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催事場フロア
ポンポンポン
しおりを挟む「ポンポン、なにで作るのがいいですかね?
櫛とか剣山とか、ハサミとか、掃除機とか?
昔、誰が一番細かく裂けるかとかやってたんですけど。
あんまり細かく裂くと、静電気がすごかったような……」
とあげはが呟く。
「掃除機?」
「掃除機で吸うと裂けるらしいんですよ」
近くの百均でまた道具を買ってきて、それぞれがいろいろな方法で作ってみた。
当然ながら、バラバラの仕上がりになる。
「統一性がないな」
と細かい奪が言う。
「まあ、いいじゃないですか。
ところで、これで、なにを応援するんです?」
とあげはが訊くと、男は考え、
「じゃあ、とりあえず、この左遷された課長さんを」
と言い出した。
「……やめろ。
同情はいらない。
それに、俺はもう、元に戻りたいなんて思わない。
俺は今の部署をナンバーワン部署にする!」
あんまり仕事ないのにですか、と思った瞬間、
「だから、お前も頑張れよ、新人っ」
とあげはは振り返られる。
ひっ。
気のせいだろうか。
なんか永遠に新人と呼ばれ、罵られそうな気がするんだが……。
「で、では、あやかしの百貨店にとり憑かれている(?)エンさんを応援してみては?」
とあげはは、エンに向かって静電気のすごいポンポンを振ってみたが、やはり、払われてしまった。
「ここはやはり、過去の栄光にすがるしかないお前を応援すべきだろう」
と奪が男に言う。
「あの……課長の発言、応援する以上に突き落としている気がするんですが……」
そうあげはは言った。
「よし、材料はそろったな。
いよいよ、入場門を作るか。
……大変そうだな」
と言う奪に、男も同意する。
「そうですね、大変そうですね」
「喫茶室と廊下をつなぐ扉の上にとりあえず、つけてみたらどうですか?」
とあげはは提案してみる。
「……この店のイメージが」
とエンは呟いていたが、こういうときは連携がとれているあげはと奪がさっさと花をくっつけてしまった。
というか、何故か彼も入場門を一から作るのは嫌らしく、
……彼のために作っているはずなのだが、と思いながら、あげはたちは頑張った。
「やった。
できましたよっ。
さあ、走りながら、くぐり抜けてみてください」
ありがとう、と男は微笑み、一度花で飾られた扉をくぐって、またこちらに走って戻ってきた。
「すごい茶番じみている……」
と奪が呟き、
「成仏しそうにないですね」
とあげはが言った。
「いや、殺さないでください……」
男はそう怯えたあとで、ちょっと笑顔になって言ってきた。
「でもなんか楽しかったです。
みんなでこんな風に、いろいろ話しながら作業するのって学生時代以来で」
「まあ、職場だと楽しくおしゃべりしながらって感じではないよな」
うん、いい気分転換になりました。
ありがとうございます、と男は頭を下げてくる。
「そうだ。
えーと……名前はなんだったっけな?
学生時代はヒーローだった奴。
お前、それこそ気分転換に、今からでも、なんか出てみたらどうだ? 徒競争的なものに」
「いや~、最近は危ないからって、社内の運動会も地域の運動会もありませんしね」
「じゃあ、子どもを作って幼稚園の運動会に出ろ。
……いや、そいつは駄目だ。
やっと挨拶を教えたところだなんだから」
どういう繋がりなのか、男があげはを見、奪がそれを止めた。
エンは、
「そんな部下は手放していいのでは……」
と呟いていたが。
「でもまあ、なにかで煌めけたら、気分的に違いますよね」
とあげはが言うと、
「じゃあ、今度、メンバー集めて駅伝に出てみます」
応援に来てください、と言って、男は、あげはの手を握ってきた。
「いや、俺たちにも言え……」
と奪たちが後ろで言っていたが。
応援ありがとうございます!
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