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シュヴァリエ家の言い伝え②
しおりを挟む「その……リヒトからはそう言われてます!」
意を決したように大きな声でそう叫んだフィン。自分で言うと恥ずかしいため、勢いを付けたのだが、結局どう転んでも恥ずかしいのかフィンは顔を真っ赤にして俯く。
「うそ……本当なの……ホントのホントにぃ!?(リヒトって呼んでる時点で確定~!!)」
「は、はい」
エヴァンジェリンは、フィンが肯定すると、ぷるぷる手を震わせながら俯く。
「(や、やっぱ僕が貴族の恋人なんておかしい……よね)」
フィンはエヴァンジェリンは怒っているのかと思い、不安な表情を浮かべる。
「すごいじゃないっ……!!!!」
しかし、その想像は裏切られ、エヴァンジェリンは笑顔でフィンの横に行き、思い切り抱きしめた。大きな胸に挟まれ、フィンは呼吸が難しくなりパタパタと腕を動かす。
するとアネモネが後ろからフィンを引っ張り出したため、フィンはぷはっと息を吸った。
「エヴァンジェリン様、フィン様が死んでしまいます」
アネモネは淡々とそう伝えると、エヴァンジェリンが口に手を当て申し訳なさそうにフィンを見る。
「あ、あらごめんなさいフィンちゃん、私あまりにも嬉しくて……!シュヴァリエ家の言い伝えが本当だったって思うと、何だか感動……」
エヴァンジェリンは目に涙を溜めながら、本当に感動している様子でフィンの手を握る。
「あ、あの……僕あんまりよく分かってなくて」
フィンはそう伝えると、エヴァンジェリンは目を点にさせる。
「え?リヒトからちゃんと説明されてないの?」
「は、はい」
「あのバカ……本当に言葉足らずなんだから……」
エヴァンジェリンは苛ついた表情を浮かべ、ぶつぶつと何か呟いている。
「よろしければ、聞かせてもらえませんか?」
フィンはずいっとエヴァンジェリンに近付き、純粋な眼で見上げる。リヒトについてもっと知りたいと心から思っているフィンは、初恋の相手を探るような表情だった。
「(この子……リヒトのこと、ちゃーんと好きなのね。よかった)」
それを見たエヴァンジェリンは、まるで可愛い物を見つけた時のようなトキメキを感じ、デレッと表情を緩ませた。
「もちろん、良いわよ。そうね……何から説明しようかしら」
エヴァンジェリンがうーんと悩んでいる素振りを見せると、アネモネは首を傾げる。
「イザック様のお話をすれば、必然的に伝わるかと」
アネモネの提案に、エヴァンジェリンは「そうね」と指を立てて頷く。それからはエヴァンジェリンは丁寧にフィンにシュヴァリエ家の言い伝えを語り出した。
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