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捨てられないもの②
しおりを挟む「本当にお前は、こんな時ぐらい怒ってくれよ……怒るべきだ、フィン」
カインはフィンを目の前にすると余計に罪悪感が押し寄せ、片膝を立て腕を置き、その腕に目を押し当てて溢れる涙を隠した。
「俺はお前に酷いことしたんだ。お前は俺を許さなくて良いし、恨まれて当然だと思ってる。だから……」
「カ、カインまって……」
フィンは目を潤ませながら、カインの顔を覗き込んで言葉を遮る。
「僕は、確かに最初はショックだったんだ。それに、悲しかったと思う。でもなんでだろ、僕はカインを恨めない……恨めないよ」
フィンは涙を流すカインを見て、自分が泣かせてしまっているのかと思い大粒の涙を流しながらカインに訴えかけた。
カインはゆっくりと顔を上げ、ぽろぽろと流れるフィンの涙を優しく拭う。
「……俺はそんなお前の甘さに付け込んだんだ。今更遅いけど、本当に反省してる。こんな裏切り、最低だ。本当に最低だよ。なぁ、恨んでくれフィン。頼む。俺を一生許すな」
フィンはカインの必死な言葉に鼻の奥が熱くなり、声を出しながら泣きじゃくった。
「そんなこと言わないで、カイン……僕はちゃんと入学できたんだよ、カインはここで怒られたんでしょう?十分罰を受けたよ、僕はカインを恨まない!」
フィンは首を横に振り、駄々をこねる子供のようにカインの願いを拒否する。
「なんでだよ、意味分かんねえ!普通は怒るんだよこういう時!」
「だったら僕は普通じゃなくていいよ!」
「なっ……」
カインは言葉に詰まり、リラ譲りの眠そうな二重の目でフィンを見ると、フィンは涙を堪えながらカインを見返した。
「優しすぎるんだよお前……昔っからそうだ、俺が悪いのにすぐ謝ったり、小さい時だってオヤツを俺に多くくれたりさぁ!母さんに朝から晩まで一生こき使われても文句の一つも言わねぇし。何でそんないつも優しくいられるんだよ、馬鹿じゃないのか……」
まだフィンの両親がいた頃、よく一緒に遊んでいたことを思い出したカイン。
「俺はっ……お前に何もしてこなかった、……優しくなんてしてなかったのに、これなら酷いやつだって思ってくれた方がマシだ」
フィンは泣きながら笑みを見せる。
「カイン」
フィンが名前を呼ぶと、カインは返事をすること無くフィンを見る。
「カインは優しいよ。……ほら、この本、僕の宝物だよ。あとさ、これも!覚えてる?」
フィンは灰色の魔女を鞄から取り出し、ニコッと笑みを見せて笑うと、さらに鞄から煌めく石を取り出した。
「……」
カインは暫くそれを見つめると、「あ!」と大きい声を出す。
「おまっ……そんなガラクタまだ持ってたのかよ!!4歳の時に拾ったやつ!!捨てろよそんなん!アホ!」
カインは石を見ると顔を赤くし、フィンに大声をあげてわなわなと震えた。
「ちょっガラクタじゃないよ!これは魔石に雪が降り続いて出来た宝石だよ!こんなに綺麗なのに、捨てられないよ!」
フィンはムキになりながらカインに詰め寄る。
「だからガラクタだって。それはな、死んだ魔石に雪の魔力がちょっと宿って綺麗になっただけのガラクタの石!そんなん何に使うんだよ!」
まるで昔に戻ったように会話をし始める二人に、エリオットとリヒトは互いに目を合わせた。
「俺、誰かの涙見ると泣きたくなるんだよなー」
エリオットはリヒトにボソッと小声で言うと、リヒトは溜息を吐く。
「お前は昔から感受性が豊かすぎる」
すっかり昔の関係に戻り会話をし始めたフィンとカインを横目に、リラは気まずそうに表情を曇らせていた。
フィンはふとリラの方を向くと、近付いて口を開く。
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