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溺愛の兆し②★

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 アサヒはナツメを抱きかかえると、無言で寝室の扉を開いて布団の上に思い切り押し倒す。


「わっ!?」


 ナツメはぼふっと肉厚な布団の上に沈みながら驚きを示し、アサヒはナツメの上に覆いかぶさるようにして手首を押さえ付けると、澄んだ瞳でナツメを見つめた。
 やがてその瞳は熱が籠り、ナツメを離すものかと言っているような強烈な愛情が伺え、ナツメはその勢いに圧倒され思わず息を飲む。


「っ……」


 ナツメはこの世界の者ではない。

 その事実だけで、アサヒはどこかで気持ちを無意識に抑えつけていることがあった。いずれはいなくなってしまう可能性があるのなら、いっそのこと愛さない方が傷付かないはずなのは確か。
 だが、アサヒはそれでもナツメを愛せずにはいられず、ナツメもまたそうだった。
 アサヒは無意識に抑えつけていた執着と溺愛の感情を器いっぱいに溢れさせ、ナツメが揺らすことで零していく。


「本気か、さっきの言葉」


 アサヒは期待した声でそう問いかけつつ、答えを待たずしてナツメの手首を押さえつけたまま耳に優しく口付けし首筋を舐め上げた。


「っ……!?」


 ナツメはゾワッと背筋を震わせ、その甘い感覚に痺れながら顔を赤らめアサヒから目を背ける。


「……急に押し倒して、変なことすんなよばーかっ……(何でオレあんな恥ずかしいこと言っちゃったんだー!?)」


 ナツメは目を細め泣きそうな真っ赤な顔になると、少し小さな声でそう言う。
 ナツメが話をはぐらかすと、アサヒはむにっと唇を尖らせるようにナツメの顔を掴んだ。


「はぐらかしやがって、さっきの素直さはどこいった?」

「うるひゃい……」


 顔を掴まれているナツメは必死に言い返す。


「……本気ってことでいいんだな?」


 アサヒの真剣な眼差しに、ナツメは動揺した表情をしつつ、やがて顔を赤らめたまま少し頷く。


「そうか。そんなに俺が好きか、ナツメ」


 アサヒは満足そうにナツメを見下ろし、無邪気な笑みを浮かべる。その表情はまるで初恋が実った少年のようなあどけなさがあり、ナツメは思わずみとれていた。


「(コイツって……こんなかわいい顔で笑ったりするんだな)」


 ナツメはアサヒの笑顔に胸を高鳴らせながらそう考え、ピタッとアサヒの頬に右手を乗せてすりすりと動物を愛でるように撫でる。
 アサヒはその手に自分の手を重ねた。


「カゲロウは普段ぼーっとしてて、あんな風に結婚を迫るような男じゃなかったはずだ。そんな男を焚き付けてるお前が心配で仕方がない」


 アサヒはナツメの澄んだ淡い夜明けのような瞳をじっと見つめ、低い声色でそう囁く。


「アイツを魅了したのはこの口か……?」


 アサヒはナツメの唇を指でなぞる。


「それともこの不思議な色の煌めく瞳か?」


 続いて、瞼を優しく撫でる。


「……いや、此処か?」


 最後に、ナツメの心臓あたりを人差し指でトントンと叩く。


「……?」


 ナツメは最後の問いの意味を汲み取れず、小さく首を傾げた。


「無鉄砲に突っ走って目が離せない、危なかっしいクソガキって意味だ」

「なっ!?なんだよそれ!」

「お前この前、下位が庭で掃除している時に襲ってきた盗賊に突っ込んで足蹴りしたらしいな」

「……な、何で知ってんの」

「妖力もねぇくせに、感情だけで動くのは悪い癖だぞ。能力だって狙った通り使えないだろ、まだ」


 アサヒはナツメの眉間を指でぐりぐり押して不服そうな表情を浮かべると。


「んなこと言われたってぇ!あんとき上位がいなかったし、センリも出かけてたんだって!」


 ナツメは言い訳のように狼狽えながらそう言い放つと、アサヒはふぅっと息を吐いた。


「なんにせよ、カゲロウみたいな奴ほど諦めが悪いんだからな、あまり構うんじゃねえぞ」


 アサヒは念を押すように額合わせをし、ナツメの服を自然に脱がせていく。


「嫉妬してんの、また」


 そのあまりにも自然な所作に、ナツメは抵抗することもせずにあっという間に上半身がはだけた姿になった。


「あのなぁ、目の前でお前が求婚されてるのを見て、俺が抑えられると思ってるのか。お前のことを今すぐ犯さないと気がすまねぇ」


 明らかに執着じみた発情をするアサヒに、ナツメは困惑しつつも抵抗する気にはなれずそのまま受け入れる姿勢になり、自分の目を腕で覆って顔を赤らめた。


「……止めねぇと、ほんとに犯すぞ?」


 アサヒが首筋に軽く歯を立てると、ナツメはそのたびにぴくんと反応を示した。


「ぁっ、も、っ……すきにしていーけど、かむのは、やめてっ」


 ナツメは身震いしながら弱々しく抵抗する。
 ナツメが噛まれることに弱いと気づいているアサヒは、うっすら笑みを浮かべて耳たぶや指を少し痛い程度に噛むと、ナツメはブワっと涙を溜めながら徐々に息を荒くさせた。


「ぁーっ……やだってば、んんーっ」

 ナツメは少し蕩けた瞳を露わにすると、弱々しい声でそう言って歯をくいしばった。


「大丈夫だ。明日は早いから、今日は一回だけにしてやる。……ゆっくりじっくり、な」

「っ……ひぁっ!!」


 ナツメの両方の乳首を親指でぐりぐり押しつぶすと、ナツメは目を見開き仰け反った体勢で小さく悲鳴をあげる。
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