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シュヴァリエ家の双子①

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「ちっちゃな弟達を本邸に置いてきちゃったのよね~!今頃私のこと心配で、泣いてるかも!ね、本邸に遊びに来て?フィンちゃん」

「へっ!?」


 エヴァンジェリンはフィンの手を掴むと、ウキウキした様子で扉に向かう。
 しかし、アネモネは急いで回り込んで手を広げ、相変わらずの真顔で通せんぼをした。


「いけません、エヴァンジェリン様。ご主人様が、フィン様を外に出さないように、と……」


 エヴァンジェリンはアネモネの話を聞くと、綺麗な顔を少し引き攣らせる。


「え、なにそれ。軟禁じゃないかしら?どれだけ心配性なの~!?引くわぁ」


 エヴァンジェリンはフィンに同情の視線を送る。


「な、軟禁……なんですかね?」


 フィンは自分の置かれている状況が分からず、首を傾げる。


「うぅーん、まぁそうね……リヒトはフィンちゃんが可愛くて可愛くて仕方がないから、何かあってからでは遅いと思って家から出ないでと言ってるのよね。……あ、そうだ」


 エヴァンジェリンは思い付いたように指を立てると、アネモネに話を持ちかけた。


「別に外じゃないならいいんでしょう?本邸はこの屋敷と繋がってるし、1つの家として考えたら?ほら、この扉を開きっぱなしにして、同じ家感覚で。用は、フィンちゃんが危険じゃなければいいんだしぃ」


 エヴァンジェリンは玄関の扉を開けてストッパーを付けると、フィンの目には本邸に繋がる廊下が映る。


「アネモネ、いいと思う?」


 フィンは、完全に遊びに行きたいという表情でアネモネを見上げていた。


「……“外”の概念についてはご主人様から説明は受けてませんでした。正直言って、この状況だと判断しにくいです。しかしながら、私の目線では、この目の前の光景は外ではありません」



 アネモネはじとーっと本邸へ続く廊下を眺め、エヴァンジェリンに視線を向ける。



「家にいるのと一緒!ほら、行きましょう!アネモネ、貴方も」


 エヴァンジェリンの強い押しに、アネモネは言葉が出ずフィンを見る。
 フィンは爪先立ちをして背伸びし、こそっとアネモネに耳打ちをした。


「行こうかアネモネ。リヒトがもし怒ったら、僕がごめんなさいするよ」


 フィンはにこっと笑みを浮かべる。


「……フィン様がそう言うのなら、着いていきます。それにエヴァンジェリン様はご主人様のお姉様ですから、他人よりよっぽど信頼できます」


 アネモネの言葉に、フィンは意を決して本邸のエリアに足を踏み入れた。


「そうこなっくっちゃ!」


 エヴァンジェリンは嬉しそうにフィンとアネモネを迎え入れ、楽しそうに先頭を歩く。


「「おねーさま?」」


 すると、小さく甘ったるい可愛らしい声が聞こえ、小さいハイエルフの双子の男の子が廊下に現れた。
 エヴァンジェリンは笑顔でその双子に近付き抱き締める。


「シエル、ノエル、お姉様が帰ってきましたよぉ~」


 猫撫で声で双子に話しかけるエヴァンジェリン。
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