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舌先離れても★
しおりを挟む「オレもお前に忠誠を誓ってやろーか?」
ナツメはそう言って冗談混じりに笑いながら手を伸ばすと、アサヒは真顔でその手を取り自身の顔の方へ持っていった。
ナツメは突然のアサヒの行動に狼狽えた表情を浮かべる。
「……アサヒ?」
ナツメは顔を赤くし慌てて手を引っ込めようとするが、アサヒの力には敵わずされるがまま手を引っ張られ、やがてその手にアサヒの唇が優しく滑る。
「へ」
アサヒの形の良い柔らかな唇の感触に、ぞくっと体を震わせるナツメ。
「……忠誠なんていらねぇ。別のものをよこせ」
「別のものってなに?」
「…………ここ。いつか俺に全部くれ」
アサヒはそう言ってナツメの心臓あたりを指で軽く突きながら、奥二重の美しい瞳でナツメを見つめる。
ナツメは一瞬考えた後、困った顔を浮かべた。
「オレの心臓なんて食べたいの?寿命がきたら好きにしたらいーじゃん。
オレが生きる時間なんて、お前らにとっちゃたいした年数じゃねーんだろ?そんぐらい待てよなー」
ナツメは少し引いた目でアサヒを見上げると、アサヒは舌打ちをしナツメの頭を叩く。
「いって、なんで叩くんだよ!ダメなんて言ってねーのに!!!」
ナツメは頭を抑えてぎゃんぎゃんと抵抗し不機嫌そうに訴えるも、アサヒはそれ以上に苛ついた表情でナツメを見下ろす。
「るせぇガキ。てめーの心臓なんて誰が食うか!勘違いもほどほどにしろ鈍感」
「なっ……じゃーさっきのどーゆー意味?分かるように言えよなー」
ナツメはアサヒの髪を引っ張って顔を引き寄せると、むくれた表情で睨み付ける。
「……っ、」
アサヒは急に顔を赤くし言葉に詰まった様子で目を泳がせる。いざ口に出して言おうとすると恥ずかしいのか、アサヒは顔を引き攣らせてナツメから目を逸らした。
「何のために口がついてんだよ」
ナツメはアサヒの唇をぷにぷにと指で押しながらさらに問い詰めると、アサヒは口をパカっと開けてナツメの指を軽く噛む。
「わっ」
「指じゃなくて唇で触れ」
アサヒはそう言ってナツメを壁際に追いやると、壁に手をつき逃げ場を無くさせてからそのままキスをする。
「んっ」
アサヒは次第に角度を変えながら舌を入れ始め、最初は戸惑いながらもぎこちなく受け入れたナツメも、次第に目を蕩けさせて口端から唾液を零した。
一瞬口が離れた瞬間、ナツメはアサヒが舌を吸いやすいように、自然とぺろっと舌を出して潤んだ目で見上げる。
「おい、そんな誘い方どこで覚えやがった……」
ナツメの行動に目を細め心臓を高鳴らせたアサヒは、動揺したように問いかける。
「お前いっつもべろ吸うじゃん……こうしたほうがいいかなって思って」
ナツメは顔を真っ赤にさせ、伏し目がちで視線を泳がせる。
「ごめ、変だった……?」
そう言って顔を上げたナツメに、アサヒは満足そうに目を細めすりすりと頬を指で撫でた。
「……自分から差し出すなんて良い心がけだな。もっかいやってみろ、変じゃねぇから」
ナツメはアサヒの言われた通りにもう一度舌を出すと、アサヒはその扇情的な表情と濡れた淡い桃色の舌に興奮を示し、「可愛いな」と小さく言ってむしゃぶりつくように舌を舐めながら優しく吸い始める。
「んんっ……ん、んっ……」
耳のズキズキとした痛みが、アサヒの甘ったるい口付けによって麻痺していくのを感じるナツメ。
二人はしばらく口付けを交わし、やがてアサヒはゆっくりと唇を離した。
「はっ……はっ、」
ナツメは、舌先が離れるまで続いた甘い感覚に囚われたまま、切なげにアサヒを見上げた。まるで“もっとして欲しい”と言っているような表情をするナツメに、アサヒは思わずナツメの肩に顔を埋めて悶えた。
「っ……おい、そんな目で見るな。誘ってんのか」
「っ……ごめん、そんなつもりじゃ」
ナツメは顔を真っ赤にしながら、小さく消え入りそうな声で謝罪をして俯く。アサヒは耳をピクッと動かし、顔を上げて学ランのボタンを器用に一つ一つ外し始めた。
「……ほら、早くこれ脱げ」
「えっ!?」
ナツメは狼狽えた表情を浮かべると、アサヒが少し顔を赤くし頬を摘む。
「あのなぁ、なに勘違いしてんだよ。こんな変な服、とっとと着替えろって意味だ」
「あ、ああなんだ、びっくりした……まだ夜じゃねーのに盛ってんのかと思った」
「お前な、俺をなんだと思ってんだ。さすがに理性ぐらいはある」
「えー……そうかな」
二回も朝まで性行為を続けたアサヒに、ナツメは疑いの目を向けて唇を尖らせた。
アサヒは気まずそうに目を閉じると話を逸らすように口を開く。
「……いいから早く着替えろっつーの」
「うん」
ナツメはアサヒに見られながら学ランをするっと脱ぐと、中に着ているYシャツのボタンをぷちぷちと外していく。
「随分と釦が多い服だな。着づらくないのか」
「?別に、向こうではほぼ毎日着てたし……」
「ふーん。そりゃ残念だな、もうこれは着る機会はねぇぞ」
アサヒはナツメの脱ぎ終えた学ランを掴むと、べっと舌を出してひらひらと踊らせる。ナツメは首を傾げながらもYシャツを脱ぎ終えると、今度はベルトを外し始めた。
「なんでそんなに学ラン着て欲しくないの?目立つから?」
「……目立つからに決まってんだろ(本当はそれだけじゃねーけど)」
ナツメはベルトも外すと、ズボンに手をかけて下ろそうとする。しかし、あることに気付いてピタッと動きを止めた。
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