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一夜一夜にヒの一夜が消えました……
此処を社員寮とする
しおりを挟む「待て」
勝手に八神が話をまとめようとしているところに、貴弘が割り込んできた。
「それじゃ、お前とのどかが一緒に住んでるみたいじゃないか」
いや、今もある意味、同じ家に住んでるんだが……と思いながら、のどかは貴弘を見たが。
人の話を聞かない八神は、すでにその話をまとめようとしている。
「そうだ。
じゃあ、お礼に、カフェが出来たら、朝食とか安く作ってくれると助かるな。
どうも栄養が偏りがちで」
と言ってくる。
「それはお安いご用ですけど。
でも、申し訳ないです。
あ、安くとは言わず、タダにしますよ、朝ごはん」
「毎朝、ヨモギの雑炊とかはやめてくれよ。
まあ、身体にはよさそうだが」
ははは、と八神が笑う。
「第一、なんで雑草カフェなんだよ。
普通のカフェにしろよ」
「だって、家の前に雑草がたくさんあるのにもったいないじゃないですか」
「客が来る前に、庭は綺麗にするんじゃないのか。
そしたら、雑草何処から仕入れてくるんだ」
「大丈夫ですよ、裏にも雑草いっぱいだし」
とのどかが笑ったところで、
「いや、掃除しろ……」
と貴弘がまた割り込んでくる。
「そして、夫で大家な俺を置いて、勝手に話を進めるなっ」
いや、話に乗ってきてくれないからですよ、と苦笑いしながら、のどかが思っていると、貴弘が、
「のどかがお前と住むのなら、今日から俺も此処に住むっ」
と言い出した。
ええっ? と二人で振り返る。
「何故ですか」
と言うのどかに、貴弘は、
「今日から此処を社員寮にする」
と宣言した。
「此処をかっ。
どんな福利厚生のなってない会社だっ」
と八神が叫ぶ。
いや、それだと妻の福利厚生もなってないことに……と思いながら、のどかは言った。
「此処を社員寮とか無茶ですよ。
別荘とか保養施設ならまだわかりますが」
「わからない」
「そっちの方がわからない。
なにも休まらない感じがする」
と貴弘と八神に言われてしまったが。
「っていうか、社長が社員寮に住むとかどうなんですか」
「いいじゃないか。
うちは、まだまだ社員も少ないし」
「大家が住むとかどうなんだ」
と八神が言う。
「いいじゃないか、点検も兼ねて。
っていうか、なんだ。
お前たちは俺を追い出したいのか。
のどか、お前は俺じゃなくて、その男と住みたいのか」
と貴弘が詰め寄ってくる。
いや、そうじゃないですよ。
猫耳神主さんや八神さんと違って、貴方と住むのは、なんだか照れてしまいそうだからですよ、と思っていたが、言わなかった。
……言うべきだったかもしれないが。
「ともかく、今日から此処はうちの会社の社員寮にする」
と貴弘は宣言した。
「待て。
刑事の俺が住んでるが」
と言う八神に、
「防犯上いいんじゃないか?」
と貴弘は言い返す。
えーと、それだと、まず、何処になにを申請したらいいのやら。
此処、雑草カフェ?
社員寮?
社員寮の食堂?
「……誰でも入れる社員寮の食堂兼雑草カフェなんですかね」
とのどかは力なく呟いた。
なにか思っていたのとは違うような、と思うのどかに貴弘が言う。
「いいじゃないか。
これで、毎日、一定数の客は見込めるわけだから」
「一定数の客って……」
社長と八神さんと、あと、泰親さんにお供えものするくらいしか需要がないような。
他の社員の人たちが、素敵なワンルームマンションを捨てて、この社員寮に来ることなどなさそうなのだが……。
「でも、毎食、雑草は困るな」
と男たちの中では、すでに話は決まったらしく、そんな文句を言い出した。
私が雑草カフェを開いて自立する話が、何故、横滑りしてこんな話に……と思いながら、
「雑草。
戦のときには貴重な食料だったんですよ……」
とのどかは力なく呟く。
二人に、
「今、戦国時代じゃない」
と言い返されてしまったが。
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