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シュヴァリエ家の言い伝え③
しおりを挟むシュヴァリエ家は銀髪の一族で、希少なハイエルフの一族。ハイエルフは特殊な能力を持ち合わせる事が多いが、その代わり制約も多かった。
シュヴァリエ家3代目当主・イザックは、強力な力を持っており、アカシックレコードを発現させた最初のシュヴァリエ家。また、アーカイブを作りミスティルティン魔法図書館を運用し始めたハイエルフで、才覚あふれる最強の当主と言われていた。
大貴族にのし上がり、今の地位を確保したのもイザックの功績だったが、イザックは他人を愛すことが出来ない性格で、それは本人も不思議でならなかった。
当時有名だった老婆姿の占い師“レイリー”は、そんなイザックを占う。
『なるほどね。これは呪いみたいなもんじゃ。愛すことが出来ないわけではない、魂レベルで惹かれあう者しか、愛すことができない体質になってるんだ。その強力なアカシックレコードとかいう力がそうさせてるのかもねぇ』
その言葉を聞いたイザックは、安心したと言ってその場を離れたと言う。強大な力は、未知の恩恵と制約を受ける。
イザックはある程度覚悟していた。
理由が分かり吹っ切れたイザックは、それならば、と強力な魔法を使って「運命の恋人」が現れれば分かるような仕組みを作る事にした。
任務もあり、世界各国を旅して運命の恋人を探す事は難しい。それならば、運命の恋人が自分の目の前に現れるような細工を施そうと。
それが、このリヒトが住むシュヴァリエ家別邸が出来る発端となる。
イザックはこの別邸を、まず自分以外の何者も入れないような仕組みにするために、自分の血を少しずつ魔石に含ませて家の至る所に特殊な魔法を施した。
次に、契約の魔法を応用させ、魂と部屋の意思を繋げる魔法を編み出すと、深層意識として魂が拒否しない者が部屋に入れる仕組みにする。この仕組みは完成までにかなりの時間を消費した。
こうして、イザックは、自分が求め、相手が自分を求める時に扉が開かれるような仕組みを完成させたのであった。
愛すことができる相手を見つけるのは困難だが、いつか魂が惹かれあうような存在が、運命的にミスティルティン魔法図書館を訪れることをイザックは待ち続ける。
すると、ミスティルティン魔法図書館に訪れ、この家に迷い込んだと言う若いエルフがイザックの目の前に現れた。
『あの……貴方は?ここは何処でしょうか?』
『!』
イザックは、そのエルフを一目見ただけで、言い表せない知らない感情が芽生える。富や名誉を得てもなお満たされなかった心を、一瞬で奪う存在が目の前に現れたからだ。
それは相手も同じで、一瞬にしてイザックに心を許していた。
『私はイザック・シュヴァリエ、ここは私の家だ。可愛いエルフよ。君は私の運命の恋人だ』
これがシュヴァリエ家で言い伝えとして語り継がれるストーリーだ、とエヴァンジェリンが話終えると、フィンは感動して目を輝かせた。
「す、すごい!そんな昔話があったなんて!」
「大昔の話だけど、事実みたい。イザックの日記もアーカイブに残ってるし、その時に使った魔法のやり方も記載があったし」
エヴァンジェリンはそう言ってタルトを頬張る。
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