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大魔法師たる所以⑤
しおりを挟む「お前、派手にやったな!」
城に戻ったリヒトを出迎えたアレクサンダーは、大声で笑いながらリヒトの肩を叩く。他の護衛はリヒトを畏怖の感情を交えた目で見ていた。
「何がだ?」
リヒトは惚けた顔でアレクサンダーを見る。
「城からバカデカい古代魔法が丸見えだったんだよ!あんなの使えるなんて聞いてないぞ、化け物か?この国であんな古代魔法を再現する奴なんて、お前しかいないぞ」
アレクサンダーは、興奮した面持ちで捲し立てるが、リヒトは表情を崩さない。
「なんだ、折角倒したのに化け物呼ばわりか」
「俺にはお前が化け物に見えるよ、全く。とりあえず、サンキューな。……で、どうだった」
アレクサンダーの問いかけに、リヒトはその場で答えずこそっと耳打ちをする。
するとアレクサンダーは顔色を変え、苛ついた表情でリヒトを見た。
「間違い無いのか?」
「アカシックレコードで見た」
「悪い予感はこうも当たる。全く、仕事が増えるな」
「今回みたいな仕事、頻繁に回してくれるなよ(早く帰りたい)」
リヒトはそう言って軽く笑い、アレクサンダーに背を向けた。
「もー帰るのか?ゆっくりしてけよ」
アレクサンダーは駄々をこねる少年のような顔でリヒトの腕を掴むが、リヒトはそのまま前進しアレクサンダーが引き摺られる形になる。
王子と大魔法師のじゃれ合いに、周囲は普段とのギャップに苦しんだ。
「(王子を引きずれる者は、シュヴァリエ公爵しかいない……)」
リヒトは溜息を吐き振り返り、アレクサンダーの額にデコピンをする。
「いで」
「俺は忙しいんだよ、またな」
リヒトはそう言って背を向けたまま手を振ると、アレクサンダーは口を尖らせながらもそれを見送った。
しかし、思い出したように口を開く。
「あ、噂で聞いたんだけど!お前可愛いエルフとデートしてたってマジ?(ま、どうせまた根も葉もない噂だろーけどな)」
アレクサンダーの質問に、周囲はどよめきが起こる。
キースとミラは顔を見合わせ、リヒトがどう答えるかドキドキしていた。
「?あぁ、間違いない。俺の恋人だ。だから早く帰らせろ」
「なっ!?!?!?」
リヒトは隠す気もなく振り返ってそう言うと、周囲は誰もが目を見開き、驚きを隠せない様子だった。
リヒトは気にせず、そのまま足早に城を後にする。
「マジかよー!!!!!!」
残されたアレクサンダーは、恋人が出来たと聞いて大声で叫びリヒトを追いかけた。しかし既にリヒトは箒で飛び立った後だったため、アレクサンダーは愕然とする。
「今度紹介しろよなー!!!!!」
アレクサンダーは飛んでいくリヒトにありたっけの声でそう叫んだ。
「(…………チョコレートマカロンを買いに行くか)」
リヒトは聞こえないフリをして全速力で空を飛び、キースとミルを見て口を開く。
「今日はもう帰れ。仕事は終わりだ、ご苦労だった」
キースとミルは、リヒトにそう言われるとぴたっと空中で静止する。
「「お疲れ様でした」」
2人は挨拶をするも、リヒトの背は既に小さくなり見えなくなっていた。
「「早!」」
キースとミルはゆっくりと空を飛行しながら雑談をする。
「今日、俺ら何もしてないよな」
「大魔法師って、護衛いるんですかね……」
自分達の存在意義を再確認する2人。
「いや、そんなことより、さっきのあれビビったよな」
「シュヴァリエ公爵が恋人って……あの難攻不落の壁を崩したエルフ!!気になりますね!!!」
「シュヴァリエ公爵は恋愛とは無縁と思っていたが……見てみたいな、相手のエルフを」
「きっとすんごぉーく可愛いんでしょうね。どっかの貴族の方ですかねっ」
「そりゃあそうだろう。貴族じゃなきゃお近付きになんてなれないし」
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一方フィンは、噂をされたからか、くしゅん!と大きなクシャミをする。
「?」
鼻をゴシゴシと擦り首を傾げたフィンに、エヴァンジェリンが可笑しそうに笑みを浮かべた。
「誰かがフィンちゃんのこと噂してるのね」
「へ!?」
「ふふ、じょーだんよ。それよりフィンちゃん、弟に会ってみない?」
「え!?リヒトの弟、ですか?」
「そう!6才の双子ちゃんなの。きっとあの子達もフィンちゃんを気にいるわ!」
エヴァンジェリンはフィンの手を掴み、とびっきりの笑顔を向けた。
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