星流国の狐族〜池に落ちたら、妖怪しかいない異世界にワープした!?〜

みるくくらうん

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おはよ、みんな

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 御殿の最上階はアサヒの部屋。その下は四天王達の部屋で、その更に下は上位の部屋の層だと説明を受けたナツメ。


「へぇ、じゃあ俺はここの階?」


 上位の階層できょろきょろと辺りを見回すナツメ。


「ああ。完全に回復したら使わせてやる」

「じゃーそれまで、オレはお前の部屋で寝んの?」


 ナツメは何気なくアサヒを見上げながら問いかけると、アサヒはじっとナツメを見下ろす。


「……不服か?別に今すぐ使ってもいいが、お前の中にはまだ少し妖力が残ってるからな。一緒にいた方がいいだろ」


 アサヒはツーンとした態度に見せかけているが、内心はナツメがどう答えるか気になっておりチラッと視線をナツメに向けた。


「それもそうだけど。不服とかじゃなくてさ、迷惑じゃねーのかなって思って。お前が良いならいいんだけどさっ。
ずっとお前の部屋にいたから、お前の匂い嗅ぐと落ち着くようになっちゃったんだよなー」


 ナツメが小さく笑ってそう答えると、アサヒはキュンッと胸が締め付けられる感覚になりナツメから目を逸らす。


「別に迷惑なんて思ってねーよ」

「そっか」


 アサヒは照れ隠しに顔を歪め足を動かすと、ナツメはその後ろを追った。


「ここが上位の団欒室だ。飯の時も此処を使う。任務がなければ、基本的に此処で喋ったり食ったり飲んだりする奴がほとんどだ。今はちょうど飯時だし全員いる」


 アサヒはそう言って扉を左右に開くと、中では談笑をする上位の狐達がいた。


「!?」


 ナツメと目が合った一同。
 クレナイとエンジュ以外は口をポカンと開けて驚きを示した。
 ナツメは手をひらひらさせながら口を開く。


「おはよ、みんな。長い間寝ててごめんな!」


 ナツメはにこっと歯を見せて笑う。


「ナツメ殿じゃー!!ナツメ殿が起きてるー!!!もう結構動けるようになったんじゃなー!?」


 サイカは満面の笑みでとてとてと可愛らしくナツメに駆け寄って飛びつくと、ナツメはそれを受け止めて笑みを浮かべる。
 他の一同も、ナツメが回復したことにホッとした顔を浮かべ安堵していた。


「おう!もうだいぶ良くなった。ありがとなー」

「それにその服、すごく似合ってるのじゃあー!クレナイが一生懸命作っていたのもんなあ!」

「うん、ナツメ、良く似合ってるさね。作った甲斐があったよ」


 顔がほんのり赤いクレナイは、酒瓶を片手に陽気な顔でナツメに声をかける。シキはクレナイに付き合わされているのか、その横でちびちびとお酒を飲んで笑みを浮かべていた。


「すげーピッタリだしかっこいい!ありがとうクレナイ、大事に着る!」

「へぇ、ニンゲンでも着こなせるもんだなー」


 シュラはナツメの直垂姿を見て鼻で笑う。


「んだとコラ、お前より着こなしてるっつーの!」

「アァ!?俺様の褐衣姿かちえすがたの方が良いに決まってんだろォが!」


 シュラの隊服は淡い橙色の褐衣姿かちえすがたをしており、下は黒の括り袴。最初に会った時はそれに弓矢を携えていた。
 二人は睨み合い、プイッと同時に顔を背けると、ヒイラギが笑みを浮かべて口を開く。


「まあまあ。シュラもええ隊服やし、ナツメちゃんも、よー似合っとるよ。うちの隊はみんな袈裟やからなぁ。クレナイみたいなセンスある子うちに欲しいわ~」

「ヒイラギの服もいいじゃん。シンプルでかっこいいよ」


 ナツメはニッと歯を見せて笑う。


「えーホンマに?ほんなら西来てくれたらうちの袈裟着てもろてええよ?」


 ヒイラギが人差し指を立てながらそう言うと、アサヒが不穏なオーラを漂わせ睨みつける。


「じょ、冗談やて」


 ヒイラギはタラタラと冷や汗をかいて掌を見せる。


「ったく、油断も隙もありゃしねぇ。ナツメ、空いてるとこ座れ」

「うん」


 ナツメはシュラの横に座り、ナツメの横にはアサヒが座った。ナツメの向かいには朗らかな雰囲気を醸し出す眼鏡をかけた狐妖怪がおり、ナツメは首を傾げる。


「どうもナツメ君、初めまして。ボクのことはわかる?」


 栗毛で眼鏡をかけた狐妖怪。その声を聞いたナツメは、ポンっと手を叩いた。


「エンジュ?」

「そうそう!あれ、アサヒ教えたの?」


 エンジュは嬉しそうにアサヒに問いかけるが、アサヒは首を左右に振る。


「教えてねーよ。こいつ寝てたくせに、意識があって話し声は全部聞こえてたらしい」

「なんと!そう言うことね~。とりあえずナツメ君。改めまして、ボクは九尾隊四天王のエンジュ。シキとクレナイと一緒で七尾だよ。歳はナイショ」

「八百年は生きてるさね」


 クレナイがサラッと暴露し、エンジュがガックリと項垂れると、クレナイは満足そうに大笑いした。ナツメはもはや麻痺しており、年齢を聞いても驚かず苦笑する。


「いやーそれにしても、昨晩はうまくいったみたいだねアサヒ。ナツメ君とつが」


 エンジュはさらっと口を滑らそうとしたため、アサヒは近くにあった饅頭を握るとエンジュの口に思い切り投げる。


「ふがっ!?」

「テメェ、余計なこと喋ったら殺すぞ」


 アサヒの鬼気迫る表情を見たエンジュは震えながら頷いた。この場でナツメとアサヒが番ったという話を平気でしようとするエンジュに、クレナイはやれやれと溜息を吐く。

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