48 / 113
鼻をちょんちょん①
しおりを挟むとある日、アサヒから提供された行燈袴を着てうろちょろしていたナツメは、外廊下でクレナイとばったり出くわす。
「おやナツメ、行燈袴じゃないか。似合うさね」
別の日、今度はシキに出くわす。
「ナツメくん、甚平をもらったのか。動きやすそうで良いね」
そしてさらに別の日、今度はシキとクレナイに出くわすと、二人は目を丸くした。
「え、どうした?」
男性用の着物を着て羽織を肩にかけるナツメを二人がじっと見つめていたため、ナツメは困った表情を浮かべ首を傾げる。
ナツメは不可解そうに首を傾げて問いかけると、クレナイが何かに気付いたように笑みを浮かべて口を開いた。
「ナツメ、もしかして最近着ているものは全部アサヒが用意したものかい?」
「うん、そうだけど……」
クレナイの問いかけに、ナツメはコクリと頷いた。
「なるほど、どーりで色合いがアサヒの隊服に似ていると思ったよ」
シキが人差し指を立てて優しい笑みを浮かべながらそう言うと、ナツメは首を傾げる。
思い返すと、アサヒの用意した服は全て白と濃紺色の配色が多く、アサヒの隊服と似た配色だったことに今更ながら気付くナツメは、みるみるうちに顔が赤くなっていった。
「アサヒは案外可愛らしいことをするさね。お揃いだなんて若い若い」
クレナイは扇子で口元を隠しているが、ニヤついていることは一目瞭然。その横でシキも小さく頷き微笑ましそうに笑っていたため、ナツメは更に顔を赤くした。
「た、たまたまだろこんなの!アイツは余ってたって言ってたし!」
ナツメがそう言った瞬間、背後から偶然アサヒが現れる。
任務から帰ってきたところなのか、白の単に濃紺の馬乗り袴姿で、羽織を肩に掛けながらこちらに近づいて来た。
「アサヒ、任務お疲れ様」
シキは朗らかな笑顔でアサヒに手を振ると、アサヒは欠伸をしながら反応を示す。
「おう。お前ら何してんだ?こんな廊下で喋ってないで、団欒室にでも行けば良いだろ」
アサヒはそう言って背後からナツメの頭をくしゃくしゃと撫でた後、そのまま自室へ戻るため三人を追い越し奥へと消えていく。
ナツメは顔を赤くし俯いたまま何も言わないため、シキとクレナイはにこにこと笑みを浮かべていた。
「頭を撫でていったさね」
「熱いねぇ」
二人はほっこりとした笑みを浮かべナツメを見守るように眺めていたが、ナツメは恥ずかしさのあまり、逃げ出すようにして廊下を勢いよく走っていった。
「(くそー!!からかわれたー!!)」
ナツメは顔を赤くしがむしゃらにアサヒを追いかけると、アサヒの背中が見えたため、飛び蹴りをしようと勢いよく飛ぶ。
「!?」
アサヒはその気配に気付いてすぐさま振り返り、勢いを殺してナツメの足首を掴むと片手で持ち上げた。
「てめぇ、急に何してんだ」
アサヒは眉を顰め、ぐいーっと上に手をあげナツメを持ち上げる。
ナツメはぶらぶらと宙に浮き、だらんと腕を垂らした。
「…………」
ナツメはぶらーんとぶら下がったまま、プイッとそっぽを向くように顔を背ける。
「……何拗ねてんだ?」
アサヒはそのままナツメを肩に担ぎ片手で支えながら移動する。
「おろせー!」
ナツメはジタバタと足を動かしながらそう言うも、アサヒは平気な顔でそれを押さえつけながら自室に入り、暴れるナツメをそのまま寝室の布団にポイっと投げた。
「おら、おろしてやったぞ」
アサヒは鼻で笑いながら首領羽織を衣紋掛けにかけて、首を回して一息つく。
投げられたナツメは、枕に顔を埋めるようにしてそのまま動かなかった。
「……で、なんだ?文句あんなら言え」
アサヒはナツメを仰向けに転がして鼻をちょんちょんっと触り、覆い被さるようにして顔を近付ける。
「違う色の服もよこせ!白と紺ばっかりじゃなくてー!」
ナツメはぷくっと頬を膨らませて訴える。
「よこせだとコラ。あげたやつで我慢しろよ、何が問題なんだ」
アサヒは顔を引き攣らせてナツメの鼻を摘み、ナツメのお願いを退けた。
「……んんー」
鼻を摘まれ息が出来ないナツメは、口をパカっと開く。その隙にアサヒはナツメの
咥内に舌を滑らせて、そのままナツメの舌を絡め取った。
「んっ!?んんっ……」
いつの間にか手首を押さえつけられたナツメは、咥内をされるがまま蹂躙され次第に目を蕩けさせる。
舌を吸われたり甘噛みをされるたび、ぴくんっと体を反応させるナツメ。アサヒは唇を離してうっすらと笑みを浮かべた。
「何が気にくわねぇ?俺の隊服と同じような色だからか?」
アサヒはにっと口端を上げて意地悪な笑みを浮かべると、ナツメは目を見開く。
「わざとやったんだな!」
「あたりめーだろ」
「からかわれたじゃんかよー!」
ナツメはアサヒの襟元を掴んで拗ねた表情を浮かべるも、アサヒは反省する素振りを見せずナツメを抱き上げて自身の胡座の上に座らせる。
「……お前が、俺と似たような色の服を着て後ろからついてくるのが、妙に可愛い」
突然理由を述べ始めたアサヒに、ナツメは怒る気も失せ口をあんぐりと開けた。
「っは、はあ?」
顔を真っ赤にするナツメに、アサヒは追い討ちをかけるように顔を近付けて牙を見せながら口を開く。
「だーから、可愛いから文句言わねーで着てろっつーの」
アサヒはナツメの鼻を指でちょんちょんと撫でると、ナツメはぴたっと大人しくなりアサヒの髪をぎゅっと掴む。
「(だからこの鼻ちょんちょんなに?)」
3
お気に入りに追加
789
あなたにおすすめの小説

転生したら弟がブラコン重傷者でした!!!
Lynne
BL
俺の名前は佐々木塁、元高校生だ。俺は、ある日学校に行く途中、トラックに轢かれて死んでしまった...。
pixivの方でも、作品投稿始めました!
名前やアイコンは変わりません
主にアルファポリスで投稿するため、更新はアルファポリスのほうが早いと思います!
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)

異世界転移して戻ってきたけど、疲れきったおじさんになっちゃった元勇者が子連れで再召喚されたら総愛されになってしまった件について
鳥海あおい
BL
勇者「クロエ」として異世界転移し、任を終えて普通に暮らしていた黒江光太郎はバツイチ、ブラック企業勤務、父子家庭。育児に家事疲れで、すっかり疲れ切ったおじさんになっていた。
だがそんなある日息子の律と再召喚される。
勇者として!ではなく、異世界でかつて魔王を倒したクロエはなんとアイドル的存在になっていたうえに、パーティーのメンバーから総愛されの逆ハーレム状態になってしまう。


転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
良縁全部ブチ壊してくる鬼武者vs俺
青野イワシ
BL
《あらすじ》昔々ある寒村に暮らす百姓の長治郎は、成り行きで鬼を助けてしまう。その後鬼と友人関係になったはずだったが、どうも鬼はそう思っていなかったらしい。
鬼は長治郎が得るであろう良縁に繋がる“赤い糸”が結ばれるのを全力で邪魔し、長治郎を“娶る”と言い出した。
長治郎は無事祝言をあげることが出来るのか!?
という感じのガチムチ鬼武者終着系人外×ノンケ百姓の話です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる