5 / 318
一年生・春の章
教科書いらずの神頭脳②
しおりを挟む「第一章、魔法応用学。魔法応用学とは、魔法基礎学をベースに、様々な魔法の応用を展開する学問である。普通、火を出すなら火の元素、水を出すなら水の元素、といったように、対応する元素と自身の魔力を結びつけて魔法陣を形成し発動させることがセオリーとなっている」
まるで教科書を音読しているかのように内容をスラスラと暗唱するフィンに、ルイは驚愕した。
「(本気か……!?)」
ルイは自分の教科書を確認しながら内容を聞き取り、一語一句間違えずに読んでいることに気付く。
フィンが完全に暗記していると分かった瞬間、ルイは身震いをした。
「(おいおい、ここまでとはな……)」
ルイはうっすらと笑みを浮かべてフィンを見る。フィンが教科書を見ていないことに気付いた周辺の生徒も、驚きの表情を浮かべていた。
「しかしながらこの第一章では、さらに複雑な魔法陣の形成についてを論じていく。まず初めに、火の上位魔法“炎魔法“についてだ。これは火の元素と風の元素を組み合わせることで成せる上位魔法になるが……」
フィンはその後も間違える事なく全て読み終わると、ふぅっと息を吐く。
ジャスパーは読み終えたフィンの方へようやく視線を戻すと、一瞬目がピクリと動いた。
「よろしい。座っていいぞ」
「はい」
フィンは椅子に座り安堵の表情を見せる。
「ところで、教科書を忘れたのか?」
ジャスパーの一言で、生徒全員がフィンの方を向き驚愕の表情を浮かべた。
「え、教科書無しで今のを読んだの?」
「すごすぎるって……」
「暗記したってこと?」
「嘘だろ」
「天才すぎる」
周囲はどよめきヒソヒソとフィンの方を向きながら話を始めたが、ジャスパーが手を叩き眉を顰める。
「誰が会話を許可した。私はフィン・ステラに質問をしている」
ジャスパーの一言で教室は一気に静かになり、フィンへの注目が集まったため、当の本人は怯えた表情を浮かべながら口を開く。
「はい……すみません、教科書を忘れました……」
「何を謝る必要がある。私は質問しただけだ。教科書が無くとも、成績が良ければなんら問題無い」
「は、はい……」
ジャスパーは眼鏡のブリッジ部分を中指で抑えると、真顔のまま口を開く。
「放課後職員室に来てもらえるか」
「えっ……はい」
フィンは怯えた顔で返事をし、そのままルイの方へ顔を向けた。
ルイはフィンが呼び出された理由を知る由もなく、首を傾げ苦笑する。フィンは放課後まで気が休まることなく過ごすことになり、初めての学校は緊張感でいっぱいとなった。
343
お気に入りに追加
4,774
あなたにおすすめの小説
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。
R指定はないけれど、なんでかゲームの攻略対象者になってしまったのだが(しかもBL)
黒崎由希
BL
目覚めたら、姉にゴリ推しされたBLゲームの世界に転生してた。
しかも人気キャラの王子様って…どういうことっ?
✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻
…ええっと…
もう、アレです。 タイトル通りの内容ですので、ぬるっとご覧いただけましたら幸いです。m(_ _)m
.
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
【BL】婚約破棄で『不能男』認定された公爵に憑依したから、やり返すことにした。~計画で元婚約者の相手を狙ったら溺愛された~
楠ノ木雫
BL
俺が憑依したのは、容姿端麗で由緒正しい公爵家の当主だった。憑依する前日、婚約者に婚約破棄をされ『不能男認定』をされた、クズ公爵に。
これから俺がこの公爵として生きていくことになっしまったが、流石の俺も『不能男』にはキレたため、元婚約者に仕返しをする事を決意する。
計画のために、元婚約者の今の婚約者、第二皇子を狙うが……
※以前作ったものを改稿しBL版にリメイクしました。
※他のサイトにも投稿しています。
魔力なしの嫌われ者の俺が、なぜか冷徹王子に溺愛される
ぶんぐ
BL
社畜リーマンは、階段から落ちたと思ったら…なんと異世界に転移していた!みんな魔法が使える世界で、俺だけ全く魔法が使えず、おまけにみんなには避けられてしまう。それでも頑張るぞ!って思ってたら、なぜか冷徹王子から口説かれてるんだけど?──
嫌われ→愛され 不憫受け 美形×平凡 要素があります。
※総愛され気味の描写が出てきますが、CPは1つだけです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる