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おまけ

猫まみれになったわけ

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 泰親の呪いが解けた日。

 みんな、庭で酒を呑みながら、楽しく夕食を食べていた。

 のどかは、
「泰親さんが居なくなってしまった……」
と寂しがっていたが。

「いや、此処におるぞ」
と後ろから、人間の泰親が言ってくるのだが。

 いやいや~、猫の泰親さんですよ~。

 あのふかふかのふわふわの、丸いお目目で、すがりつくように見上げてくる猫の泰親さんですよ~、と思いながらも、のどかは気持ちを切り替えようと、

「社長、中原さん、アヒージョどうですか?」
とスキレットを手に立ち上がった。

「もらおう」
と言う貴弘たちの許に行こうとしたとき、ふくらはぎの辺りに、ふわりとなにかが触れてきた。

 はっとしてのどかは見下ろす。
 泰親猫かと思ったのだ。

 だが、泰親の話し声は全然違う場所から聞こえてきている。

 まるで、猫がすうっと通ったように、のどかの足を撫でたのは、エノコログサだった。

 夏が近づき、かなりふわふわしてきたエノコログサをちょっと寂しく眺めていたのどかは顔を上げ、ん? と思う。

 みんなが、しゃべるのをやめ、こちらを見ていたからだ。

 ……なんだろう?
と思ったのだが、みんな、そのまま、また、ふい、と視線をそらし、話し始めてしまった。



 翌朝の十時頃、一度仕事に出たはずの八神が突然帰ってきた。

「のどか。
 うちの署の近くに猫が捨てられてたんだ。

 お前が飼う気があるのなら、拾ってこようかと思って」

 白黒の可愛い仔猫を手に、八神がカフェの入り口に立っている。

「いや、拾ってこようかとって、もう拾われてますよね~」
と既に、もう連れてこられている猫を見ながら、のどかは苦笑する。
  

 そして、昼。
 中原がキャリーケースを手にやってきた。

「胡桃沢、猫はいらないか」

 行商人か。

「知り合いのペットショップの猫なんだ。
 会わせて相性が悪いようなら、連れて帰ってきていいと言ってくれた」

 中原が開けた新品のキャリーケースの中から泰親そっくりのミヌエットが出てくる。

 そこに、後ろから綾太がやってきた。

 その手には、ふかふかのペルシャが居る。

「のどか。
 うちの猫の中で、お前に一番懐いてる、ビーを連れてきたぞ」

 ビー玉のような瞳をしているので、ビーちゃんだ。

「可愛がってくれるのなら、此処に置いてやってもいい。
 この家を猫が気に入ったらの話だが」

 猫は家につくというからだろう。

 綾太の手から降ろされたビーは、おっかなびっくり家の中を見て回り。

 奥から出てきた八神の白黒の猫に遭遇して、ぎゃーっと走って逃げたかと思いきや、キャリーケースに戻されていたミヌエットに気づき、また、ぎゃーっと走って戻ると、白黒猫を通り過ぎていた。

 だが、飼い主の綾太は、ビーではなく、中原とミヌエットの方を見ている。

「お前、なに、のどかにみついでんだ」

「いえ、別に。
 売れ残ってた猫、いらないかなと思って押し付けにきただけですよ」

 ……売れ残るだろうか、このつやつやピカピカのミヌエットの仔猫が。

 そんなことを思うのどかの後ろに現れた泰親が、
「どれも可愛いが。
 やっぱり、私が一番可愛かったな」
と言って、猫たちに喧嘩を売っていた。

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