くとニコッと笑みを浮かべた。


「ん、大丈夫。さて、お勉強の時間だよフィン」


 リヒトはフィンの頬を撫でながら、余裕の笑みを浮かべて口を開く。
 お勉強という単語に反応したフィンは、真剣な状況でリヒトを見つめ頷いた。


「俺が食べた果物は、リンゴの変異種“リビドリア”だ」

「りびどりあ?」


 フィンは首を傾げ、純粋な瞳でリヒトを見つめる。
 リヒトは次第に早まる鼓動に耐えながらも、少し息を上げながら話を続けた。



「リンゴと同じ木になる、偶然生まれた変異種のことだよ。リンゴに地の元素エレメントが大量に混じると、稀に変異を起こす貴重な果物と言われている。フィンはたまたま、それをもぎ取って俺にくれたんだ」



 ラッキーだね、とリヒトは息を上げながら笑うが、フィンは首を横に振って心配そうにリヒトを見つめる。



「リヒト、苦しそう……!」


 フィンはリヒトの頭を撫でると、不安げに瞳を揺らし自身の額をリヒトの額に当てた。


「……!」


 明らかにリヒトの体が熱くなっていることに気付いたフィンは、目を見開き慌てた表情を浮かべる。


「リヒト、熱い。熱が出ちゃう毒なの?僕どうしたら……」

「フィン」


 リヒトは肩で呼吸をしながら目を潤ませ、妖艶な笑みを浮かべながらフィンの耳元で口を開く。



「この毒は“媚薬効果”をもたらすんだ」


 リヒトは低く甘ったるい声でそう囁くと、フィンはようやくこの果物の正体が分かり一気に顔を赤らめた。


「び、びや……く」


 狼狽えるフィンに、リヒトはさらに続ける。
 二口齧っただけでこれか、と内心思いながらも、フィンの腰を撫でながら口を開く。


「強制的に発情する媚薬リンゴで、この国では毒物指定されている。でもあまりにも稀にしか出来ないものだから、研究されきってない。これは俺の身体を使った実験だ」


 リヒトは楽しそうに笑い、目を細めながらフィンを見上げる。


「……リヒトのばかばかばか、自分で実験なんてあぶないよ!」


 フィンは顔を赤くしたまま、汗を滲ませるリヒトの額を拭い、大きく動く肩を見つめ口を噤む。


「ははっ、俺に馬鹿なんて言える子、君しかいないね、可愛いフィン」



 リヒトはフィンの柔らかく滑らかな指を手に取ると、指先に舌を這わせ、舐めたり軽く吸ったりを繰り返す。
 フィンはゾクッと身体を震わせ、指先に絡むリヒトの舌を見ると目を潤ませた。


「り、りひと……」

「さて、治すにはどうしたらいいと思う……?賢いフィンならわかるかな」

「……」


 フィンは肩で大きく呼吸しながら問いかけるリヒトの言葉の意味をすぐに理解するも、緊張と恥ずかしさで言葉が出ず、リヒトから目をそらし俯く。
 その間にも、リビドリアの毒がリヒトの体内を回り、次第に表情が苦しそうに歪んでいった。


「……フィン、正直この後自分がどうなるかわからない。怖いかい?」


 リヒトは、自身の熱く硬くなったモノの上にフィンのお尻が来るよう、グッとフィンの腰を押してそれを擦り付けた。
 フィンはビクッと身体を震わせると、くるっと振り向き自身のお尻に当たるリヒトのモノを目で確認する。
 寝間着越しでもハッキリ分かるぐらいに盛り上がったモノがフィンのお尻の割れ目に当たっており、フィンは思わず腰を浮かせた。


「こ、こわくないよ」


 フィンは小さくそう言うと、真っ赤な顔でリヒトを見下ろし、ぎゅっとリヒトの寝間着を掴む。


「……腰、浮いてるよ?」


 リヒトはゴクっと唾を飲み、フィンの浮いた腰を少し乱暴に掴み押さえつけた。


「ぁうっ」


 フィンが小さく悲鳴をあげたため、リヒトは興奮した表情を浮かべる。
 今すぐにでも襲いかかりたい衝動がリヒトの脳内を侵食していくが、リヒトはフーッと強く息を吐きギリギリのところで理性を保った。
しおりを挟む
感想 153

あなたにおすすめの小説

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

婚約者に会いに行ったらば

龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。 そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。 ショックでその場を逃げ出したミシェルは―― 何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。 そこには何やら事件も絡んできて? 傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。

R指定はないけれど、なんでかゲームの攻略対象者になってしまったのだが(しかもBL)

黒崎由希
BL
   目覚めたら、姉にゴリ推しされたBLゲームの世界に転生してた。  しかも人気キャラの王子様って…どういうことっ? ✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻  …ええっと…  もう、アレです。 タイトル通りの内容ですので、ぬるっとご覧いただけましたら幸いです。m(_ _)m .

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

【BL】婚約破棄で『不能男』認定された公爵に憑依したから、やり返すことにした。~計画で元婚約者の相手を狙ったら溺愛された~

楠ノ木雫
BL
 俺が憑依したのは、容姿端麗で由緒正しい公爵家の当主だった。憑依する前日、婚約者に婚約破棄をされ『不能男認定』をされた、クズ公爵に。  これから俺がこの公爵として生きていくことになっしまったが、流石の俺も『不能男』にはキレたため、元婚約者に仕返しをする事を決意する。  計画のために、元婚約者の今の婚約者、第二皇子を狙うが……  ※以前作ったものを改稿しBL版にリメイクしました。  ※他のサイトにも投稿しています。

魔力なしの嫌われ者の俺が、なぜか冷徹王子に溺愛される

ぶんぐ
BL
社畜リーマンは、階段から落ちたと思ったら…なんと異世界に転移していた!みんな魔法が使える世界で、俺だけ全く魔法が使えず、おまけにみんなには避けられてしまう。それでも頑張るぞ!って思ってたら、なぜか冷徹王子から口説かれてるんだけど?── 嫌われ→愛され 不憫受け 美形×平凡 要素があります。 ※総愛され気味の描写が出てきますが、CPは1つだけです。

処理中です...