星流国の狐族〜池に落ちたら、妖怪しかいない異世界にワープした!?〜

みるくくらうん

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聞こえている②

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 アサヒは他の奴らと比べると、オレにたくさん話しかける訳では無かった。
 毎日オレの世話をして、オレのために色んな本を読んでぶつぶつ呟いている。

 定期的に俺の様子を伺っては近くに寄ってくるのは気配で分かった。額に手を当てたり、すりすりと頬を指で撫でたりして、ずっと黙っていることが多い。
 視線を感じるから、多分じっとオレの顔を見てるんだろう。


 そういう時、お前はどんな顔してるの……?オレ、目が開けられないから分かんない。
 でも、お前が心からオレを心配しているのはなんとなく分かった。


「体、拭くぞ」


 アサヒはそう言ってオレの体に濡れた布を当てて丁寧に拭く。
 冷たくて気持ちいい。でもちょっと恥ずかしい。
 そんなオレの気持ちを察してか、アサヒは口を開いた。


「いろんな奴に体見られるより、俺一人が見てる方がマシだろ。後で文句言うんじゃねーぞ」


 言わねーよ!ばかっ!

 アサヒはそう言って悪態をつくけど、オレの体に触れる手は優しくて、オレはなんとなく心臓がドキドキした。




 アサヒはたまに、少し眠ることがあった。そういう時は決まってオレの横に来て、オレを抱き締めて眠っている。
 でも、そんなに長くは眠らない。


「呼吸、してるよな……」


 アサヒは、自分が眠っている間にオレの息が止まったらどうしようと思っているみたいだった。案外心配性なんだな。
 だからすぐに起きてはオレの顔を触って生存確認すると、でこをくっつけてまた眠って、そして起きての繰り返しだ。

 どんだけ心配してんだよ、コイツ。
 そんな簡単に死なねーから、ちゃんと寝ろよ。お前が体壊したらどうすんだ?


「好きだ……早く起きてくれ、ナツメ」


 ……っ!?
 な、なんっ……!?もしかして寝言か……?




 オレは何故かお腹が空かなかった。
 ずっとお腹がいっぱいな気分で、でも喉は乾いていた。俺の体どうなってんだろ……。


「ナツメ、水、飲ませるからな」


 アサヒは定期的にオレに水を飲ませた。
 多分、急須みたいなものに入れて、それをオレの口に注いでいる。

 たまに、オレが上手に飲めない時もあった。飲み込めなくて口から溢してしまうと、アサヒはそれを布で拭ってオレの頭を撫でる。


「気にすんなよ。飲ませてやる」


 アサヒは優しくそう言って、口移しで水を飲ませてくれた。そういう時は、すんなりと上手く飲み込めたし、なんとなく体が楽になる気がした。最初は恥ずかしくて死ぬかと思ったけど、妖怪ってもしかしてこういうの普通にするのか?
 コイツ、口悪いくせにこう言う時はすげー優しいんだよな。


「やわらけー……」


 !?
 な、何言ってんだこいつ!?
 なんか唇ずっと触ってくるし!
 起きたら覚えてろよっ!




 そんなこんなで、今日もアサヒは本を読み込んでぶつぶつ喋っていた。こっちの本って、オレにも読めるのかなぁ?
 起きたらアサヒに見せてもらおう。

 暫くすると、パタっと本を閉じる音が聞こえた。

 アサヒはオレにそっと近寄ると、そのまま座る。近くに来ると、アサヒの匂いがふわっとして落ち着いた。
 ずっとアサヒと過ごしてたからかな、匂い覚えちまった。



「…………お前はそんなに寿命が短いのか、ナツメ」


 きっと人間の寿命に関する内容を読んだんだな。
 その声は今まで聞いた中で一番切なくて、オレも何故か胸が締め付けられる思いになった。
 
 オレは妖怪みたいに長くは生きられない。それでも、お前はオレのこと特別に思ってくれるのか……?





 そんな時、クレナイが来た。

 どうやらオレを治すためのヒントが書かれた本を見つけたらしい。話を聞いてたら、オレみたいな力を使う人間が大昔にいたようだ。サクナって奴。
 魂縛呪ってかっこいいな……オレも使う時言ってみようかな?そういうの憧れてたり……。

 二人は、結局肝心なところが読めなくて、作者のところに直接行って聞いてくるって。

 エンジュって誰だろ?







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