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おまけ
私とは同衾してくれんのだ
しおりを挟むははは、と笑って見ているのどかを見ていた綾太たちは、ひそひそと話していた。
「面白くないな、一気にラブラブになりやがって」
と言う綾太に、
「……別に面白くないというわけではないですが。
このままというのもどうかと思います」
と中原が言う。
いや、どうかと思いますってなんだ? とのどかが聞いていたら、突っ込んでいるところだろうが。
泰親が確かに、と重々しく頷いた。
「私も困っておるのだ。
のどかは最近は貴弘とばかり寝て、私とは同衾してくれん」
いや、それは貴方が猫じゃなくなったからでは……、
とみんなの目には書いてあったのだが、泰親は特に気にすることもなく、訴え続ける。
「しかも、のどかは夜遅くになって、人目がなくなると、貴弘に強要されるのか、貴弘サンなどと呼んでおるのよ」
のどかが聞いていたら、
「……いや、いけませんか?」
と赤くなって言い返してくるところだろう。
「おおそうだ」
とそこで、泰親は手を打った。
「さっき、風子とのどかがいい話をしておったのよ。
ちょっと貴弘のところに行ってこよう。
貴弘は、ああ見えて、のどかのことに関しては、ちょっと自信がない奴だからな。
ひとつ、からかってやろう」
貴弘ー、と走っていく泰親を見て、八神が、
「あの神主、此処に居る誰より俗っぽくないか?」
と呟いていた。
のどかたちのところに、
「貴弘ー」
と機嫌よく泰親がやってきた。
機嫌よすぎて不気味だな、とのどかが思っていると、
「貴弘、ちょっと来い」
と泰親は貴弘の肩を抱き、隅の方に連れていく。
だが、この神主、普段、あまりコソコソしない性格なので、コソコソ言っているつもりなのだろうが、まったく小声になっていなかった。
「お前、のどかが本当に自分を好きなのか、心配なのであろう。
今日、風子がいいこと言っておったぞ。
のどかがお前を好きか嫌いか、花占いでもしてみたらどうだ」
なにも内緒になってはいない泰親の話を聞きながら、花占いの話なら、さっき社長にしましたよ、とのどかは思っていたのだが。
そういえば、雑草で花占い、のところからしか喋ってないので、どの花だったら奇数だから、何処で終わる、という話はしていなかったなと気がついた。
「そうか、やるか。
ちょっと待て」
と言った泰親が、
「これじゃ、これじゃ」
と持ってきたのはコスモスだった。
寮に飾ってある花瓶から抜いてきたらしい。
前の大家さんがたくさん咲いたからとくれた夏咲きのコスモスだ。
うっ。
コスモスは偶数だから、好きで始めたら、絶対、嫌いで終わるのに。
あざといな神主、と思い、
「社長」
と声をかけようとしたとき、貴弘は、もうコスモスをむしっていた。
「キライ」
「……嫌いから始めるか。
そうか。
普通、好きから始めないか。
やっぱり、ハートが強いな、お前は」
と泰親が小さく呟いていた。
笑ってしまう。
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